名探偵と料理人
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幼少期~少年期
第四話 -工藤新一少年の冒険-
前書き
このお話は原作55巻のFILE6~9が元になっています。
江舟先生の件が終わり、その後これといった事件に遭遇することもなく平和な保育園生活を送った。幼女二人組に幼児が加わり俺も含めて四人でつるむことが多くなり、保育園だけでなく三人で近所に探検に出かけたり園子ちゃんの家でかくれんぼをしたりするようになった。呼び方も新一君から由希子さんみたいに新ちゃんと呼んだら反応が面白かったので新ちゃんにした。
冒険した日は、流石は未来の名探偵といえばいいのか、好奇心の塊のような新ちゃんが色んな所を駆けずり回るので夕方に蘭ちゃんを送っていく頃には泥泥になっていた。そのことで二人は英理さんにこっぴどく叱られていた。俺?俺も最初の頃は一緒に怒られていたけど、俺がきれいな服であること(俺自身戻ってきた力に慣れるためにそしてなにより服を汚して母さんに迷惑かけたくない一心で汚れないように立ち回った結果)、二人を風呂に入れたりしていたらいつの間にか保護者のような立場に見られたようだ。一回、本気で危なかった時があってそれを烈火のごとく怒っていたら偶然毛利夫妻にそれを見られたのも大きい。彼女曰く、あの時の俺は後ろで見ていた英理さんも冷や汗が止まらないくらいの剣幕だった。彼曰く、あれは今まで相手をしてきたどんな凶悪な犯罪者も震え上がる形相だった、そうだ。だから蘭ちゃんはその件があってから「新一君と遊ぶときは龍斗君の目の届くところで」と言われているそうで、必然三人で遊ぶことが多くなったというわけだ。
盆や年末年始には京都にある父さんの実家に帰りそこで平ちゃん、和葉ちゃんと親交を深めた。一回たこ焼き器を持って遊びに来たので腕を振るった結果、服部一家と遠山一家双方に好評を頂いた。
夏に遊びに行ったときにかき氷を作ってあげたら平ちゃんに「なんで、水道水の氷から作ったかき氷なのにこんなに味が違うんや!!?」と言われ二人して沢山おねだりされたので、頭が痛くなるよーっと言いながら作ったのはいい思い出だ。案の定その後二人して唸っていたのには笑ってしまったが。
そんなこんなで、割と楽しい保育園生活も昔の事。ついに、小学生となった。もちろん通うのは帝丹小学校。父さんと母さんは当初の予定通り俺が保育園を卒業して、そしてこちらは想定外なことに俺が料理が出来る事もあり活動範囲を国内のみから国外へと広げた。掃除や洗濯は家政婦さんを雇い、食事は俺が自炊するというわけだ。約四年ぶりとなる海外での依頼解禁ということでこれまたひっきりなしにきているそうだ。休みには帰ってこれるようにするらしいけど、やはり離れるのは少し寂しい。
小学校に上がっても俺ら三人は変わらずよく一緒に遊んでいる……そう、三人なのだ。小学校に上がって暫くしたら突然新ちゃんがつるまなくなったのだ。学校でも、学校が終わっても。多分、女の子といつもいることをからかわれたりしたんだろう。俺にもよくからんでくるが何を今更とかわしていたら、エスカレートして矛先を蘭ちゃんたちに変えたのでお灸をすえたらそれ以降はしてこなくなった。
こればっかりはなあ。振り返ってみれば子供だったなあと思う事なんだけど、今実際に新ちゃん子供だしな。何かきっかけがあれば……
「ねえ、龍斗君。わたし、新一と仲良くしたいよ」
小学校が終わり、いつもは三人(園子ちゃんは執事さんが迎えに来ている)だったのが最近は二人だ。新ちゃんはさっさと帰り、おそらくはあの膨大な書籍数を誇る書斎にこもって本でも読んでいるんだろう。
「うーん、なにかきっかけがあればいいとおもうけどね。そういえば蘭ちゃん『毛利』って呼ばれてるけどなにがあったの?」
「うん……休み時間に一緒に遊ぼうと思って新一って呼んだら「いつまでもガキじゃないんだから工藤君って呼べよ」って言われて。私の事も毛利さんって呼ぶからって……」
あー、あー、あー。まあ予想してた通りかあ。その時のことを思い出したのか蘭ちゃんはさびしそうな顔をしていた。しかし『ガキじゃない』と来ましたか。小学校一年生が何を言いますかね。
「今度、無理やりにでも放課後連れ出して遊ぼうか。僕も最近新ちゃんと遊んでないしね。僕の誘いなら断らないと思うし。それに新ちゃんは恥ずかしがってるだけで蘭ちゃんのこと嫌いになったとかじゃないから安心して」
