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名探偵と料理人

作者:げんじー
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幼少期~少年期
  第三話 -サクラ組の思い出-

 
前書き
このお話は原作87巻FILE6~9が元になっています。 

 
あの決意から早一年、俺は四歳になった。あれから日本各地でのパーティに呼ばれる両親についていき、こっそり料理やお菓子を作らせてもらっていた。そこで原作キャラの何人かと出会ったりした。中でも一番驚いたのは、夏休み期間に当たる7-8月に帰省した際にあった父さんの幼馴染たちだった。なんとあの未来の大阪府警本部長服部平蔵と、同じく未来の大阪府警刑事部部長遠山銀司郎だったのだ。ということで、まあ服部平次と遠山和葉に邂逅したというわけで。平ちゃん(呼び捨ては嫌と言ったらこう呼べと言われた)と和葉ちゃんとは夏休み中ずっと一緒にいたのでかなり仲良くなった。八月末に帰るときには二人とも泣きながらまた会おうといってくれた。東京に帰ってきてからしばらくは関西弁が移ってしまっていて笑われてしまった。

そうそう、保育園では新しいクラスになった。クラスはサクラ組であの幼女二人組とまたまた同じところだった。一年間彼女たちと過ごしてみたが園子ちゃんはもう原作の高校生のときのようにお転婆娘でよく男の子と喧嘩しては泣かしていた。蘭ちゃんは優しい性格で若干泣き虫。そんな俺は、まあ子供たちの相手は苦ではなくトリコ世界ではよく孤児院に出入りしていた経験から喧嘩の仲裁、おままごと、アクションムービーの真似事(危ないと怒られた)、仲間外れが出ないように立ち回る、なんてことをしていたら通信簿に「たつとくんはみんなのことをよく見ているお兄さんのようです。お兄さんと言うよりもう一人先生がいるようでチューリップ組で一年問題がなかったのは彼のおかげです」なんて書かれていて両親には苦笑された。
「今日から新しいクラスだけど新しいお友達と仲良くするのよ?たっくんのことだから心配はしてないけど」
「うん、でも蘭ちゃんと園子ちゃんも一緒だし大丈夫だよ」
「そうね、あの子たちも一緒だもんね。何か困ったことがあったら守ってあげるのよ?男の子なんだから」
「もちろんだよー」

保育園へ行く途中、母さんと手をつなぎながら今日から始まる保育園についての話をした。心配ないと言われるのは嬉しいが、結局どうしても保護者というか父兄目線で接してしまうのはどうしようもないな。ごめん、母さん子供らしくない子供で。

「おはようございます!今日からサクラ組の先生になった、江舟論介です。皆さん仲良くしてね!」
「「「「「「「はーい!えふねせんせー!!」」」」」」」

無事保育園についた俺は母さんと別れて自分のクラスに行き、朝のあいさつの時間まで前のクラスで一緒になった子たちと遊んで時間をつぶしていた。そして時間になりサクラ組担当となった江舟先生が挨拶をとなった。彼はいつも笑顔で子供たちにも大人気の先生だ。だけど最近思いつめているというか、何かに葛藤している様子が見えるけどどうしたんだろうな。

「それじゃあ、みんなレクレーション室に行こうか。他のクラスの子もいるけどみんな仲良く遊ぶんだよ」

おっと、いつの間にやら朝のあいさつの時間が終わってレクレーション室に移動になったようだ。っと、その前に

「先生」
「どうしたんだい、龍斗君?」
「ちょっとトイレに行ってきていい?」
「ああ、いいよ。僕はみんなをレクレーション室に連れて行かないといけないからついて行ってあげられないけど他の先生を……と思ったけど、龍斗君なら大丈夫かな?」
「ははは……はい、大丈夫です。一人で行けます」

どうやら、江舟先生にもしっかり俺の評価は伝わっているようだ。さてと、トイレをさっさと済ませてレクレーション室に行くとしますか。みんな仲良く遊んでるといいんだけど…

