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魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者

作者:niko_25p
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第四十三話 ナンバーズ 1 

アギトの攻撃に釘付けにされるアスカ。

身動きできない中、援軍が現れる





魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者、始まります。





outside

「オラオラオラオラ!」

アギトの火炎魔法が矢継ぎ早に繰り出され、アスカとティアナはスバル達と分断されてしまった。

アスカは咄嗟にバリアを張り、ティアナの前に出る。

ムチャクチャに攻撃しているアギトの炎撃は分断されたアスカとスバル達の間にも着弾しているので、どちらも身動きがとれない。

もっとも、それはルーテシア達も同じだった。

あまりに強力な炎撃は、ルーテシアの足も止めていた。

「くそっ!動くなよ、ティアナ!」

アギトの炎撃をバリアで防ぐアスカが叫ぶ。

「アスカ、少しずつ下がれない?」

アスカの背中に隠れているティアナが聞く。

「や、やってみるけどよ!あの融合騎、すげぇ魔力だ!リイン曹長と比べても見劣りしねぇぞ!」

ガンガンとバリアに激突する火炎弾を防ぐアスカが歯を食いしばる。

「はんっ!反撃してこねぇのかよ!この亀野郎!」

アギトが調子づいて更に火炎弾を撃つ。

「ちぃっ!」

威力の高まる火炎弾にアスカが耐える。

(このままじゃアスカが保たない!)

ティアナがクロスミラージュを構えようとしたが……

「まだだ!いま反撃したらレリックを巻き込むかもしれないだろ!」

アスカがティアナを制止する。

「で、でも、このままじゃアスカが!」

「保たせる!何が何でもな!オレがティアナを守る!信じろ!」

「!!」

意図した事ではないだろうが、その言葉にティアナが赤くなる。

「……分かった。でも、準備だけはしておくからね」

おとなしくティアナは引き下がった。

その間にも、アギトの攻撃はアスカを撃ち続ける。

その度に、アスカは魔力を高めてバリアを強化する。

自分よりも身長の低いアスカの背中を目にするティアナ。

(……アスカの背中って、こんなに広かったんだ……)

ティアナは、必死になって防御するアスカを熱の籠もった目で見つめていた。





分断されたまま動けないでいるスバルは焦れていた。

『ティア!いま助けに行くから!』

リボルバーナクッルを構えて飛び出そうとするが、それをギンガが止める。

「待ちなさい、スバル!無闇に動いても危険なだけよ!」

「で、でもギン姉!このままじゃティアとアスカが!」

冷静さを失っているスバル。そこに、ティアナの念話が届く。

『落ち着きなさい、スバル』

いつもの、冷静なティアナがそこにはいた。

『状況をよく考えて。キャロが気を失って、エリオがキャロを抱えているんでしょ?ならそのまま後退して。こっちもできるだけ下がるから』

『で、でも!』

『忘れないで、スバル。アタシ達の任務はあくまでケースの確保。いま反撃してケースを巻き込んでしまったら、地上にも大きな被害が出るわ。このまま後退しつつ、相手を引きつける』

『……分かった。うまくヴィータ副隊長とリイン曹長と合流できれば、あの子達を止められるかもでよね?』

ティアナに諭され、スバルは落ち着く事ができた。

そこに、待っていた人達がやってきた。

『おし、中々いい判断だ。スバルにティアナ』

力強い、ヴィータの念話がそこに届いた。





「オラオラオラオラ!どうしたどうした!」

ノリノリで攻撃しているように見えるアギトだったが、内心あせっていた。

(くっそー!なんて頑丈なバリアなんだよ!アタシの攻撃が通らないなんて!)

アギトの炎撃はアスカのバリアに全て防がれていた。

(あいつらをチョットやっつけてルールーを逃がすつもりだったのに、これじゃあ動けねぇ!)