「わかった。ありがとね。龍斗君、相談に乗ってくれて。龍斗君、おにいちゃんみたいだね」
「ははは……」
こっちでも『兄貴分』かあ。たわいもない会話はしながら、少しだけ元気の出た蘭ちゃんを自宅まで送り俺も帰路についた。
あれから数日、中々タイミングが悪くて遊びに誘えない日々が続いた。蘭ちゃんに用事が入ったり俺がパーティに連れていかれたり。あ、気になって園子ちゃんに俺の事をどう思ってるかと聞いてみると「面倒見のいい親戚のお兄ちゃん」との返事をもらった。というか、あの保育園に通ってた同年代の子たちはみんな俺の事をお兄ちゃんみたいだと思っているそうだ……いや、うん。振り返ってみればそう思われるのも仕方ないのか。うん、この件は忘れよう。
「え?お化け!!?」
「うん、満月の夜には図書室にはこわーいお化けが出るんだって」
「そ、そんな……」
「そのお化けは、不気味な鳴き声で変な帽子をかぶってるんだって……」
んん?いつもの通り休み時間三人で話していたら二人が何やら盛り上がっていた。
「どうしたの?二人とも」
「園子ちゃんが……」
「龍斗君!お化けが出るのよお化けが!!」
園子ちゃんが言うには図書室に本を持ってきていたおじさんが図書室にまつわる怪談話を教えてくれたというのだ。
「二人とも落ち着いて。お化けが出るのは満月の、しかも夜だから僕たちには何の問題もないよ」
「そ、そっか。お日様が出ているときは安心だよね。ね、園子ちゃん」
「う、うん言われてみればそうね。よかったー」
「それより、このこと新ちゃんに言ってみれば?よく図書室に行ってるし怖がって行かなくなるかもしれないし、お話の話題にもなるし」
「あ。そ、そっか。うん、言ってくる!ありがと龍斗君!!」
笑顔で新ちゃんに近寄っていく蘭ちゃん。最初は邪険に扱おうとしていたが話を聞いているうちに興味を持ったらしい。そこから話が弾んだのか前みたいに笑いあう二人がいた……よかったよかった。その様子を笑いながら見ていると園子ちゃんに
「大変だねえ、おにいちゃん♪」
と言われてしまった。ひ、否定できぬ。
次の満月の日。俺は蘭ちゃんにあの話を新ちゃんに伝えることを提案したことを後悔していた。なぜなら……
「し、新一ぃ、やっぱり行くのやめようよ。こんな時間に学校に行くの」
「だからオメーは帰れっていってるだろ。俺と龍斗だけでもいってくるから」
「だって、二人ともお化けに食べられちゃうかもしれないし」
「バーロー!この世にお化けなんていやしないんだっっつうの!!」
俺の阿呆、好奇心の塊の新ちゃんにお化けなんて非科学的なこと教えたら絶対正体を確かめてやるってなるに決まっているかじゃないか。それを心配になった蘭ちゃんまでこんな時間抜け出して。小さいころからの習慣か、俺を呼んだのはグッジョブだと言いたい。何も、この世で怖いのはお化けなんかだけじゃない。こんな時間に容姿がいい子供だけで外に出ていたら何に巻き込まれるかわかったもんじゃないからな。この事はあとで新ちゃんに説教しなきゃ。
それにしてもなーんか違和感あるんだよな。デジャヴュというかなんというか……
なんだかんだ言いあっている二人を見守っていると無事小学校につき、新ちゃんが予め開けていた窓から校内に侵入した。その時に不覚にも笑ってしまったのは新ちゃんに「校内に入るんだからしっかり靴脱げよ!」と怒られてしまったことだ。いや、俺が靴を脱がなかったのが悪いんだけど新ちゃんもしっかり小1なんだなあ。
警備員の酔いどれオジサンを躱して無事(?)図書室についた。噂の真実はカーテンと隙間風の音だった。種が割れたことで帰ろうとすると……
――本当にそう思うかい?――
「え?」
本棚の上に座っていた男がそう言ってきた。
「な、なんだお前!!?」
突然聞こえた声にオレは蘭を後ろにかばいながらそう言った。龍斗の方は……なんだよ、そんなこんな怖い顔初めて見たぞ。前かがみになっていつでも飛びかかれそうな体勢をしてるし。いつも穏やかにしていてそれでいてしっかりと悪いことや危ないことをしたら叱ってくれる、こっぱずしくていえねえけど兄貴みたいに思ってる龍斗が……今はコワイ。
「私かい?私は君の兄弟だよ。いや弟というべきかな?」
「弟!?」
「ああ、少々歳は離れているがね……」
何言ってんだコイツ!?ともかくオレ達だけじゃだめだ。
「おい、警備のおじさんを連れてこい!!早く!!」
とにかく、蘭だけでも逃がさないとっ!!ごめん、龍斗!!