「ほら、二人とも握手して!はい、これで仲直り!」

おいおい、俺がトイレに行って帰ってくるまでそんな時間かかってないのになんで喧嘩してるんだい園子ちゃん?しかも泣いているのは男の子だし。

「なにがあったの?」
「あ、たつとくん。あのね、らんちゃんのバッジがちがうっておとこのこたちがとりあげたからそれをとりかえしたの!でも、びりびりになっちゃって」
「うん、でもおかあさんがつくってたところみてたからだいじょうぶだよ!」

あー、これは男の子たちが悪いな。でもしっかり怒られてみたいだし俺が更に何か言わなくてもいいか。それにしても蘭ちゃん強がって泣かないようにしているのが丸わかりだな。でも何でもかんでも世話を焼くのも良くないし……ダメそうなら後でフォローするとして様子見かな。

「そっか。じゃあピンクの画用紙とペンとはさみ持ってくるね」
「ありがとう、たつとくん。でもいまはいっしょにあそぼ?」

そういって、俺をおもちゃのある方へ引っ張っていく蘭ちゃん。まったく、子供なのに気使い過ぎだって。

「まってよーらんちゃん、たつとくーん」


お昼食べ、お昼寝の時間になった。トイレに近い方から蘭ちゃん、園子ちゃん、俺の順に並んで横になった。蘭ちゃんが寝る前にバッジを作る材料をとってきたみたいだから寝る時間を削って作るみたいだな。……まったく優しい子だよホントに。

「ぐす、ぐすっ。もう少し、もう少しで……」

鼻をすする音に涙が落ちる音。これは起きてフォロー入れるかな。流石に子供が泣いているのは耐えられん。
そう思い、起き上がろうとしたとき、

「オレにもつくってくれよ。それ、サクラだろ?」

蘭ちゃんの枕元に小生意気そうな見慣れない子供がいた。……いや、確かにこの保育園では見たことがない子だ。なるほど、今日だったのか。

「だからわかったんだよ、オメーがサクラのバッジなくしてビービー泣きながらサクラを作ってる泣き虫だってな」
「「「「「「「ワ――ッ!!!!!」」」」」

彼がなぜサクラがわかったかを解説し、それを聞いていたまだ眠ってなかった子供たちが歓声を上げた。

「あー、新ちゃんこんなとこにいた!」

蘭ちゃんや園子ちゃんと話していたその子を新ちゃんと呼ぶ帽子にサングラスの女性が部屋に入ってきた。あの人は……

「新ちゃん、ネームプレートどうしたのよ、せっかくサイン会場まで取りに行ったのに」
「どっかになくした」
「うそでしょーー!?もう」
「だからこの子にサクラのバッジを作ってもらおうと思ったんだよ」
「この子?あら。もしかして英理ちゃんとこの蘭ちゃん?同じ保育園だったのね!!」

どうやら、サクラのバッジの補充は江舟先生によると来週になるようだ。しかし、なくしたねえ……

「サクラがほしいならつくったこれあげるよ。おなまえは?」
「く、くどうしんいち!サクラぐみだ!!」
「はいできたよ。」
「あ、ありがとな。」
「でもこれあげるからやくそくしてよしんいちくん……わたし、なきむしじゃないもん。なきむしじゃないからもうなきむしだなんてよばないで!!!」

これが俺が単独での、原作の主人公工藤新一との初邂逅となるのだった。

「え、ゆきちゃんが保育園にきたの!!?」
「うん、それに新一って子が保育園に新しくきたよ」
「なるほど、新一君の入園手続きできてたんだね。葵、なにか包んで挨拶に行こうか。どうせすぐ真ん前だし」
「そうね、。でもゆきちゃんもこっちに帰ってきてたなら教えてくれてもいいのに」
「もしかしたらびっくりさせようとしていたのかもね。ならこっちから行って逆にびっくりさせようか」

夕方になり帰宅してから今日あったことを母さんに話すと工藤邸に挨拶に行くことになった。あの後、入園手続きは無事終えられたようで工藤親子は3時前には保育園を後にしていたので出かけたりしてないならあの豪邸にいるはずだ。
結局、昨日作った母さんお手製シフォンケーキと俺作のミックスナッツのパイを包んで挨拶に行くことになった。それで夕飯の予定がないようならうちで食べようと誘うつもりらしい。
鉄門を開き、玄関でチャイムを鳴らすと、中から女性の声が聞こえた。

