銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません
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第八十八話 襲撃前にやるべき事を
第八十八話 襲撃前にやるべき事を
帝国暦480年8月12日
■オーディン 第2軍事宇宙港
この日、オーディン各地の軍事宇宙港から、
装甲擲弾兵の訓練の為と称して行われる、装甲擲弾兵大演習の為に各地へ向かう為に、
高速戦艦、巡航艦、駆逐艦などの高速艦艇が装甲擲弾兵を便乗させ帝国全土へと旅立っていった。
乗り込む装甲擲弾兵は、装甲擲弾兵総監ライムバッハー上級大将から一斉訓練としか聞いて居ないが、
殆どの者が気にせずに現地へ地と向かうのであった。
そして通常の軍服を着た宮中警備隊の捜査員達が共に乗り込んでいるのも気がつかない状態であった。
憲兵隊一斉捜査の為に向かう行為であったが、完全に秘匿の意味から演習として行動させるのであった。
宮中警備隊の担当者のみしか作戦行動を把握して居らず、装甲擲弾兵は本当の大演習だと完全に思っていたのである。
帝国暦480年8月〜9月
早い部隊では2日後に遅い部隊でも高速艦艇を使った結果30日後には次々に現地へ到着した。
装甲擲弾兵は各々現地に着き次第、プログラムに従って演習を始めた。
此は敵を欺くにはまず味方からの精神から行われるのである。
その間に宮中警備隊捜査官は地元憲兵隊の内偵を始めていた。
命令したがい調査を始めている、現地組織と密かに接触し各種情報を受け取り内偵を開始した。
各地の憲兵隊が各種不正に手を染めているのが判るのはそんなに時間がかからなかったのである。
ある憲兵隊隊長は、好みの女性を不敬罪と称して脅し愛人にしており。
ある部隊は部隊ごと不敬罪捜査と称して商家に押し入り金品を強奪を行う。
また、密輸や人身売買等を行う悪徳業者から賄賂を受け取りお目こぼしを行う部隊。
僅かな内偵で一斉捜査前に悪事が次々と判明してきたのである。
帝国暦480年9月21日
■オーディン ノイエ・サンスーシ 会議室
この日、朝から皇帝陛下からノイエ・サンスーシに参内せよと火急の呼び出しがあり。
国務尚書リヒテンラーデ侯爵、軍務尚書エーレンベルク元帥、
統帥本部長シュタインホフ元帥、宇宙艦隊司令長官ベヒトルスハイム元帥、
宇宙艦隊副司令長官エッシェンバッハ上級大将、装甲擲弾兵総監ライムバッハー上級大将、
装甲擲弾兵副総監オフレッサー大将、7名が参内した。
エーレンベルク元帥、ライムバッハー上級大将、オフレッサー大将の3人は既に連絡を受けている為に明日に迫ったXDAYの事であると判っていて平静であるが、
他の4人は21日から22日まで泊まりがけで来る様にと言われたことで、
何があるのかと話し合っていた。
前回と同じように、ブレンターノ准将とケスラー少佐を引き連れたフリードリヒ四世が現れると、
全員が立ち上がり最敬礼を行い、代表してリヒテンラーデ候がご挨拶を行う。
「皇帝陛下に於かれましてはご機嫌麗しく存じます」
「うむ、御苦労。卿等に集まって貰ったのは知らせることがあるからじゃ、
そこで卿等の忌憚なき意見を聞きたいので礼節は無用じゃ」
「と申しますと?」
リヒテンラーデ候が疑問顔で聞きしてくる。
「先月のことじゃが、オフレッサーの館が何者かに襲撃されたのじゃ」
「なんと、帝国軍大将の館に襲撃を行うなど、何たる事を」
ベヒトルスハイム元帥が驚く。
「しかし、その様な話全く我々は耳に挟んだ事もありませんが?」
シュタインホフ元帥が疑問を投げかける。情報部からもその様な話が上がってこないからである。
「予が素早く箝口令にて隠したのじゃ」
驚く4人。と納得顔の3人。
「陛下のご判断で大事にならずにすんだのです」
エーレンベルク元帥が神妙に話す。
「犯人共は我が家の家族で撃退し逮捕した」
「それで何者だったのですか?」
「うむ、襲撃犯は犯罪者者であったが、それを指示した者は憲兵隊であった」
「なんと、憲兵隊が現職大将を襲うとはそんな事が」
エッシェンバッハ上級大将が驚きを隠せない。
「恥ずかしながら、事実だ。私の監督不行きなのだ」
陛下がすかさず、エーレンベルクの罪を薄める為にフォローする。