「あれ、開かないよ!!」
「な、なんだと?!」
「無駄だよ、その扉には私の言いなりだ。私の言う事しか聞かないのさ……」
くっそ、どうしようもないのか。それからオレはこの男が言う挑戦を受けることにした。血が好きなんていってナイフを出してくるやつだ。三人で助かるには受けるしかない……
「ふっ。それでこそ工藤新一。私の兄だ……」
そういうと、男は袋を放り、ナイフを投げてっっっっ!!?
「龍斗!?」
「な!!?」
今まで一言もしゃべっていなかった龍斗が、袋を貫通したナイフがこっちに飛んできた瞬間俺たちの前に出て、ナイフが龍斗に……!!龍斗!!
「龍斗!?」
「な!!?」
男がナイフを投げた瞬間、俺は二人の前に出ていた。ナイフの軌道は俺達三人の隙間を抜け、誰も傷つけない軌道だった……子供がびっくりして体を動かしたりしなければな!!
「ねえ、お化けさん。俺みたいに突然割り込むような子供がいるかもしないよ?子供は時に大人の予想できない動きをしたりするからね……」
「君のように……かい?それにしてもまさか私の投げナイフを指二本で受け止めるとはね」
そう、お化けさんの投げたナイフは割り込んだ俺の首元で止められていた。柄の部分を俺が人差し指と中指で挟んだ状態で。おそらくは壁に刺さったナイフに注目している間に消えようとしたんだろうが……
「その、体に仕込んでいる煙玉を使って消えるんだったら俺は何もしなかったよ。火薬のにおいがプンプンしてるよ?だけどね、そうせずにこいつらに凶器を向けた。それは、ダメだ」
「ッッッ!君は……これはとんだ虎の尾を踏んだかな?」
虎の尾?ああ、そうかもな。だが踏んだのは龍の尾だ!!
「ハッ!」
「!!」
ボフン!!!
