名探偵と料理人
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第四十話 -色んな事件の色んな後日談-
前書き
このお話は原作第28、29巻が元になっています。
すみません。今まで巻数通りの時系列でやってきましたが、人魚のお話より先にこちらを書きました。人魚のお話は次話になります。
今回は事件に巻き込まれず、エピローグだけのつなぎ合わせという新しい試みを取っています。どの事件か、わかるかな?
「ええ?昔の事件で負った古傷を?」
「ああ、目暮はその古傷を隠すためにシャッポを被っておるんだよ」
今日は東京警察病院に来ていた。蘭ちゃん、園子ちゃん、紅葉の三人で冬物の洋服を買いに行ったデパートで殺人事件に巻き込まれた。その殺人犯は通り魔で運転マナーの悪い(運転の際に厚底ブーツをはく)女性を狙っていたそうだがなんと小五郎さんの車に荷物を置いていた園子ちゃんを(運悪く厚底ブーツを履いていた)運転手と勘違いして返す刀で襲い掛かったそうだ。その園子ちゃんを守るためにかばった目暮警部にその犯人はバットを振りおろし、事件解決後入院となったわけだ。
付き添いに来た松本警視に目暮警部の帽子の訳を教えてもらった女子高生組は涙ぐんでいた。
「だからあんなに囮捜査を嫌がったんだ…」
「死んじゃったその女の子の二の舞にならないように…」
「ウチらも、気安くきいていいはなしやなかったんやな…」
「おいおい、彼女は顔やお体に大怪我を負ったが別に死んではおらんぞ?」
「「「え?」」」
「だって彼女は奴の…」
「あら…松本警視!松本警視もお見舞いに来て下さったのね。たった今高木さんと佐藤さん、白鳥さんに千葉さんが帰られたところですのよ」
「おお。奴らも来とったのか!」
あ、みどりさんだ。…ん?そういやみどりさんも額に傷跡があるな…ってことは。
他の皆もそのことに思い当たったのか微妙な表情をしている。小五郎さんも思い出したようにみどりさんが昔つっぱってたってことを教えてくれた。
「もしかして警部が帽子を取らない理由って…」
「奥さんとのなれ初め話を冷やかされたくないからなんじゃ…」
「ウチもそう思う…」
「ハハハ……」
ま、まあいいじゃないか!いつまでもアツアツだってことでさ。
――
「ども、博士。お見舞いに来たよ。新ちゃんはもう来てる?」
「やー、龍斗君いらっしゃい。新一の奴ならもう来とるぞ……ん?そちらは確か…」
「それじゃあ、お邪魔しますよっと。ああ、彼は前にも紹介しましたが辻本夏さん。家でお手伝いをしてくれてる人で事件に巻き込まれた哀ちゃんのことを心配してきてくれたんですよ。彼女は?」
「あ、ああ。哀君なら地下の実験室におるが」
「ありがとうございます、阿笠博士……それじゃあ龍斗君私は…」
「ええ。博士、彼女に会わせても?」
「も、もちろんええんじゃが」
「それでは」
そう言って、夏さんは足早に地下室へと消えて行った。
「それにしても博士。ほとほと災難でしたね。まさかスキーへ行くバスの中でバスジャックに遭うとは。あ、これカロリー控えめお菓子の詰め合わせです。手作りです」
「おお!ありがとうのう。後でじっくり味あわせてもらうよ。災難と言えば全くもってその通りじゃよ。結局、スキーには行けずじまいじゃったからのう。拗れるし」
そういえばマスクしてるな。こりゃお土産は風邪に効く料理の方が良かったか?