実際のところ、アギトはアスカ達を動けなくなる程度に痛めつけるか、隙を見て逃げるつもりでいた。

だが、アスカが素早くバリアを張り、その場に留まった為に攻撃をし続けなくてはならなくなったのだ。

「こうなったら……ん?」

アギトが更に強力な魔法を使おうとした時だった。彼女は大きな気配に気づいた。

「ルールー、何か近づいてきている。魔力反応……でけぇ!」

アギトとルーテシアが頭上を見上げたと同時に、

「うおりゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」

雄叫びと共に天井が崩れ落ちた。

「!」「え?」

アスカはそのタイミングを逃さなかった。

素早くティアナを抱きかかえると、一気にスバル達の所まで後退した。

「捕らえよ!凍てつく足枷!」

崩れた天井の砂煙の中から魔法の詠唱が響き、ルーテシアの足下に冷気が渦巻く。

「う……」「なっ!」

反応が遅れるルーテシアとアギト。

「フリーレンフェッセルン!」

包み込むように氷の檻がルーテシアとアギトを閉じこめた。

「ぶっ飛べえぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

さらにヴィータがガリューに向かってギガントフォルムのグラーフアイゼンを叩き込む。

それに反応したガリューは左腕で受け止める。だが、

「どりゃあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ヴィータは強引にグラーフアイゼンを振り抜いた!」