「エーレンベルク、卿だけのせいではないぞ。予にも責任があると言うておろう」
「陛下、勿体のうございます」
陛下の言葉を否定できずに、エーレンベルク元帥の罪を指摘しようと思った。
シュタインホフ元帥や、リヒテンラーデ候も何も言えなくなる。
「憲兵副総監のクラーマーめがオフレッサー邸を襲撃させたのじゃ」
「なんと、クラーマーがいったい何の為でありましょうか?」
リヒテンラーデ候が疑問を投げかける。
「うむ、それだがの此から言う事は他言無用じゃ、よいな?」
「「「「「「「御意」」」」」」」
皆が頷く。
「予がオフレッサーを士官学校臨時教官として使わしたことを知って居るな。
士官学校にクラーマーの息子が在籍しておるが、息子に頼まれた為に襲撃を行ったのじゃ」
「その様な事を行えば反逆罪に問われるモノを何故したのでしょうか?」
リヒテンラーデ候は疑問を投げかけてくる。
「クラーマーの息子の同期にある貴族の甥が居てな、その者の悪戯話から事が大きくなったのじゃ」
「ある貴族とは言った誰でございますか?」
遂にその名前がわかるとエーレンベルク、ライムバッハー、オフレッサーは真剣な表情であり、
リヒテンラーデ、シュタインホフ、ベヒトルスハイム、エッシェンバッハは驚きの顔である。
「それはこの録音録画を聞いて見れば判る、これはクラーマーの取り調べの様子と、士官学校で恐ろしき陰謀があると、さる者が身の危険を顧みずに帝国の為に隠し撮りしたモノじゃ」
陛下がそう言うとブレンターノとケスラーが資料を配り、そして映像が始まった。
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『「クラーマー、未だ罪を認めぬか!」
「アハハハハ、もう駄目ですよ閣下!」
「ハイドリッヒ陛下の御前であるぞ」
「もう諦めましょう、そうです、私がクラーマー閣下の命令でオフレッサー邸を襲撃させましたよ」
「ハイドリッヒ、何を言うか!」
「皇帝陛下に逆らっては反逆罪ですからね、閣下も私も、もうお仕舞いですよ」
「ハイドリッヒ貴様が勝手にやったことだ!」
「ハイドリッヒとやら、誠にそちがクラーマーの指示で動いたのじゃな」
「陛下そうでございます」
「どうじゃ、クラーマー未だシラを切るか!」
「陛下、フレーゲル男爵に命令されたのです、私はブラウンシュヴァイク公が怖いので動いただけです、
私は脅されただけです、心ならずも荷担したのに過ぎません」
「ほー、ブラウンシュヴァイクとフレーゲルが唆したと言うのじゃな」
「そうでございます」』
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映像が流れ始め次第に7人の目を大きく見開きながら真剣に視聴し続けた。
映像が終わると、リヒテンラーデ候が声を絞り出すように話し出した。
「陛下これは由々しきことでございますぞ、ブラウンシュヴァイク公は陛下の娘婿、
その者が勅命を無視したとあれば、鼎の軽重を問われましょう。
また他の貴族達に多大なる衝撃を与えるモノになり帝国の安定にも不安が生じましょう」
他の者達も考え込みながらリヒテンラーデ候の話を聞いている。
「しかし、クラーマーだけの告白では、言い逃れの可能性も否定できませんな」
エッシエンバッハ考えながら発言する。
「此だけではないのじゃ、もう一つあるのでな」
陛下がそう言うと次の映像が始まった。
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『「フレーゲル殿」
「クラーマーどうした」
「いえね、陛下の勅許が有る限りオフレッサーは我らをしごくでしょう」
「そうだな」
「ならばしごけないようにすれば良いのですよ」
「オフレッサーでも殺すのか?」
「いえそんな事出来るわけ無いじゃないですか」
「まあそうだな」
「違いますよ、私の父は憲兵副総監ですから。
父に頼んでオフレッサーの家族を調べて、
悪党にでも襲撃させて恐怖を与えてやれば良いのですよ」
「そんなことしたら、俺達が殺されるぞ」
「大丈夫ですよ、我々が雇わずに父の伝手で襲撃させますから」
「本当に大丈夫だろうな?」
「任せて下さい、数日後には戦果を上げてオフレッサーを追い出して見せます」