「はーい」
「こんばんは、ゆきちゃん!帰ってきてたなら連絡してよーもう!」
「え!?葵ちゃん!?なんで!!?ビックリさせようと思って誰にも言ってなかったのに!!」
「やっぱりそうだったんですね」
「あ、こんばんは龍麻さん。それに後ろの子は龍斗君!大きくなったわねえ」
「その龍斗のおかげよ。今日ゆきちゃんが帰ってきてるって分かったのは」
「今日、保育園に行きましたよね?実は毛利さんのところの蘭ちゃんだけでなくうちの龍斗も同じ保育園なんですよ」
「え、そうだったんですか。ごめんね、龍斗君、全然気づかなかなくて」
「ううん、だいじょーぶだよ。こんばんは、ゆきおねーちゃん」
「それでなんですがね、もしよろしければ再会を祝して夕飯に招待したいと思いまして。ご予定のほどは大丈夫でしょうか?」
「まあ!!ええ、優作も帰ってきてますし今から夕飯を作ろうかと思ってたところなので」
「母さん、誰だよその人たち」

夕飯の誘いをしてると、廊下の奥から歩いてきた男の子がそういった。

「あ、新ちゃん。この人たちはママのお友達の人たちでお夕飯のお誘いに来てくれたのよ。二人の料理、とっっっても美味しいんだから!今から行くからパパを呼んできて貰える?」
「ああ、わかったよ」

そういうと、新一君はまた奥の方に引っこんでいった。

「それじゃあ、優作さんが来たら移動しましょうか」


その後、合流した優作さんと新一君に自己紹介をして(保育園での口調について上から目線だと友達が出来ないぞと一応注意したら「ホームズの言ってることだから良いんだよ!」とよく分からない返事をもらった。)、そのまま家に移動し、食事となった。

「まさか、『料理の神夫婦』の料理を頂けるとは、夢にも思いませんでしたよ」
「本当。この後は葵ちゃんのデザートも待ってるし、うーんたのしみ~。どう?新ちゃん、龍麻さんのお料理は?」
「すっごく、うめえ……」
「もう、うめえじゃなくて美味しい、でしょ。龍斗君は毎日食べれてうらやましいくらいね。お父さんの料理は好き?」
「うん大好き!でも一緒にお料理作るのもすきー。」
「え、もう料理を手伝ってるの!?だってまだ新ちゃんと同じ四歳でしょ!?」
「ええ、この子私たちに似たのか、すっごくセンスがいいのよ。今日はないけれど絶対今度食べてみて。びっくりするわよ」
「そうか、じゃあ未来の料理人さんというわけだ。私がもっと有名になってパーティでも開いたら料理をお願いしてもいいかい?」
「もちろん!!美味しい料理をいっぱい作るね!!」

工藤と親交を深めながらまったりと時間は過ぎ、デザートが出た後は大人は大人同士子供は子供同士で分けられた。おかげで新一君とゆっくり話す機会が持てた。
今日のことを話していると、江舟先生が変だ、悪いやつだと言っていたので理由を聞いてみると蘭ちゃんをすっごい怖い顔で見ていたというのだ。俺にも気をつけてくれといっていたが……うーん、一応気をつけておくか。未来の名探偵の言うことだしね。

「じゃあな、龍斗。お休み、また明日な!」
「お休み新一君、また明日ね」

食事会もお開きとなり、工藤一家を外までお見送りした後俺は風呂に入りそのまま床についた。


数日後、俺は新一君に連れられて工藤邸の書斎にいた。すげえ、原作では何度も出てきて目にしていたけど実際に入ってみると圧巻だわ。ここほんとに日本か?てか図書館?これ全部推理小説かよ。
なんてことを考えていると、最近の不審な点を列挙し終わり、「あいつには負けない!」宣言をして新一君は出て行った……おいおい俺は放置か、連れてきたのは君だろうに。