「……!」

その圧力に耐えきれなかったガリューは、壁に激突した。

そのまま、瓦礫に中に埋没する。

「おう、待たせたな」

グラーフアイゼンを通常の状態に戻して肩に担ぐヴィータ。

「みんな、無事でよかったです!」

瞬く間に事態を収拾させたヴィータとリインがフォワードメンバーに目を向ける。

「あ……あはは、副隊長達、やっぱり強~い。でも、局員が公共施設を壊しちゃっていいのかな?」

顔を引きつらせてスバルが呟く。

「う……ま、まあ、この辺は廃棄都市区画だしね」

自分も公共施設を壊しながら移動してきたギンガが、別の意味で頬を引きつらせる。

「…………」

「大丈夫か?」

唖然としているティアナに、アスカが声を掛ける。

「え?えぇ……大丈……」

言い掛けて、ティアナは自分の状態を知って言葉を失う。

ヴィータ達が突入してきて、アスカはティアナを抱えて後退した。

今、まさにその状態。

つまり、ティアナはアスカにお姫様だっこをされていたのだ。

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

顔を真っ赤にするティアナ。思いのほかアスカの顔が近い。

ティアナにとって幸いだったのは、地下水路が薄暗い事だ。

多少の顔色の変化に気づくには、光量が少ない。

「?」

妙に慌てているティアナを不思議そうに見るアスカ。

そのあどけない表情に、ティアナの胸が高鳴る。

「な……いつまで抱えてんのよ!さっさとおろしなさい!」

ティアナは思わず叫ぶように言ってしまった。

「ん?あぁ……」

何をそんなに慌てているのか、アスカは首を捻りながらティアナを下ろす。

「そ、その……あ、ありが…「キャロは大丈夫か!」う……」

ティアナを下ろしてすぐにアスカはキャロに駆け寄った。

お礼を言い掛けたティアナは、結局何も言えずにムッとする。

「まだ気を失って……「う…ん……」キャロ?」

エリオの抱えられていたキャロが薄く目を開けた。

「エリオ君……フリード……アスカさん……」

「キャロ、起きれるか?どこか痛い所はあるか?」

アスカが目を覚ましたキャロに聞く。

「え……と、はい、大丈夫です」

はっきりと答え、キャロが起きあがった。

「よかった……」

アスカはようやく安心した顔を見せた。





ガリューが激突して崩れた壁に、ヴィータは注意深く近づいた。

「ちぃっ!」

そして、その結果を見てヴィータは舌打ちをする。

倒したと思った敵は、そこにはいなかったのだ。

「こっちもです!」

リインが捕縛魔法を解くと、床に大きな穴があけられていた。

穴は、その下の更に深い地下水路にまで届いてる。

逃げられた、そう思った時だ。

地下水路全体が大きく揺れ出した。

「何だ!?」

ヴィータが周囲を睨む。

「大型召喚の気配があります。たぶん、それが原因です」

エリオに支えられたキャロがそれに答えた。

「ひとまず脱出だ、スバル!」

「はい!ウイングロード!」

ヴィータの指示を受けたスバルが、副隊長達が突入してきた穴にウイングロードを螺旋状に伸ばした。

「スバルとギンがが先頭で行け!アタシは最後に飛んで行く!」

「「はい!」」

スバルとギンガがウイングロードを駆け上がる。

「キャロ。ほら、帽子」

ティアナが落ちていたキャロの帽子を手渡す。

「あ、はい。ありがとうございます」

キャロがティアナから帽子を受け取った時に、アスカが近づいてきた。

「おーい。良いもの拾ったぞ」

アスカが手にしていたのは、レリックのケースだった。

ルーテシア達が逃げた穴の近くに落ちていたのを拾ったのだ。

「さすがに慌ててたみたいね。ねぇ、キャロ。レリックの封印処理、お願いできる?」

帽子をかぶりなおしているキャロにティアナが話しかける。

「ちょっと考えがあるんだ。手伝って」

「はい!」

「アスカ、ケースを貸して」

ティアナがアスカからケースを受け取り、中からレリックを取り出す。

アスカはその様子を黙って見ていた。が、すぐにニヤリと笑う。

「やるなぁ……じゃあ、オレも」

ティアナとキャロが悪巧みをしているのを見て、アスカはポケットから手帳を取り出して一枚破り、そこになにやら書き込んだ。

「アスカ?」

「オレも混ぜろ」

アスカはそう言って、ティアナにその紙を渡した。

その中身を見て、ティアナは思わず苦笑してしまった。





アスカ達が地下で悪巧みをしている頃、空でははやてが踏ん張っていた。

はやての魔法が次々にガジェットを殲滅していく。

一人での防衛戦に、さすがに息は上がっている。だが、はやてはへこたれていない。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……さあ!あと何機や!」

「9編隊、いえ、8編隊に減りました」

モニターからシャーリーが現状を報告する。

「幻術パターンの解析、でき始めています!」

「観測隊からの連絡、複合識別作業、順調です!」

アルト、ルキノが送られてくる情報を凄まじい速さでドンドン処理していく。

「いけます!」

シャーリーの頼もしい言葉に、はやてが頷く。

「うん!さすがは機動六課のオペレーター陣や。さぁ!ガンガン行くよ!照準よろしく!」

「「「はい!」」」





時空管理局 ミッドチルダ首都地上本部

その一室で、はやての戦闘を見ている人物がいた。

地上の守護神と呼ばれている、レジアス・ゲイズそのひとである。

「何だ?いったい何事だ、これは」

レジアスは不機嫌そうにモニターを睨みつける。

「本局遺失物捜査部、機動六課の戦闘。そのリアルタイム映像です」

レジアスの後ろに控えている女性がそれに答える。

オーリス・ゲイズ。

レジアスの娘で補佐をしている人物である。

「撃たれているのは、かねてより報告のあるAMF能力保有のアンノウン。撃っているのは、恐らく六課の部隊長。魔導師ランクは総合SS」

オーリスは淡々と答える。

「ん?地上部隊にSS?聞いておらんぞ!」

「所属は本局ですから」

苛立つレジアスに怯まず、オーリスは淡々と答える。

「後見人と部隊長は?」

レジアスの質問に、オーリスはモニターに三人の映像を映し出す。

「後見人の筆頭は本局次元航行部隊提督、クロノ・ハラオウン提督と、リンディ・ハラオウン統括官。そして聖王教会の騎士、カリム・グラシア殿の御三方です」

「くっ……英雄気取りの青二才共が!」

忌々しそうに吐き捨てるレジアス。

「部隊長は、八神はやて二等陸佐」

はやての写真が映し出されると、レジアスの表情は一変した。

それまでは不機嫌の一言だったが、はやての写真を見るなり、それは憎悪に変わる。

「八神はやて?あの八神はやてか!」

「はい……闇の書事件の八神はやてです」

レジアスの声のトーンが変わったのを、オーリスは気づいた。

ドンッ!