「フレーゲル男爵、今日のような屈辱耐えられません!」
「クラーマー、私もそうだが、未だ返事は来ないのか」
「未だ今日の朝ですから、あと数日はかかりますよ」
「あと数日が恐ろしいが、暫くは大人しく従う振りをしているしかあるまい」
「ですな、それしか有りません」
「フレーゲル男爵、止めるわけには行かないのですか?」
「なぜだ」
「知れたら、きっと殺されます」
「大丈夫だ、親父に頼んであるし気がつかれないさ、
いざとなれば、憲兵を出して揉み消すから」
「はあ」
「そろそろ襲撃されている時間です」
「クラーマー、家に投石とかして脅かすので大丈夫だろうな」
「フレーゲル殿、父がフレーゲル男爵の依頼なら、
任せてくださいと言っていますから大丈夫ですよ」
「そうか、まあ投石や生ゴミを庭に蒔くなどすれば威圧には十分だろうな」
「いざとなれば、糞尿を玄関にばらまけば大丈夫ですよ」
「ヒルデスハイム伯、確かに良い案だな。今回の事で懲りなければそうしたそう」
「見ろ、あの筋肉馬鹿共がしっぽを巻いて逃げていくぞ」
「フレーゲル殿、我々の勝利ですな」
「クラーマー、卿が勲功第一じゃ、親父共々要職に就けて貰えるように伯父上に話しておくぞ」
「フレーゲル殿、ありがたき幸せです」
「いやはや此所まで図に当たるとは思いませんでしたな」
「ヒルデスハイム、それよ正に図に当たったのだな」
「ハハハ、愉快ですね」
「ハハハハ、そうよ此で又、我らの天下だ!
早い内伯父上に頼んで校長への圧力をかけて又以前のようにしなければなんぞ」
「此もすべて、フレーゲル男爵のおかげでございます」』
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映像を見ながら段々と皆の顔が厳しくなっていったが、最後の生ゴミ云々で何だと言う顔になった。
「どうじゃな、この映像を見れば、フレーゲル男爵が授業を受けたくない為だけに悪戯を行い、
それをクラーマーがブラウンシュヴァイクの頼みと思い行ったと言う事じゃ」
「うむ。此でありますと、ブラウンシュヴァイク公、フレーゲル達は極刑ですな」
皆が頷き始める。
「予は今回、腐りきった憲兵隊を掃除することにしたのじゃ、
その為にブラウンシュヴァイクを今回は罰せずに協力させるつもりじゃ、
それに伴ってクラーマー親子以外の者達は軽い罰で済ませてるが、役職等は辞任して貰うつもりじゃ」
「陛下、それでは不味いのではありませんか?」
「憲兵隊掃除こそ予の考えじゃ、それを行う為には多少の目こぼしも必要じゃ」
「確かにそうでございますが」
「オフレッサー、黒幕たるフレーゲルを処罰せずに済してすまんの」
陛下の謝罪に皆が驚く。
「滅相もございません、陛下のお心使い臣は嬉しくてなりません」
「しかし、灸を添えてやらねば成るまい、そこでじゃ午後からブラウンシュヴァイクとフレーゲル達を呼んで居る、卿等も参加し予が灸を添えるのを見て居るのじゃ」
陛下は、いたずらっ子のように話している。
皆はそれを見ながら、陛下の凄みを益々感じるようになっていた。
その後、22日までは外部との連絡を取らないように命じられたあと、
陛下と共に昼餉を御相伴し一時的に休憩に入った。
■オーディン ノイエ・サンスーシ 休憩個室 クラウス・フォン・リヒテンラーデ
突如の陛下の御召しに些か慌てたが、まさかあの様な事件が起こって居るとは全く知らなかった。
現職の大将を憲兵隊が襲うとは何たる事だ。
しかも陛下の娘婿がその中心人物で有るとは驚きじゃ。
ブラウンシュヴァイク公はリッテンハイム候と共に、
国事を我が事のように壟断甚だしいからの、ここいらで灸をそえるのも良い考えじゃな。
真。陛下の御深慮が素晴らしくなってきたものじゃ、臣としても仕える楽しみが沸き上がってくるのう。
面白き時代になってきたモノじゃ、益々頑張るとしようか。
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次回フレーゲル一党に対しての罰が決まりますが、そんなに悪くはないですよ。
殺すと無駄になりますからね。
主に金髪苛つかせる為の餌ですから。
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