「そして、まーた無茶したみたいだね?新ちゃん」
「しゃーねーだろ?アイツがバカな真似しようとしてたんだからよ…」
俺の言葉に今週の週刊サンデーを読んで寛いでいた新ちゃんは雑誌を置いてこちらに顔を向けた。
「アイツ…哀ちゃんか」
「ああ。あのバスの乗客には灰原のセンサーに引っかかる特大の組織の関係者がいたらしくてな。オレも怪我を新出先生に診てもらってからそれとなく事情聴取を受けている乗客を観察したんだが分からずじまいでな…」
「…んあ?新出先生?」
「あー、そういや事件の乗客の氏名なんて新聞じゃ載らねーから知らなかったのか。そうだよ、帝丹高校の保険医の新出先生とジョディ先生も偶然そのバスに乗ってたんだよ」
「……なんて、偶然、だね?」
あー、それはなんともはや。ってことは哀ちゃんはシャロンさんの気配に気づいてたってことになるのか。もう記憶の彼方だけれど彼女は組織の中でかなりの地位にいたはず。そしてそれ相応の血なまぐさい事をしているのは対面していて少し観察すれば、分かる。彼女が近くにいればそりゃあ委縮というか、負の方向で凝り固まってしまうのも仕方ないか
……俺もシャロンさんに対しての態度をしっかりと考えなければな。けどなあ。犯してきた罪の重さを考えればどの国の警察機構も諸手を挙げて歓迎するだろうけど、今まで集めた情報を総合して考えると絶対獄中による暗殺、で終わりだ。しかも周りに大きな被害が起きようとも構わずで。それは知り合い…友人?親戚のおばさんって感じで思ってたけど彼女と俺の関係を最適に表している言葉が思い浮かばんな…まあそれはさておき、俺としては歓迎するわけにはいかない。かといってこのままでいいわけでもなく…本当にどうするかね。彼女(新出先生の格好をしているが)と話すのは嫌いじゃないし、彼女自体に何か含むところもないんだよな……
「……と。…つと。龍斗!どした、龍斗?」
「っ!っと、ごめん考え事してた」
「結構、深い考え事だったな?何かあったのか?」
「んー。さっきの二人の先生も結構な頻度で事件に巻き込まれてるなってね」
「あー、そう言えばジョディ先生も新出先生もオレが知ってる限りで三回目かこれで。確かに結構な頻度って言えるな」
「……それで?翻って考えてみよう?工藤新一君の事件遭遇率は?/年で言うと?」
「……は、はは、は…お、オレはいいんだよ!事件を解決するためにオレは呼ばれているの!」
「…へえ。事件が俺を呼んでいるんじゃないんだ?」
「まーな。オレはオレじゃないと解決できねえ事件に遭遇する星の元に生まれたんじゃねえかって最近考えるようになったんだよ。それなら探偵を志したオレにとっちゃあ「探偵」が天職だった言えるだろ?こんなうれしいことはねえ。オメーの「天職」が料理人だったようにな。…っと、それに事件なんてそれこそスリ、痴漢、空き巣なんてこの日本じゃ毎日星の数ほど起きてる。事件には重いも軽いもねーが、警察の人の地道な捜査で軽く解決できるものも多い。オレが遭遇するのはオレがその場にいなければどうしようもねえ重い事件ばっかだってこった。トリックを暴き、事件が起きてしまった原因を解きほぐしてその後に繋ぐために。今回のバスジャックだってオレが行動を起こさなきゃ爆弾で乗客の全員がお陀仏だったしな」
だからって刑事の人たちを軽んじる気なんてさらさらねーけどな―そう続けた新ちゃんを見て俺は正直びっくりしていた。
昔の新ちゃん…それこそ高校生探偵なんて言われ始めていた高一の頃は、パズルを与えられて解法を導くことに悦を覚える幼稚なことどもの印象がぬぐえなかったのだ。難解なパズルを解き、解き終わればそのままほっぽり投げる―そんな幼稚さが今の言葉からは微塵も感じられない。まあ、ちょっとだけまだ危なさがありそうだけれど。
「……そっか、そっか」
「……おい、龍斗。今のお前の顔。すっげえ年寄りくせえぞ」