怒りを隠そうともせずにレジアスは机を叩く。

「中規模次元浸食未遂事件の根元!あのギル・グレアムの被保護者!どちらも犯罪者ではないか!」

「八神二佐らの執行猶予期間はすでに過ぎていますし、グレアム提督の件は不問という事になってます。ですから……」

「同じ事だ!犯した罪が消えるものか!」

オーリスの言葉を遮ってレジアスが怒鳴る。

「……問題発言です。公式の場ではお控えなさいますように」

一瞬、オーリスは眉を顰めたが、すぐにレジアスに注意する。

「分かっている……忌々しい!海の連中はいつもそうだ。危険要素を軽視し過ぎる!」

怒りの治まらないレジアスは、苛立だし気に言う。

「中将は二年前から、地上部隊への対AMF兵器戦の対応予算を棄却しておられますので、本局と聖王教会が独自策として立ち上げたのでしょう」

「……ちぃっ」

レジアスは舌打ちをして、モニターはやてを睨みつける。

「……近く、お前が直接査察に入れ。何か一つでも問題点や失態を見つけたら、即部隊長の査問だ」

「はっ!」

オーリスが敬礼してそれに答える。

「平和ボケや教会連中を叩くいい材料になるかもしれんからな」

レジアスは立ち上がり、部屋から出て行った。

「了解しました」

その背中を、オーリスは静かに見送る。

レジアスが出て行ってから、オーリスは再びリアルタイム映像に切り替える。

そこには、孤軍奮闘しているはやての姿があった。

「はやて……気をつけなさいね」

先ほどまでの冷静な表情はなく、妹を心配する姉のような顔があった。





地震が廃棄都市の一角で発生している。あまりにも不自然な現象だ。

その震源になっているのが、冠を被ったような巨大な甲虫だった。

甲虫から出る魔力が、廃棄都市の地面を揺らしている。

「ダメだよ、ルールー!これはマズイって!」

空中に浮かぶ魔法陣の上に立つルーテシアの周りを、アギトが飛び回る。

ルーテシアは、ただ黙って甲虫を見ていた。

甲虫の名は地雷王。ルーテシアが召喚した召喚虫である。

ルーテシアは地雷王の能力を使い、アスカ達を生き埋めにしようとしていた。

アギトはそれを必死になって止めさせようと説得している。

「埋まった中からどうやってケースを探す?あいつらだって、局員とは言え潰れて死んじゃうかもなんだぞ!」

何とか止めようと、アギトはルーテシアに訴える。

ルーテシアは、目的の為なら少々やり過ぎる所がある。

正規の教育を受けていない為に、倫理観に欠ける所があるのだ。

アギトの説得にも、ルーテシアは動じない。

「あのレベルなら、多分これ位じゃ死なない。ケースは、クアットロとセインに頼んで探してもらう」

ルーテシアの口からクアットロとセインと言う名前が出た途端、アギトは血相を変えた。

「よくねーよ、ルールー!あの変態医師とかナンバーズ連中なんかと関わっちゃダメだって!ゼストのダンナも言ってただろ?アイツら口ばっか上手いけど、実際の所アタシ達の事なんて、せいぜい実験動物くらいにしか……あっ!」

ひときわ大きな音が響きわたり、地雷王を中心に地面がクレーター状にへこんだ。

地下が完全に埋まってしまったのだ。

「やっちまった……」

ルーテシアを止められなかったアギトが、ガックリと肩を落とす。

アギト自身も、あの程度で管理局の人間が死ぬとは思ってない。

それよりも、非常な手段をルーテシアが躊躇なく使った事に心を痛める。

(ルールーは、本当は優しいんだ……こんな事なんかしたくない筈なのに!)

アギトの心配をよそに、ルーテシアは側にいるガリューに話しかけた。

「ガリュー。怪我、大丈夫?」

言葉を発せないガリューは、頷いて意思表示する。

「戻っていいよ。アギトがいてくれるから」

ルーテシアの言葉に従い、ガリューは魔法陣を発生させてその中に消えて行った。

ガリューを見届けたルーテシアが、地雷王を見る。

「地雷王も……!!」

地雷王を戻そうとした時、甲虫の下からルーテシアの物とは違う魔法陣が浮かび上がる。

そのピンクの魔力光の魔法陣から、同色の魔法鎖が発生して地雷王をからめ取る。

身動きを封じられた地雷王が魔力で鎖を断ち切ろうとしたが、ビクともしない。

「な、なんだ!?」

その光景にアギトが驚く。

(地雷王を動けなくするだけの拘束魔法を使える魔導師が近くにいる?まさか、さっきの奴らか?)

ハッとして、アギトとルーテシアが魔力反応のあったビルに視線を移す。

そこには、ピンク色の髪をした召喚士、キャロがいた。

そのキャロの背後から、水色と青のウイングロードが伸びてくる。

水色のウイングロードからはスバルが、青のウイングロードからはギンガが迫ってくる。

そして、その左右のウイングロードの中心からは、ヴィータが真っ直ぐに突っ込んできた。

「クッ……はっ!」

スバル達に気を取られていたアギトとルーテシアだったが、別方向から狙いを定めているティアナにギリギリで気づく。

「ちっ!」

ティアナがトリガーを引き魔力弾を撃つ!

素早く身を翻して、アギトとルーテシアが反撃弾を放つ。

アギトの火炎弾とルーテシアの魔力ダガーがティアナ、スバル、ギンガ、ヴィータに迫る!

