名探偵と料理人
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第三十五話 -学園祭前-
―米花総合病院―
「博士!それに皆も!しん…コナン君が撃たれたってどういう事ですか!?」
「え?撃たれたって…怪我しただけなんじゃ?」
「お、落ち着くのじゃ。龍斗君」
「龍斗のにいちゃん…」「龍斗さん…」
博士からの一報を受けた俺は一も二もなく新ちゃんが搬送されたという米花総合病院に直行した。そこには博士、哀ちゃん、元太君、光彦君、小五郎さんが居た。
「(博士が電話してから五分。あの家から車を飛ばしても20分はかかるって言うのに…どんな魔法を使ったのかしら?)拳銃で撃たれたのよ。銃創部位は左側腹部。弾は貫通しているけど多量の出血、腎損傷の可能性もあって危険な状態らしいわ」
「な、なんですか?この子」
「あ、ああ。この子はワシが預かっている子で灰原哀というのじゃよ」
「左側腹部…明美さんの銃創の位置と近い?…いや、側腹ならさらに左。正中線から外れている分内臓へのダメージは軽い…か?でも小1の子供だぞ?銃弾が体内を通った時の衝撃波の内臓への負担も相当だったはず。心音、脈拍は危険域ではない…が失血による腎臓以外の内臓の障害が…ここで手に負えないようなら…また俺が…でも……いや…」
「え?(お姉ちゃん?)」
「お、おい龍斗君?」
「だ、大丈夫か…?」
何やら周りの皆が俺に話しかけていたようだったが、新ちゃんの容態に気を払っていた俺は気付いていなかった。自身が何をつぶやき、それを誰が聞いてしまったのかを…
がらがらがら、と。車輪の音が廊下に響いた。そちらの方に目をやると新ちゃんを乗せたベッドが近づいてきた。付添には蘭ちゃんと歩美ちゃんか。
「コナン君しっかりして!もうちょっとの辛抱だから!」
「っ!!」
その時の蘭ちゃんの表情は…「コナン」を見ていなかった。何となくそう直観が感じ取った。
「先生、大変です!このボウヤと同じ血液型の保存血パックなんですが前の手術と少し前の急患の手術で大量輸血が重なって在庫がほとんどありません!」
「なんてこった…今から血液センターに発注してもこの子の容態だと間に合うかどうか…」
な、なら。
「なら俺の「私の!」っ!」
「私の血を使ってください。私もこの子と同じ血液型ですから!」
え。「なっ!?」「…」「なん…?」(蘭……おまえ…)
「お、おい。お前どうして…」
「あ、でも一応調べてください」
「で、では採決室に!」
蘭ちゃんは看護師の先導で手術室とは別の部屋に連れて行かれてしまった。…「同じ血液型ですから」か……蘭ちゃん…っと。
「あの、看護師さん。もし蘭ちゃん…彼女の血液だけでは足りなかった時のために俺の血も使ってください。俺の血なら、誰にでも使えますから」
「え?ええ。それではあなたも採決室へお願いします」
採決室には左腕から血液を提供している蘭ちゃんと彼女の問診している看護師の姿がいた。
「龍斗君?」
「蘭ちゃんのだけで足りなかったら……ってことでね」
「そう……ねぇ大丈夫だよね?」
「大丈夫、絶対に助かる。もし向こうに連れ行かれそうになったら俺が引っぱり戻してあげるよ!」
「ふふ。そうなったときは期待してるね?…龍斗君、龍斗君は…ううん、なんでもない…」
少し表情が柔らかくなったけど顔色は悪い。それは血を抜いているせいだけではない、よな。それに今言いかけたのは…?
「えっと。すみません、そこに横になって左腕を出してもらえますか?」
「はい」
そうして俺の採血が始まった。流石に俺の血をそのままというには問題があるので、猿武による細胞の意思統一の応用で検査に引っかかりそうな細胞や成分は普通の人の血液にある成分に擬態して抜いてもらった。
血を抜いている間に感染症の既往歴、ワクチンや予防接種の有無、薬歴などを聞かれた。俺の問診中に蘭ちゃんと新ちゃんのクロスマッチテストの問題はなかったことが伝えられ、彼女の血液は手術室へと運ばれていった。彼女もすぐに出て行った。俺の血も新ちゃんと蘭ちゃんの血液と適合するといいが…
採決が終わり、採決室から出た俺は真っ先に手術室に…は向かわず自動販売機のあるコーナーに向かった。…しまった。着のみ着ままで飛び出してきたから財布も携帯も…お?