「確かに、ワシより歳食ってるジイサンが孫の成長に感慨を受けてる時の顔じゃな」
「誰がジジイか!」「誰が孫だって!」
お互いがお互いに博士への言葉に反応して声を上げた。そうしてどちらともなく顔を見合わせて……同時に笑い出した。こういう休日もいいね。
「そういえば次の休み、月に一回の孤児院のボランティア食事会あるけど来ない?」
「あー、中一からやってるやつか。んー、今回はパスかな。調べなきゃいけねえことあるから」
「ええー…たまにはいいじゃんかよ」
「つってもよ…」
「だって…」
「いや…」
――
「……それで?何馬鹿笑いをしているのかしら?」
「げ」
「お、哀ちゃんこんにちは。それに夏さんも。お話は楽しめましたか?」
「ええ、とっても。ねえ、哀ちゃん?」
「ま、まあ。楽しかった……です」
夏さん……明美さんはニコニコした顔で哀ちゃんを見ている。哀ちゃんの顔は赤いな。新ちゃんの話だと落ち込んでそうだったけれどやっぱり夏さんを連れてきて正解だったか。……お、カウンターに腕時計型麻酔銃発見。
何気なく手に取る。物自体の存在は知っていたけど触るのは初めてだ。ここに置いてあるのは博士に麻酔針の充填でも頼んでいたのかな?……へえ、ボタンでかちゃりと。んでここが発射口と。俺がかちゃかちゃしていると新ちゃんに冷やかされてた哀ちゃんがこちらに水を向けてきた。
「……っと。そ、それで?一応はお見舞いなんでしょ?あなたから何か贈り物はないの?」
「へ?ああ、それなら……」
―パスッ!―
腕時計をいじっていたのに気を哀ちゃんの方に向けたのがいけなかったのか、発射ボタンを押してしまったらしくさらに運の悪い事に発射口をこちらに向けていたことで針は見事に俺の額に刺さった。……へえ、さらさらと消えるように吸収されたな。これって今更ながら拳銃とかとは別系統で本当に危険物だよなあ。
「「「………」」」
あ、やべ。夏さんは他の三人が唖然としてることにはてなマークを浮かべてるけど、他の三人はそりゃあ驚くよな。曰く「象でも30分は寝てる」だもんな…あれ?これって博士に聞いたんだっけ?
「あ、あ、あ、あなた…」
「た、龍斗?」
「龍斗君?」
あー、これは面倒な。トリコ世界で得た様々な力の中には毒への耐性があった。これだけは常時開放している。コナン世界にある有害物質は俺にダメージを与える事はまずないと言っていい。勿論、自分が受け入れる事体勢にあれば俺も寝ていたのだが。麻酔針が飛んできても「へー、こんな感じなんだな」と呑気をかましたせいで毒耐性をコントロールするのをすっかり怠ってしまった……さーてどうしよう。…ん?これは…そう言えば今週の奴に……
「分かった、分かった。説明するから!丁度いい例えもあるし」
「ヒュペリオン体質?オメーが?」
「そ。まあ、それの超強化版だと思っていいよ。それにヒュペリオン体質ってのは創作だし実際にこの世界で俺だけだから正式名なんてないしね」
俺がしたのは丁度新ちゃんが読んでいた今週号のサンデーのとある漫画に出てきた「ヒュペリオン体質」を例に俺の体質を説明した。事実をある程度知っている夏さんは微妙な顔をしていたが。まあ、鍛練で得たと言っても信じられないしね。
「簡単に言うなら、一般人の筋繊維の一本を木綿の糸とするなら俺のは実験段階ではあるが世界最強ともいわれるグラフェンを吹きかけた蜘蛛の蜘蛛糸だ。そしてその強度に見合うだけの内臓機能、骨格、神経を持っている……って感じかな?まあ特異体質だよ」
流石に科学者。「グラフェンの蜘蛛糸」の話は知っていたらしく難しい顔をしていた。……いやまあ嘘なんだけど。1000年の鍛錬の賜物です。
「…話半分に聞いても、まああなたが特異体質だってことは本当のようね(だからあんな無茶な身代わりを買って出たのね…)」
「まあね。普通の人間ではないかな」
「…はー。なっるほどなあ。なんつーか、オメーの非常識さを説明されたのは初めてだが荒唐無稽だっていえる気がしねえぜ。なあ博士?」
