レーヴァティン
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第四十二話 山伏その十一
「噴火した時は恐ろしいです」
「災厄も備えている聖地ということだな」
「富士は」
「そして辺りは火山灰か」
「それに悩まされてもいます」
「そのことわかった」
英雄は良太に確かな声で答えた。
「人ではどうしようもないが」
「それでもですね」
「俺達ならどうにか出来るかも知れない」
「富士山のこととですね」
「辺りの土のことをな」
その両方をというのだ。
「そして出来るならだ」
「果たしますね」
「そうする、そして今はな」
「鞍馬山にでござるな」
智も飲みつつ聞いてきた。
「あの山に」
「食った後で行く」
都を発ってというのだ。
「そうする」
「それでは」
「酒も美味かった、満足して行こう」
「これから」
五人は席を立って勘定を払ってから店を出た、だが店を出てからだった。
峰夫は自分の顔に当たった風から仲間達に言った。
「今夜は雨宿りが出来る場所に入りましょうぞ」
「雨が来るか」
「はい、風がそうしたものであります」
だからだというのだ。
「ですから」
「夜はだな」
「雨宿りが出来る場所に入りましょうぞ」
「それではな、あとだ」
「あと?」
「あの連中だが」
如何にも柄の悪そうな細面で薄茶色の髪の毛を髷にした男を中心とした数人の男達が娘達に絡んでいた、そしてだった。
その彼等を見てだ、こう峰夫に言ったのだ。
「少し行って来る」
「では」
「そこで見ていてくれ」
こう言ってだ、そしてだった。
英雄はまずその薄茶色の髪の男の首を問答無用で刎ねてそうしてその男の首を掴んで別の男の頭に放り投げてぶつけてだった。
その男の頭を砕き三人目の首も刎ね四人目は胴を両断して最後の一人は唐竹割りにして屍は術で焼き捨てた。
そうして自身の凄惨な成敗に驚きつつも礼を言う娘に一瞥もせずに仲間達のところに戻ってそうして言った。
「行くか」
「一瞬でござったな」
「五人共始末してやった」
「悪党には苛烈に、でござるな」
「それが俺だ、悪党の命なぞ知ったことか」
既に骨だけになっている賊達の骸を一瞥もしない。
「善良な民達の害でしかないからな」
「だから今の様にでござるな」
「するだけだ、切って捨てて魂も消し去る」
術はそうした魂までも焼き尽くす術だったのだ。
「地獄で罪を償え」
「そうでござるか、では」
「行くぞ」
鞍馬山にとだ、智にも応えてだった。
英雄は仲間達と共にその鞍馬山に向かった、峰夫がいたその山に。
第四十二話 完
2017・11・15
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