「ラッキー。ポケットに千円札か。…くっしゃくしゃだけども」
なんとか機械に通し、俺はスポーツドリンクを二つ買って手術室へ向かった。
手術室の前には博士と哀ちゃんが立ち、他の人たちは壁側の椅子に座っていた。
「はい、蘭ちゃん。これ飲んで。水分補給しないとね」
「あ、ありがとう。龍斗君」
「いえいえ」
スポーツドリンクを渡した後は、博士の近くに立ち話しかけた。
「博士。手術室に入ってどのくらい経ちましたか?」
「おお、龍斗君。そうじゃな、30分って所かの。それより君の方こそ大丈夫かの?」
「え?ええ、血を抜いたくらいじゃどうってこともないですよ?」
「いや、そのこともじゃがそうじゃないぞい(さっきぶつくさ言っていたのは無意識だったのかの?あそこまで動揺した龍斗君を見るのは初めてじゃったしな…)」
「……」
「な、なに?哀ちゃん」
「…いいえ。なんでもないわ」
「そ、そう?あ、博士(優作さんや有希子さんには?)」
「(いや、まだ連絡しちょらん。どうすべきかのう)」
「(…すべき、だと思いますよ。だって家族ですから。たとえ今どうしようもなくても、あとから聞くより今知らせておくべきかと。俺が電話してきますよ。紅葉にも連絡を入れないといけないので)」
「(わかった)」
「(それじゃあ…)あの、小五郎さん」
「ん?お、龍斗君。どうした?席代わるか?蘭と同じで血を抜いてきたんだろ?」
「あ、それはありがとう…じゃなくて。コナン君の親への連絡はどうするのかなと思いまして」
「あー!そうか、それをしなくちゃいけなかった!…でも弱ったな、連絡先の番号が今は分からないぞ…」
「あの。俺が掛けてきましょうか。一応知り合いで番号も分かりますし」
「…っ!」
蘭ちゃんが俺の方を見ているが気づいていないふりをする。…これはちょっと迂闊だったか?
「そうか!それじゃあよろしく頼むよ」
「はい」
俺は手術室から離れ、電話コーナーへと向かった。
―
『ええ!?新ちゃんがお腹を撃たれた!!?大丈夫なの?無事なの?今どこにいるの!?ちょっと優作!!いつまで寝てるの!?早く起きて!知り合いに凄腕の外科医とかいないの?!ひっつかまえて今から日本に行くわよ!!!』
電話コーナーについた俺はまず紅葉に連絡した。携帯を家におきっぱにしていたので連絡は取れずにやきもきしていたとまずは怒られてしまった。
事情を伝えると、怒っていた様子からすぐに神妙な声になった。夏さん…明美さんの前例があったからだろう。手術も順調に進んでいることを伝え、今日は泊まりになりそうだという事説明し電話を切った。
そして冒頭の有希子さんの応答というか叫びになるのだが…電話コーナーに国際電話をかけられる公衆電話があったことにまずは安堵した俺は、以前に教えてもらった番号を掛けた。時差の問題で向こうは早朝なので寝ていることを考えて根気よくコールした。20コールを超えたあたりで出ないかなと諦めかけたが、その後ねぼけ声の有希子さんが出てくれた。そして事情を説明し。ああ、どったんばったんしているのが電話口から漏れてる…
『あーあー。龍斗くん?ちょっと、気が動転してる有希子から話は聞いた。新一が撃たれたと…君には今何が聞こえている?』
ああ。本当に優作さんはすごいな。息子が撃たれて手術をしていると聞いて、動揺していないはずがない。俺と父さんのように拳銃で撃たれた程度で死ぬはずがないなんていう信頼関係があるわけでもない。そんな中で一番必要な情報を瞬時に判断できるなんて。
「ええ。死神の足音は聞こえません」
『…そうか。それは良かった…ほら、有希子!今から医者を連れて行っても間に合うはずがないんだから少しは落ち着きなさい。新一なら大丈夫だから。…それじゃあね。また日本で。伝えてくれてありがとう龍斗君』
「お礼を言われるような事では…ではまた、日本で」