「まあのう。小さい時から見て来とるから科学者の端くれからしてみれば否定すべきなんじゃが、否定できのう」
「…じゃあ、私の実験に付き合ってもらおうかしら?本当に興味深い存在だわ!」
え?いや、元気になるなら俺が出来る事は何でもやるつもりだけどその実験ってどう考えても俺の体質(大嘘)を調べるつもりだよね?やっべ、こりゃあかん。
結局、夏さんは途中で帰り俺は夜遅くまで哀ちゃんの実験に付き合わされることになった。
――
さて、博士の家に行った翌週。俺は毎月の恒例となっている孤児院へのボランティアへと赴いていた。これは元々中一の時に家から一番近い教会兼孤児院を運営している神父様に自分を売り込みに行ったのが始まりだった。まあ、自分の前世が浮浪児であったこともあり、なにかしら孤児への活動を行いたいと言うのがあったのだ。と、言っても料理しかなんだけどね。初めは訝しんだ神父様だったが、実際に料理を出して味わってもらい安上がりにすむレシピの提供を行うことを約束したことで許可をもらった。
まあ中一の小さな子供の、なんてことで最初は衝突なんかもあったんだが回を重ねる毎にそんなこともなく年上にも年下にもいい関係を気づけてイケたと思う。いじめなんてあったらしけどそこはそれ、伊達に長生きしていたわけじゃない。そんな相談事を受けたり、年初組と遊んだりと結構充実していた。神父さまやシスターも好き嫌いを言う子がいなくなり、家事の手伝いをしてくれる子が増えたり年下へ気づかいをする子が増えたと喜んでいた。そしてそんな活動を続けていてた中二で転機が訪れた。そう、あの世界大会だ。
どこからかぎつけたのかますごm…三流きsh…マスコミの皆様が寄ってたかって有ること無い事勝手に書きよるし、食事会にも来て邪魔になる始末。神父さまもいいように言われる俺の記事(偽善者だの自己満足だの)に傷ついていた。後年聞いたことだが、止めることを提案することも考えたが止めたら止めたで絶対何か言われると八方ふさがりで参ってしまっていたそうだ。まあ当時の俺は疲れたその姿を見て、そこそこブチ切れた。俺はその頃には仕事が好調なお蔭で割といい資産を持っていたのでそれを遠慮なく使うことにした。
まず、今まで協力いただいていた孤児院の教会が広大な敷地を持っていることに着目した。そして俺がしたこととは今まで教会の子供たちだけにしかしていなかったお食事会を米花町近辺の児童養護施設に片っ端から誘いをかけた。全ての諸経費は俺の資産から出した。今現在は一回に集まる子供の数は約1000人。東京都の児童養護施設の入所者数の約1/3まで膨れ上がった。バスのチャーターやら食材費やら考えると一回で軽く100万は超える。人件費だけは施設の先生たちが手伝ってくれるからタダだけど。
マスコミはまあ最初は言いたい様に行っていたが俺の行動を見ていたのはマスコミだけでなかったってわけだな。いつからか近隣の方が自主的にボランティアに参加してくれた。そして、明らかに場違いな人間は自然と排除されていった。施設同士の大人のつながりや子供たちも本当の「感謝」という気持ちを知ったと言ってくれた。今ではなくてはならないとまで言ってくれる……やってよかったな。今では子供たち発案で調理器具を綺麗にしたとまで言ってくれてたし。
……っと。昔の事を考えていたらまた盗撮の気配が。シャッターを切るタイミングで調理台の下を調べる。なんか本当に多いな最近。
「…ヒユウクン、次は何をすればいいかな?」
「あ、レイさん。そうですねえ、あとは…」
俺は話しかけた日系アメリカ人のレイさんに指示を出す。彼は今日初めて参加してくれるボランティアでレイ・ペンバーさん。なんでも仕事の休みで散歩している最中にこの活動を見かけ、飛び入りで参加してくれたのだ。
「…はい。これで準備は完了。これから始めますかね、神父様?音頭をお願いします」
