レーヴァティン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十一話 大江山その五
「だからだ」
「それで、でござるな」
「そうだ」
「柿は渋くて済むが」
「人は違う」
「覚えておかないとな」
そこは絶対にと言う英雄だった。
「今思った」
「わかったでござる、では賊共は」
「腐った奴しかいない」
彼等の気を感じ取りつつだ、英雄は智に今度はこう答えた。
「まさにな」
「そうでござるな」
「一人残らず切り捨ててだ」
「魂もでござるな」
「消し去る」
全員のそれをというのだ。
「むしろ魂ごと切り捨てる」
「そうしてでござるな」
「終わらせる、この天の羽々斬はどうやらな」
己の刀を見つつ言うのだった。
「人の身体だけでなくだ」
「魂までも切れる」
「それが出来る様だからな」
それでというのだ。
「魂もだ」
「切ってでござるな」
「そこで終わらせる」
「生きるべきでない輩は生きていてはならない」
良太が言ってきた。
「そういうことですね」
「俺はそうした考えだ、外道はだ」
英雄はその良太にも答えた、ヘタのところが渋かった柿は既に食い終え種は足元に吐き捨てている。そうしつつ新たな柿を食べはじめている。
「生きていても害であるだけだ」
「世にも人にも」
「だから消す、更生出来る奴ならまだいいが」
「それも無理な位になりますと」
「いてはならない」
この世にはというのだ。
「殺してしまうべきだ」
「本来は法によって為すものですが」
こう言ってきたのは謙二だった。
「しかしですね」
「今の様な状況だとな」
「法で取り締まれるなら締まっていますね」
「とうの昔にな」
「数百人もの賊になりますと」
少しした軍勢だ、生半可なものでは対応出来ないのだ。
「都には検非違使もいますが」
「検非違使でどうにも出来ないからな」
「今があるからですね」
「俺達が行っている」
法で動く検非違使達ではなくだ。
「そして成敗する」
「その魂までも」
「そしてこれ以上世に害は及ぼさせない」
「地獄に送りますか」
「その魂をな、そういえばこの世界も地獄があるのか」
英雄は謙二の今の言葉からそのことについて考えた、この世界の宗教のことそして死後の世界のことを。
「そうなのか」
「あります、ただ」
「それでもか」
「はい、それぞれが信じる宗教によります」
その死後の世界はというのだ。
「例えば仏教では輪廻転生があります」
「天寿を全うするか魂を消されると次の世界に転生するか」
「そうなります、そして悪行があまりにも多いとです」
「地獄に落ちるか」
「そうなります」
そうなるというのだ、この世界での仏教徒は。
「そしてキリスト教徒ならです」
「最後の審判の時にか」
「天国か地獄に分けられます」
キリスト教の死後の世界、彼等本来の世界とこのことは同じだった。
ページ上へ戻る