…ふう。手術は無事終わったみたい…だな。電話をしている最中に手術は終わっていた。内容を聞くに臓器損傷はなく、ヤマをこえたとのこと。あとは虚血による臓器への障害がないことを祈るのみだな…よかった。
―
(…ん。ああ、どうやらまだ。生きてるみてーだな。…しぶといね、オレも…イテテ…)
「ん?蘭?」
―ガチャ
「オメー、蘭に感謝するんだな」
「おじさん…?」
「ふわぁっ…蘭のやつ、オメーに血を400ccもやったうえに夜通し看病してたんだからな。偶然オメーと蘭の血が同じ型だったからよかったけどよ、もし特殊な血だったらオメー今頃あの世だぞ。…ああ、龍斗君にも感謝しておけ。彼ももしダメだった時のために血をやったうえにホラ」
「え?」
「おはよう、コナン君。意識が戻って安心したよ」
俺は寄りかかっていた壁から離れ、新ちゃんへ近寄り額に手を当てた。
「…ん。熱もないし、顔色もいい。…よかったよ、ほんとに」
「…ああ」
「『ああ』…じゃねえ!まったく、蘭がいっぱい血をくれたんだ。早く元気にならねえと承知しねえぞ?!」
「う、うん」
「さて、と。龍斗君。コーヒーでも飲みに行かないか?夜通し様子を見ていたのは君も同じだろ?」
「あ、それではご相伴に預かります。(新ちゃん、ご両親にはしっかり連絡入れたから、ね?)」
「げっ!?」
「それじゃあ行きましょうか」
「ああ」
俺はコーヒーをごちそうになり、そろそろお暇しようという所で新ちゃんを執刀した医師に声を掛けられた。
「君が、あのボウヤに血液を提供してくれた人だね」
「え、ええそうですけど」
「ちょっと話をしても大丈夫かい?」
なんでも、俺の血球成分は軒並みアスリートを凌駕する数値をたたき出しており子供に全血輸血するには適していなかったの事。そして使用しなかった血液をどうするかについてだった。
それに対して俺は、緊急事態の事だったので廃棄することを求めた。今度しっかり献血に行くことを伝えた上で。…一応擬態をしたとはいえ、振り返ってみて冷静だったとはとても言えない。なにかポカをしてそれが血液に残っているかもしれないと思うと、誰かに使われるのは怖すぎるからね。
―
新ちゃんが撃たれて数日。高校帰りに紅葉や蘭ちゃん、園子ちゃんとともに頻繁にお見舞いに行っていた。子供だけあって回復力もあり、順調に回復しているようだ。そして今は、学園祭での劇の練習をクラス全員で行っている所だ。
結局、配役はあの放課後の話通りになった。今は蘭ちゃんが馬車に乗り、その道中で悪漢に襲われ黒衣の騎士が舞台上から飛んで登場するシーンを練習してい…た!?
「…いったあぁ!」
「だ、大丈夫?園子」
「ちょっと見せて。…ああ、これは捻挫かな?取りあえず保健室に行こう?」
「ええ…痛い…」
飛び降りるシーンを再現したかったのか、椅子の上から飛び降りて剣を振り下ろした園子ちゃんはそのまま床を剣で叩いてしまい。手首をひねってしまったみたいだった。
俺は彼女を連れて保健室に向かった。―コンコンコン
「先生?いらっしゃいますか?」
「ええ、いますよ。どうぞ」
「失礼します」
「おや、緋勇君と…そちらの子は?」
「ああ、実はですね…」
俺は、シャロンさんに事情を説明した。
「なるほど。そういうことでしたか」
「それにしても…どーしよぅ、龍斗君。流石にこの腕じゃあ無理ですよね?新出先生」
「そうですね。日常生活ならば無理をしなければという所ですが。剣を振ったりするのは学校医として止めさせてもらいます」
「うーん。もう、皆役を決めちゃってるし。時間もないし…ねえ、龍斗君。代役できない?」
「勿論!…といいたいところだけど、俺って演技に関してはてんでダメなんだよ。最初の頃を知ってるでしょ?」
「う。確かにこんな一面があるんだってビックリするくらい下手だったわね…」
「…あの?お二人に提案があるのですが…」
―
―パチパチパチ!