「全く、いつも言うようだが君がすればいいじゃないか」
「嫌ですよ、もうあれの名前は諦めましたが自分で言うのは嫌なんです!」
「わかったわかった。…さて。『お集まりの皆さん。今日はいい天気にも恵まれ沢山のボランティアの方にも協力を頂けました!いつも言う事ですがこれだけは忘れてはいけません。これは一人の少年が初めた大いなる善意の輪であることを!それでは龍斗会、開催です!皆さん、手を合わせてください…頂きます!』」
『『『『『『『『『『『頂きます!』』』』』』』』』』』
さあここから一時期忙しくなるぞ。一斉に、それでいてきれいに並んだ子供たちに料理をよそっていかなければならない。
最初は横入りとかいろんなところに入り込む子供がいて大変だったが今ではそんな子はいない。いても周りの子が諌めてくれる。
――
お昼の配膳が済み子供たちは静かに、たまに歓声を上げぱくぱくと食べている。たまにおかわりに来る子もいるがそれくらいなら俺一人でも大丈夫なので俺だけが配膳担当だ。初めてのレイさんは最後まで残ろうとしていたが前々からお手伝いいただいている彼と同じ外国人のボランティアに引っぱられていった。大人も思い思いのグループを作り食事をとっている。俺はおかわりにきてそのまま立って俺と話をしたがる子供たちと近況を教えてもらったりしていた。一応、この後の交流、おやつ、夕方まで交流という流れを経て各養護施設に帰るという算段だ。俺はその交流に時間で今日来ている子たちとは全員話したことがある。今日朝見た限り、何か深刻な悩みを持っている子はいないことにほっとしている。いたら交流時間の時に相談に乗れるのだが…
「え?今日は最後まで居てくれないのー?」
「ああ、ごめんな。実は俺の行動に大きく影響を受けたって人からパーティーのお誘いを受けてね。俺も心当たりがあって、こればっかりは出なきゃいけないんだ…」
「そんなー」
「こらこら、龍斗さんを困らせないの。私たちも龍斗さんと一緒に居たいって思うでしょ?でもその人は中々龍斗さんと会えないんだから可哀そうでしょう?だから今日は譲ってあげましょう?」
後ろからおかわりに来た、今年高3になる女の子に俺に詰め寄ってた小4の女の子を宥めてくれた。因みにこの2人は全く別の養護施設である。
「…わかったー。私今日は我慢する!」
「ええ、いい子ね。それじゃあ私と一緒に向こうで食べましょう?優ちゃん」
「うん!遥おねーちゃん」
俺は離れていく二人を笑顔で見送り、おやつの準備をするのだった。
――
『レイ選手!サインください!』
――ハハハハハハ!
俺が到着したときにはどうやらもうパーティーは始まっていたようだった。それにしても今のは蘭ちゃんの声?何したんだ?俺は疑問に思いながらも会場に入り、会場内の視線を辿って…いた。注目されているって程じゃないけどさっきの蘭ちゃんの声と言い、何か目立つことをしたんだろう。視線をやっている人がいてすぐに見つけられた。
「やっ!皆お揃いで!」
「おー、龍斗やないか!お前さんも呼ばれとったんか!」
「龍斗君おひさーやな!」
「おひさーだよ、和葉ちゃん。それから平ちゃんの質問だけど。三人の共通項を考え「HEY!Mr.ヒユウ!!」れば…」
後ろからの声に振り返ってみると、そこには今日の主役であり、そして新ちゃんが大ファンであるレイ・カーティスが奥さんと思われる女性とともにいた。
まあ、あれだ。俺が四年前で世界大会で遭遇した悪徳記者、エド・マッケイの被害者たちだ。マイクさんは五年前に不倫疑惑、レイさんは四年前に麻薬、リカルドさんは同じく四年前に八百長をそれぞれ書かれた。まあ、マイクさんは俺の前だったので自力だったのだがリカルドさんとレイさんは俺の発言から被害者同盟ともいうのか、徒党を組んでエドに真っ向から裁判で争った。しかも俺の発言は思ったより波紋を呼び、世論も味方に付けた上で、だ。結局エドは敗訴、さらには過去の裁判も別件などで争われることとなりエド・マッケイは多額の負債を抱えているそうだ。