だが、スバル、ギンガ、ヴィータはそれを素早く避け、ティアナは、

「残念でした」

不適に笑う。

ティアナの前方にバリアが発生し、火炎弾とダガーをはじき返す。

「くそっ!あの亀野郎か!」

バリアから顔をのぞかせたのはアスカだった。歯噛みするアギト。

スバル達への攻撃も牽制にすらならず、ルーテシアは高架橋の縁に着地する。

「……!」

だがそこには、ストラーダを構えた赤毛の少年、エリオが待ちかまえていた。

「動かないで!」

ストラーダを突きつけたエリオがルーテシアを捕らえる。

「ルールー!あっ!」

ルーテシアに意識を向けていた瞬間、アギトは周囲に氷でできたダガーに囲まれている事に気づく。

「しまった!」

一瞬にして動きを封じられてしまったアギトとルーテシア。

「ここまでです!」

リインが瞬時にバインドで二人を拘束する。

「く、くそ!離しやがれ!」

暴れるアギトだったが、リインのバインドはその程度で外れてくれる程優しくはない。

「おとなしくしろよ、融合騎。こうなったら腹くくるしかねぇぞ」

騒いでいるアギトに、アスカが近づく。

「んだと!この亀野郎!」

アギトがアスカを睨む。

「誰が亀野郎だ!この残念ビキニ!」

アギトの言いぐさにカチンときたのか、アスカがヒートアップする。

だが、それはアギトも同じようで……

ざ、残念ビキニだと!?お前、いま残念ビキニって言ったか!」

アギトが顔を真っ赤にして怒り出す。

「おう!言ったがどうした!そんな格好をするには色々足りねぇだろ!」

「くぅー!ムカつく!てめぇなんか何一つ攻撃できてなかったじゃないか!女の影でヒソヒソしてたくせに!」

「あぁ?お前目が腐ってんのか?しっかりバリア張って活躍してただろうが!」

「へっ!笑えるぜ!男がセコセコディフェンスやってますってか?情けねぇな!」

「んだと!!!このフルフラットボディ!」

「フ、フル、フリ、フルフラット、ぼぼボディだと!」

「フルフラットボディがダメなら、シンプル イズ バストだ」

「シシシ!シンプルイズバストォォォ!!!!!!!!!!!」

絶叫しながら怒りオーラをだだ漏れさせるアギト。

……よっぽど気にしていたらしい。その、色々と。

「だいたい、そんな嬉しいカッコウしてるのに全然うれしくならない……どぁっ!」

さらに追い打ちを掛けようとしたアスカの頭を、ヴィータがグラーフアイゼンでフルスイングした。

「いつまでくだらねぇ事言ってやがる!このバカ!」

「ぐおっ!」

怒鳴り声と共に、もう一発ガツンと行く。

「いつつ……ひ、ヒドイッスよ~、ヴィータ副隊長~」

シャレにならない二撃を喰らって涙目のアスカ。

「あぁ?」「なんでもありゃーせん」

ヴィータに凄まれ、アスカはアッサリと引っ込む。

「ったく、つまんねぇ事でいつまでもジャレてんじゃねぇよ!」

なぜか額に青筋を立てながら、ヴィータがアスカを怒鳴りつける。

「……いや、ヴィータ副隊長?べつに副隊長の事を言っていた訳じゃ……んがっ!」

再びガツンとグラーフアイゼンを、今度はアスカの足に叩きつける元祖フルフラットボディ。

「わ・る・か・っ・た・な!シンプル イズ バストで!!!!!!!」

グリグリグリグリグリグリグリグリグリ!