袋をナイフから抜き、そのままノーモーションで男に投げ返した。殺す気はなかったし、ナイフは天井に突き刺さっているからおそらくは顔をかすめるくらいはしているだろう男はナイフを投げたと見るや否や、煙玉を使ってこの場から逃走していた。今は……校庭を横切っているか。心拍数も上がっている。まあ十分脅かしにはなったようで何よりだ……うわ、刺さったナイフ、柄しか見えないって彼が避けてなかったら割とやばかったかも?俺も冷静じゃなかったってことか。反省しなければ。
「ふう。二人とも大丈夫?」
「う、うん」
「あ、ああ。大丈夫だけど龍斗の方こそ大丈夫なのか?すっごいコワイ顔してたしナイフが」
「しっかり受け止めたから大丈夫。とりあえず家に帰ろう」
さっきの様子に怯えたのかすこしぎくしゃくしていたが、扉が開かなかった仕掛けの種や袋の暗号についてあーだこーだいいあっていったら、新ちゃんを家に送ったころには元に戻っていた。
そのまま、蘭ちゃんを家まで送っていった。そういえばふと思ったが、
「ねえ、蘭ちゃん。新ちゃんって名前で呼ぶのはガキっぽいって言ったんだよね」
「うん」
「でもさ、よく思い出して。英理さんや小五郎さんがお互いの事なんてよんでるか」
「……あ!!」
「ね。別に名前で呼ぶことはガキっぽいことじゃないんだよ」
「そっか!!じゃあこのことを新一に言えば」
「あ、ダメだよ。せっかくだし新ちゃんがついうっかり『蘭』って呼んだ時に今の話をして上げな。今まで悲しい思いをしてきたんだしそのお返ししなきゃ。」
「そ、そうだよね。うん。わかった」
そして、蘭ちゃんを家に送り届けた。案の定ばれていて、英理さんがお冠だった。一応のフォローを入れておいてそのまま帰宅することになった。これから現場に向かうという小五郎さんが途中まで送って行ってくれるという事なのでそありがたく送ってもらい、持っていた自作の飴を渡して別れた。
ああ、これ、原作にあった気がする。そんな風に思いながら俺は睡魔に身をゆだねた。
次の日、起きてみると書置きと朝ごはんが用意してあった。どうやら、深夜に帰ってきて俺が起きる前にまた出て行ったようだ。GW中とあって国内の依頼で大変だと言っていたっけ。最後の方は時間とったから遊びに行きましょうねと言われたのを思い出した。さて、遅めの朝食も済ませたことだし新ちゃんの様子でも見に行きますかね。
んん?なにやら工藤邸の前に三人の大人が。
「こんにちは。優作さん、有希子さん、英理さん」
「おや、こんにちは龍斗君。新一と一緒に行ったんじゃなかったのかい?」
どうやら、蘭ちゃんと新ちゃんは阿笠博士に頼んで暗号が示す杯戸港に行ったらしい。おいおい、置いてきぼりか?
「それじゃあ、私は初公判の準備があるから。龍斗君、あの二人が悪いことをしたらしっかり叱ってあげてね?」
そういって、英理さんは帰っていった。色々と集中したいと言っていたので気分がすっきりするように配合したミントキャンディーを渡した。
「そういえば、有希子も今日君が弟子入りした奇術師の人と会う約束があったんじゃなかったかい?」
「あー、そういえば!」
ん?マジシャン??弟子入り……満月の夜…図書室………あ
「あーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「ど、どうしたのそんな大きな声を急に上げて。というか、龍斗君のそんな大きな声初めて聞いたわよ?」
「う、ううんなんでもないよ」
やっぱり、これ原作にあったやつか!先代怪盗キッドと邂逅する話。ってことは由希子さんの会う相手ってのは……
「ねえ、有希子さん!!」
「なあに、龍斗君」
「俺も、そのマジシャンって人に会ってみたい。ついて行ってもいい?」
「え?いきなりどうしたの?」
「だめ?」
「ダメじゃないけど……」
「有希子、連れて行ってあげなよ。めったにない、龍斗君のワガママだよ?彼にはいつも美味しいものをごちそうになっているんだし」
「そうね。もしかしたら葵ちゃんも言われたことがない龍斗君のワガママだもんね。わかったわ。準備してくるからちょっと待っていてくれる?」
そのまま、有希子さんと一緒に待ち合わせをしているというレストランへとやってきた。最初は二人で話がしたいという事だったのでレストランの外で時間を潰すことにした。
本屋などで時間を潰し、もういい頃合いかと思いレストランに向かうと
「それはエクスクラメーションマークひとつ……ですね?」
「え、ええ。でもどうして」
「ふっ……流石は私の名付け親だ」
うん、どうやら話は一段落していたみたいんだな。