「すっごーい、新出先生!台本を一回見ただけなのにかんっぺきな演技!動きもなんか一人だけ本物の俳優みたいな空気出してたし!」
他の見学していたクラスメイトも大絶賛だ。…そりゃそうだ。中身大女優だもの。それにしても妙に嬉しそうだな、シャロンさん。蘭ちゃんと何かあったのかな?
「新出先生、もしよろしければ代役お願いできませんか?」
「ええ。私で良ければ」
…まあ、いいか。
―
「それじゃあ、後二、三日で退院できるんですね?」
「ええ」
今日も今日とて、お見舞いに。新ちゃんが撃たれて10日が経っていた。主治医の先生によると後遺症が残るようなこともなくもうすぐ退院できるそうだ。ただ、今は抵抗力の低下による風邪をひいているそうだ。…ああ、蘭ちゃんの血液には新ちゃんが感染症になりうる因子はなかったそうだ。
子供たちも丁度お見舞いに生きていたがそろそろ日も暮れる頃なので彼らは帰し、俺達は新ちゃんを病室に戻すことにした。
「でも二、三日後って学園祭の真っ最中で三日後なら劇の当日よ?どーするのよこの子の迎え。あんた朝から手が離せないわよ?」
「大丈夫!お父さんに頼むから…」
「そーいえば、アイツに連絡した?」
「アイツ?」
「新一君よ!蘭が劇のヒロインをするって言ったらすっとんでくるんじゃない?」
「来ないよ…それに、いいんだ私。コナン君が見に来てくれれば!」
「「「え?」」」
「来てくれるよね?」
「う、うん」
「なーに?もしかしてそのがきんちょに乗り換えるの?」
「何言ってるのよ、園子」
「(ちょ、ちょっと。龍斗。蘭ちゃんもしかして…)」
「(うーん。これはちょっとまずいかなあ。紅葉から見てもそう思う?)」
「(そらもう。あの表情を見たらそうとしか考えられへんやろ?ありゃあ、想い人を見てる顔やで?)」
俺と紅葉は三人から少し後ろを歩いてひそひそ話をしてさっきの蘭ちゃんの事を話していた。
「(まずいなあ。そうだとすると、俺も疑われてるかも)」
「(なんか心当たりがあるん?)」
「(いや、新ちゃんが手術中に新ちゃんの親に電話しに行った…)」
「(た、龍斗にしてはあほなことをしなさったな!?どーするん?完全に知ってて黙ってるてばれとるやんか)」
「(どうしよう…ん?)」
「どないした、龍斗」
「いや、病室が騒がしいなって」
新ちゃんの部屋は個室だ。なので今は無人のはずだが。『あんた何考えてんの?ユリなんて買うてきて!』『うっさいやっちゃなあ、花やったらなんでもええやないか!?』ああ。この声は…
前に歩いていた三人もこの声に気付いたのか。学園祭についての話を中断して病室に入った。
「アホ!ユリはなぁ。首が落ちるいうて縁起が悪いんや!根付くような植物と同じで病院に入院している人に贈る花とちゃうんやで?!」
「そやったら、初めからそういうとけボケェ!!」
「服部君と和葉ちゃん…どうしたの?」
ああ。やっぱり大阪の幼馴染みの二人だよね。
「おう!ボウズが大けがしたっちゅうから学校帰りに飛行機のってきたったんや!」
「それで?どうなん?具合…」
「うん。順調に回復しててあと二、三日で退院できるんだって」
「それはええことや!…っと、それはそうと。和葉、とにかくお前の言う縁起のええ花でも買うてこいや!」
「なんや、えっらそうに…」
「和葉が道に迷わんように、姉ちゃんらしっかり案内したってや!」
「はいはい…」
そのまま、女子高生4人は新ちゃんの病室から出て行った。確か、この病院には花屋がなかったから外に出る事なるし時間がかかるな。
「んで?ホントは何しに来たんだよ?わざわざユリなんか買ってきて人払いしてまで」
「なーんや、ばれとったのか。まあええやんか。腹撃たれた同士、仲ようしようや!…なーんてな。実は昨日の晩に阿笠っちゅうじいさんから電話があってなあ。龍斗がココにいたのは手間が省けたわ」
「「え?」」
俺も?
