レーヴァティン
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第四十一話 大江山その二
「それで油断すれば命を失うのも事実だ」
「それでもでござるな」
「賊は所詮人だ」
それに杉宇内というのだ。
「それも相当に質の悪いな」
「数だけの」
「さっきも言ったが烏合の衆だ」
それに過ぎないというのだ。
「危険も巨人の比ではない」
「巨人は言うならば自然災害」
良太が巨人についてこう言った。
「それと比べれば」
「数百人の賊はな」
「微々たるものですね」
「自然の災害の力は山すらも崩す」
そこまでの力があるとだ、英雄は厳しい顔で言った。
「町も村も押し流す」
「まさに全てを」
「賊共にそんなことは出来ない」
到底とだ、英雄は良太にも答えた。
「そう考えるとな」
「私達はこれまで幾度か巨人達を倒してきました」
「そうだな、一人でもな」
「ならですね」
「賊なぞ何とでもなる」
例え数百人いてもというのだ。
「だから一人でも充分だ、しかもだ」
「拙僧達は四人ですね」
「一人でも充分だったが」
謙二にも言った、それは自信ではなく確信だ。この島の賊の強さの平均とその数、そして自分達それぞれの力を冷静に見極めてのことなのだ。
「それが四人だ、ならばだ」
「確実にですね」
「倒せる、それも白昼堂々と攻め込んでもだ」
それでもというのだ。
「何とでもなる」
「だからですね」
「隠れ家に着き次第だ」
「すぐにですね」
「攻める」
正面から堂々と、というのだ。
「そうして倒す、いいな」
「それでは」
「大江山に進む」
こう話してだ、四人で大江山に向かって進んでいった。その道は山道であり険しいままだったがその道をだ。
一行はそのまま進んでいった、昼の山道は何でもなかった。途中の魔物達も気にせずにであった。そのうえで。
大江山に着いた、するとだった。
ふとだ、英雄が三人に言った。
「賊共の濁った気配があるな」
「相当にですね」
「ありますね」
謙二と良太がすぐに応えた。
「そして他にも」
「一つ強い気が」
「拙者達と同じ」
智も言ってきた。
「星の如き強さでござるな」
「四人目か」
英雄は身体は身構えていなかったが心で身構えて言った。
「来ているか」
「拙者達と同じ目的でござろうか」
智は考える顔で英雄に言った。
「これは」
「そうだな、間違いなくだ」
「例え大きくとも邪な者ならば」
「気は濁っている」
「賊達と同じく」
「そうなっている」
気にそれが出るというのだ。
「自然とな、しかしだ」
「賊共の気とは全く違い」
「澄んでいる、しかも厳しい」
「これは心の鍛錬もしているものですな」
気から感じられるものはとだ、智は言った。
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