「まったく。自分で連れてきたお友達置いてっちゃうなんて。あとでお説教ね。ごめんね、龍斗君」
「ううん、気にしてないよ。新一くんに言われて先生をこのところ見てたけど江舟先生確かにちょっと変だったよ。蘭ちゃんばっかりかまうから他の子からやっかみが多くなったりしてるし。前の江舟先生はそんなことしてなかったのに。それに……」
「それに、なんだい?気になっていることでもあるのかい?」
「うん、なんか蘭ちゃんの飲むお昼のお茶、他の子たちのと違って変なにおいがする。あれは美味しくないものだと思う」
「美味しくない?」
「あれは入れちゃいけないものが入っている……と思う。多分。席が離れてるから確かとはいえないけど」

そう、生前トリコ世界で鍛えた感覚がほんの少しだけだが戻った。それで注意深く観察するとお昼に江舟先生が渡す蘭ちゃんのお茶にだけ違和感があった。もう少し戻っていたら何が入っていたかまで分かるんだが。今はこれが限界だ。しかし、江舟先生が何かたくらんでいるのは間違いなさそうだ。

「すごいな、龍斗君は。小さくても立派な料理人と言うことか。分かった。今日はありがとう。これからも新一と仲良くしてあげてくれ」
「うん。あ、それとぼくが作ったマカロン持って来たんだ。後で食べて」
「あら、葵ちゃんが言ってたのはほんとの事だったのね。全部一人で?」
「うん。じゃあおやすみなさい!お邪魔しました」

本当に驚いた様子の優作さんがそういい、俺も教えたいことと渡したかった土産も渡せたので挨拶を済ませて自宅に戻った。









「有希子、龍斗君は本当にすごいよ。彼の嗅覚は人の範疇を超えている。」
「どういうこと優作?」
「新一の話から、先生が蘭ちゃんに何らかの薬物、おそらくは睡眠薬を飲ませているのはまず間違いない」
「ええ、それって大変なことじゃない!!?」
「ああ、だから明日一日様子を見てくるさ。そして、彼のことだ。彼はお茶に入れられた睡眠薬のにおいに気づいたんだ。子供の味覚は大人の3倍。他の感覚も敏感だからおそらく使われた薬物は無味無臭。しかも子供だから大人に使う量よりもずっと少ない。それなのに気づいた。しかも席が離れていたからといっていたからコップを持ってかいだわけではなさそうだ。彼の嗅覚は警察犬並みだよ」

優作はそう言い、龍斗が出て行った扉を見つめ彼が置いていったマカロンに口をつけた。

「!!?これは……有希子、これを食べてごらん」
「龍斗君が作ったマカロン?……なにこれ!!?葵ちゃんが作ったお菓子みたいに美味しいじゃない!!?これ、あの子が一人で作ったって言ってたわよね?」
「ああ、あの歳でこれだ。このまま成長したらどんな傑物になるか。新一もすごい友達ができたもんだ」

彼にどんな影響を受けてどんな成長をするのか、わが息子ながら将来が楽しみだよと優作はつぶやくと静かに笑った。










工藤邸に行って三日後。いつものように保育園に行った。今日はあいにくの空模様で外で遊べず室内で遊ぶこと中心になりそうだ。今日の江舟先生は……ああ、これはやばいな。あれは確実に何かやらかす顔だ。そう思い、今日は朝から警戒することにした。
「どうしたの、新一君」
「龍斗……新一で良いってのに。まあいいや。お前も一緒に見張ってくれ。あいつぜってー悪いことするから、蘭をまもらねえと」

お昼寝の時間になって少ししてからトイレの前に仁王立ちしている新一君に聞いてみるとどうやら優作さんの指示らしい。なるほど、彼が四歳児を危ない目にあわせるとは思えないから裏で解決するつもりっぽいな。ま、付き合ってあげよう。

「わかった。何かあったら僕も(二人を)守るよ」


結局、何かが起こるわけでもなくその日は終わり数日後江舟先生は保育園を去って行った。
……新一君、女の子に泣きたいときはないていいなんてセリフ、四歳児がかます言葉じゃないぞ。君の将来が心配です。 
 

 
後書き
ここから、原作にあったお話を参考に書いていきたいと思います。

前書きに該当箇所を記載するのでよろしかったら参考にしてください。 
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