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古戦場火

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第三章

 青白く不気味に燃えている火が宙に浮かんでいた、桜子はその火を見て言った。
「あれよね」
「そうよね」
 椛もその火を見ている、そのうえで桜子に応えた。
「鬼火って」
「そうよね」
「間違いないわね」
 千奈津もここでこう言った。
「どう見ても」
「本当に出たのね」
「まさかと思ってたけれど」
「鬼火が近所に出るなんて」
「私達の目の前に」
「私も驚いてるわ、けれどね」
 千奈津はその鬼火を冷静に見つつ二人に話した。
「別に私達の方にね」
「ええ、来るわけでもなし」
「襲い掛かってもこないわね」
「別にね」
「そんな気配はないわね」
「若しもの時に備えてお守り持って来てたし」
 千奈津は首筋からそれを出した、夫から貰ったネックレスの他に今はそれも首に下げている。
「お塩も持って来たのに」
「私破魔矢持ってきたわ、あと般若心経」
 夫が住職さんと関係の深い桜子はお経もだった。
「若しもの時に備えて」
「私は十字架と聖水」
 親が教会によく行く椛はこの二つだった。
「持って来たけれど」
「別にね」
「襲われそうにないわ」
「そうね」
「それはいいけれど」
 千奈津は鬼火の様子を冷静に見つつ言った。
「あの鬼火神社の方に行くわね」
「そうね、何かね」
「そっちの方に行くわね」
 見れば桑津天神社の方に向かっていた、それでだ。
 千奈津は桜子と椛にこう提案したのだった。
「ちょっと見に行く?」
「そうね、神社の方に行くし」
「どうした動きをするのか」
「そうしましょう」
「わかったわ」
「それじゃあ」
 二人も千奈津の言葉に頷いてそうしてだった。
 三人で鬼火がゆらゆらと飛んで行く方に向かった、真夜中なので流石に人の気配はまるでない。車も今は近くに通っていない。 
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