「あ、そうそう。実は私も子供を連れてきてたんですよ。私の親友の子供なんですけどあなたのファンでどうしてもと」
「ほう、それは嬉しいですね。その子はどこに?」
「丁度来たみたいですよ。ほら、先生の後ろに」
その言葉に後ろから近付いていた俺に向き直った男性は顔一瞬強張らせ、次の瞬間にはすぐに取り繕い笑顔を作った。
「こんにちは、黒羽盗一さん。俺、黒羽盗一さんのファンの緋勇龍斗って言います。よろしくお願いします」
「あ、ああこれは礼儀正しい子だ。この怪斗にも見習わせたいくらいだ」
「今日は盗一さんにマジックについて聞きたいことがあって有希子さんにどうしてもって頼んだんだ……あれ?どうしたの?顔、怪我しているの?」
「!!っ」
そう、彼の顔には左のほほ骨の下からこめかみに向かってテープが貼ってあった。俺が投げたナイフがかすった跡のようだ。
「昨日ちょっと失敗してしまってね」
「盗一さんでも失敗することがあるんだね」
「ああ。私は華麗で完璧なマジックを信条としている。が、物事に完璧などない、どんなイレギュラーがあるかわからないという基本的なことをすっかり忘れていたようだ。この傷はそのことを思い出させてくれたよ」
イレギュラーが起きても臨機応変に対応して完遂するのが腕の見せ所だがね。そう続けて盗一さんはカップに口を付けた。ふむ、思った以上に昨夜の件について考えてみてくれていたようだ。
その後しばらく歓談した後、有希子さんの取材の時間が終わったということでお開きとなった。
途中、怪斗君がマジックを見せてくれたのでお礼に『おいり』を贈った……ら、「うめえうめえ!」と止まらない様子だったので「お母さんの分が無くなったらお母さん怒るよ?」と言うと、ぴたりと手が止まった……どこの家庭も母は強しなんだなあ。
GWが明け、久しぶりの登校となった。朝学校に向かうために家を出ると新ちゃんが待っていた。
置いてきぼりを食らって以来久々に会った。
「おはよう、宝探しに俺を置いて行った新ちゃん?」
「うっ。悪かったって。でもまたお前が俺達のために無茶するんじゃないかって思ってよ」
「……なんてね。冗談だよ。別に怒ってないし。多分だけど今回は俺が一緒に行かなくてよかったと思うしな。それより宝は見つかった?」
「ああ、すっげえきれいな夕陽だったぜ!」
「夕陽?」
「ああ、あの暗号はな……」
暗号は、優作さんが優作さんの友人に頼んで新ちゃんを家から出すために一芝居打って渡したものだという推理を披露してもらった。この事実に気付くのはまさか二度目の小学生をするときになるとは夢にも思わないだろうなあ。
「なるほどねえ。あ、そういえばちょっと遅くなっちゃったけど誕生日おめでとう。学校終わったら俺が作ったケーキ持っていくね……あ」
「マジか!くう、今から放課後が楽しみだぜ!!ってどうした?」
「いつもと同じ癖で蘭ちゃんとこに来ちゃった」
「ん?ああ、いいじゃねえか。蘭と一緒に行っても」
「お?おお?新ちゃんどーしたのかなー?蘭って呼んでるぞーー?」
「う、うっせーな。いいじゃねえか別に!ってか、蘭に余計なこと吹き込んだの龍斗だろ!?」
「余計なことって何のことかなー?」
「蘭の両親が名前で呼び合ってるから名前で呼ぶのはガキじゃないってやつだよ」
「ああ、あれね」
「あれってあのふたりはふ、ふ、ふうh……」
「おはよー!!新一、龍斗君!!」
顔を真っ赤にして何かを言おうとした新ちゃんのセリフを遮るように蘭ちゃんが来た……ふっふっふ。やっぱり新ちゃんは気付いたか。夫婦で名前を呼び合うのは自然なことだって。これはちょっとした俺の悪戯だよ。
「あれー、新一顔赤いよ?」
「バーロー、なんでもねーよ!ほ、ほら学校に遅れちまうぞ!!」
「あ、待ってよー」
顔を赤くした新ちゃんが走って学校に向かい、それを追いかける蘭ちゃん。よかったね、蘭ちゃん。
「蘭ちゃん、蘭ちゃん!今度は図書室の天井から変な棒が生えてきたって!なんか先生たちが頑張って抜こうとしてるんだけど天井裏が丁度コンクリートで全然抜けないんだって!」
……あ、忘れてた。
結局、あのナイフは天井から抜けずに放置されることとなった。
後書き
初代怪盗キッドのキャラ付けは独自設定です。
この話から主人公の一人称が僕から俺に変わります。
新一と蘭の話って全然ないんですよね。同じく大阪カップルの子供の話も。
アニメとかで回想で出てくるのを集めようにも膨大ですし。
今分かってるのが少ないので小学生編はあと2、3話で終わります。多分。
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