「Mr.ヒユウ!来てくれたのですね!あなたは私とケイコの大大大恩人でーす!!」
「もう、あなたったら…でも彼の言う通り。あの頃の私はパパラッチに私生活で囲まれてノイローゼになっていたんです。あなたのあの言葉がなかったら私は今この場にいなかったでしょう。本当にありがとう」
そう言って、二人して両手で握手を求めてくる。いやあ、なんというか…こそばゆい。
「えっと……ちゃんと届いてよかったです。あの時のあの言葉は、貴方の大ファンで俺の幼馴染みの…親友があなたの疲弊した姿に心を痛めていたのを世界大会のつい三日前に見ていまして。丁度、その敵が目の前にのこのこやってきたのでつい…」
2人はその言葉に目を丸くした。そりゃそうだ。自分たちが再起した言葉が、自分たちへのエールだったのだから。
「それは。その親友の子も私たちの恩人なんですね…ねえ、あなた?」
「ああ。それを聞いたのなら黙っていられないな。その彼に会いたいな…」
「ああ、でも。さっきちゃんと貰ってましたよ?彼にとって最高のプレゼントを。ねえ、蘭ちゃん?」
「へ!?あ!こ、このユニフォーム?」
そういって蘭ちゃんが広げたレイさんのユニフォームには「TO・SHINICHI」の文字が…いやあ、新ちゃんにはレイのサインに蘭ちゃんの愛情とこれ以上にない宝物になっただろう。
「Oh.まさかシンイチというのが?」
「ええ。俺の親友です」
「なんて偶然……こんなこともあるのね…」
カーティス夫妻は今日はもう驚き疲れたと言わんばかりに笑みを浮かべた。
そんなパーティーは終始和やかに進み、途中新ちゃんと同じでレイさんの大ファンのコナン君(新ちゃん)を紹介して(ややこしい…)、彼にサッカーを教えてあげてほしいと水を向けた。レイさんは喜んでOKをくれ、パーティーがすべて終了した後に地下駐車場でパスのやり取り、リフティングの出来を見てくれた。思った以上のサッカーの腕前に興がのったのか、なんと擬似PKの相手までしてくれた。新ちゃんは終始テンションが上がっていて俺に何度も感謝を述べてきた。良かったね、新ちゃん。
それにしても別れ際の平ちゃんの「またすぐ会うと思うけどそん時はよろしゅうな~」とはなんだったのやら。
後書き
書きたいことがいっぱいあるのにそれを文章に起こせない……文章力がないのと構成力がないのが辛いです。どこかに落ちてませんかね?
オリジナルのボランティアの話は誰かがしつこく盗撮している事、FBIの監視対象になっている事を入れるためだけに作りました。3Kの記事の時期は捏造しました。実はリカルドは元チャンピオンではなく、現チャンピオンという原作改編が起きてます。エドさんは今や記事を書ける状況にありません。合掌。
・麻酔針って一本しか装填できないけど新しい針の補充は誰がやっているんでしょうね?
・ピエロでDr.ワトソン(どちらもショタ新一命名)の赤井さんとの再会はまだ先になりそうです。
・ヒュペリオン体質とは漫画「金剛番長」の登場人物、剛力番長の架空の特異体質の事です。まあ実際にはありえない体質なんですが龍斗の異常体質を分かりやすく説明するのに最適(嘘だけど)だったので出しました。同じサンデーの作品ですし。体質の説明が穴だらけなのは、まあ龍斗の体質が本当にヒュペリオン体質ではないのでどうかご勘弁を。
・レイさんの元ネタはDEATHNOTEから。名前だけ借りました。リュークはいません。
次回はもっと紅葉を出す(ように頑張る)ぞー。
前書きで触れた通り、次話は人魚のお話となります……さあ、どう介入しよう?(-_-;)
(誰かを)生かす(展開にするの)か(皆)殺すか、久々に物凄く悩んでます。どうしよう……
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