「のおおぉぉぉっぉぉぉおおおおっぉおぉぉぉっぉおお!!!!!」

アイゼンを足に叩きつけたまま、グリグリするヴィータに、悶絶するアスカ。

「ヴィ、ヴィータちゃん、今はそんな事をしている場合じゃないですよ!」

と妹に窘められると、さすがにヴィータも止まらざるおえない。

「と、とにかく!」

コホンと咳払いをして、ヴィータはルーテシアとアギトに向き直った。

「市街地での危険魔法使用に公務執行妨害罪。その他諸々で逮捕する」

ヴィータが二人に告げる。その後ろでは……

「キャ、キャロ!ヒーリング、ヒーリング!」

「ダメですよ、アスカさん。女の子にヒドイ事言っちゃ」

ヴィータの攻撃でダメージを追ったアスカがキャロのヒールを受けていた。

「絞まらないわねぇ」

ギンガがその様子を苦笑して見ていた。





ルーテシア達が捕まった頃、廃棄都市のとあるビルの屋上のでは、クアットロが何やら楽しげに空を眺めていた。

その隣には、栗毛色の長髪の少女が身の丈以上の大きなバッグを抱えて立っている。

公園でアスカに道を教えてもらっていた少女、ディエチだ。

クアットロと同じようなボディスーツの上に、茶色いマントを羽織っている。

「ディエチちゃん、ちゃんと見えている?」

クアットロの言葉にディエチは頷く。

「ああ。遮蔽物もないし、空気も澄んでいる。よく見える」

ディエチはそう答える。

ディエチが見ている方向をクアットロも見るが、彼女の目にはそれを捉える事はできない。

ディエチの瞳の中にあるセンサーが、ここからでは認識できないターゲットを見つめている。

レリックと保護した少女を乗せているヘリを、ディエチは見ていた。

「でもいいのか、クアットロ?撃っちゃって」

そう言いながら、ディエチはバックの中から巨大なカノン砲を軽々と取り出す。

「ケースは残せるだろうけど、マテリアルの方は破壊しちゃう事になる」

あまり乗り気ではないのか、ディエチはクアットロに確認を取った。

「うふふふ。ドクターとウーノ姉様曰く、あのマテリアルが当たりなら、本当に聖王の器なら、砲撃ぐらいでは死んだりしないから大丈夫、だそうよ」

クアットロはまるで意に介さない。

「ふーん」

ため息混じりにディエチが答える。諦めたようだ。

その時、ウーノからクアットロの通信が入った。

「クアットロ、ルーテシアお嬢様とアギトさんが捕まってしまったわ」

モニターを通して、ウーノが姿を見せる。

「あー、そう言えば例のチビ騎士に捕まってましたね~」

トボケるようにクアットロが笑う。

一瞬、呆れたような表情を浮かべたウーノだが、すぐに顔を引き締める。

「……今はセインが様子を伺っているけど」

「フォローしますぅ?」

「お願い」

まともに相手をすると疲れるからか、ウーノは言うべき事を言って通信を切った。

「やれやれ、ここまでは順調だったのにねぇ」

クスクスと笑うクアットロ。

「何が順調なもんか。クアットロの書いた地図のせいで、私がどれだけ迷ったか分かってるの?」

ディエチも、悪びれないクアットロに呆れる。

「あ~ら、それにしちゃちょーっと楽しそうだったけどぉ?」

「う……そ、それは色々見て回れたから……」

クアットロとの合流時、地図については一文句つけたディエチだったが、思いのほか上機嫌だった。

「ふーん、そう?」

クアットロはニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる。

「まあ、社会見学と思ってね?」

人を食ったように都合の良いことを言うクアットロ。

これ以上言い合ってもしょうがないと感じたディエチは、肩を竦めて再びヘリに目を向ける。

(アスカって言ったっけ。地下高速の監視センターに行くって言ってたから、巻き込まないよね)

ディエチは公園で助けてくれた少年を思いだしていた。

(また会えるかな?)

もう一度会ってみたい、ディエチはそう思いを馳せた。

ディエチがそんな事を思っている傍らで、クアットロが妹への通信回路を開いていた。

「セインちゃん?」

「ハイヨー、クア姉!」

場違いな元気な声が帰ってくる。

「こっちから指示を出すわぁ。お姉さまの言う通りに動いてね?」

「ふふん、了解」

これから始まるイタズラに、セインは楽しそうに笑って答えた。 
 

 
後書き
ちょっと長くなりそうなので、ここで一回切ります。
今回はティアナの乙女の部分が少し書けたので良かったです。
まあ、お姫様抱っこされて怒鳴っちゃダメです、ティアナさん。

レジアスのおっさんは、原作のまま敵役っぽくしますが、オーリスさんは少し違いますね。
もっと後ろの方で、はやてとの関係を紹介しますので、しばらくお待ちください。

アスカとアギトは、どうやら埋まらない溝がありそうですね……まさかのヴィータさん参戦とは。

そしてナンバーズが出てきました。
と言うか、アスカとディエチがどう絡んで行くかを書きたいですね。
……実は、ディエチもヒロイン候補だったりします。
その前に隊長陣はどうなる!?
 
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