「オマエの相談に乗ったってくれちゅうんや!」
「相談?」
「なんや知らんけど、工藤…おまえ…あの姉ちゃんに正体がばれそうなんやってな!」
…なんで嬉しそうな顔で言うのさ、平ちゃんよ。
「ばれかけてるんじゃねえよ、ばれてんだよ!」
「え?まさか、お前からはなしたんか?」
「んなことするわけねえだろ…」
「そやったら、勘違いかもしれへんやないか。ばれると怖い怖いって思うとるからそうおもうんや」
「あー、いや。多分ばれてると思うよ?」
「なんや、龍斗。お前まで」
「そもそも。蘭ちゃんはそう察しが悪い方じゃないんだ。だってあの英理さんと小五郎さんの娘だよ?前に一度ばれかけた時俺が変装して事なきを得たことがあるけど。しばらくしてから蘭ちゃん自身がキッドに変装されたことがあって。そこから有希子さんが俺達と遊んでた時にお互いの顔を変装して遊んでいたのを思い出したのかもしれないし。ただ、有希子さんがコナンの正体を知っていないとそこは思い当たらないだろうけど…」
「いや。母さんが一回俺の正体を誤魔化したことがあったから…母さんが龍斗を変装させたっていう推理に思い当たっても不思議じゃねえ。まあ実際は龍斗が自分で変装しただけどな…他にも思い当るところはいっぱいあるんだ。今からそれを誤魔化すにはオレが分身でもしねえと無理って感じだぜ」
「なんや、龍斗。そないな特技があったんかい」
「あ、ああ。まあね」
「でも、わからねえ。なんでそこまで分かっててオレにそれを言わねーのか」
「「…」」
その言葉に思わず顔を見合わせてしまった俺と平ちゃん。ため息を一つついて平ちゃんが話し始めた。
「相変わらず人の心を読めても自分の事となるとさっぱりやのう。あの姉ちゃんが気ぃついたのをだまっとる理由はただ一つ…」
「な、なんだよ」
「待っとるんや。お前の口から直接、話聞かせてもらうんをな!!…こうなったら腹くくって、洗いざらい話してもうた方がええんとちゃうか?」
「バーロ…人の苦労をしょいこんで自分の事のように心配して泣いちまうようなお人よしに。ンなこといえるわけねーだろ…かといって張りつめた蘭をこのまま欺き通す自信はない…ホントは全部話して楽にしてやりてーんだ…」
「…新ちゃん」
「なあ。龍斗、服部。二人ならどっちだ?どっちを選ぶのが正解だと思う?」
その言葉に平ちゃんと俺は返事を返すことはできなかった。…いや、俺は返せなかったのではなく返さなかった。こと、このような事に関して俺は非常識な解決策をごり押ししてしまうだろうから。
っと。そういえば。
「それで?話変わるけど、俺もいてよかったってなんだったんだい?」
「ん?おおう、そやったそやった。なんや、龍斗。あのちっさい姉ちゃんに何か言うたんか?」
「ちっさい姉ちゃんっていうと…哀ちゃんの事?いや、特に心当たりはないかな?そもそも最近会ったのは新ちゃんの手術の時が最後だし。どうしたの?」
「いんや。実は阿笠のじいさんがな。ちっさい姉ちゃんが龍斗の事を怪しんでるみたいだっていうとったんや。どうすればいいか分からんからこっちも相談に乗ってくれってな」
「??んん??分からん。分からんけど、気に留めておくね」
「おう」
そんな話をしていると花を買いに出ていた四人が戻ってきて。少しだけみんなで話して解散した。
そして学園祭が始まり、二日目に突入した。
後書き
今回の主人公は冷静に考えれば蘭の400ccで場を繋いで血液センターからの輸血パックを待てばいいのですが、気が動転して結構ポカをしています。
次回、黒衣の騎士編です。原作通り新一は現れるのか?来週をお楽しみに!
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