【アンコもどき小説】やる夫は叢雲と共に過剰戦力で宇宙戦艦ヤマトの旅路を支援するようです
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閑話 観戦武官 その1
観戦武官として叢雲に乗った地球側代表団だが、東雲愛歌と古代守と真田志郎と新見薫にとってその目的はあっさりと達成されたのである。
代表団を案内する三河型自動人形ははっきりと己の艦の名前を誇らしげに言ったのだから。
「ようこそ!
エクゼクター級スター・ドレットノート『叢雲』へ。
私達漂流者艦隊はあなた達を歓迎します」
と。
全てを知っている四人は与えられた個室で頭を抱える。
たしかにやる夫と叢雲のどちらかもしくは両方が生きている可能性は考えていたが、艦名になるほどこの艦隊の中枢に居るとは思わなかったのである。
向こうもこちらの素性は知っているらしく、この四人を一部屋にまとめた上で三河型侍女人形を配置して接待をしているあたり、隠す気もないらしい。
新見薫が意を決して、質問をする。
それが超弩級爆弾になる事をこの四人はまだ知らない。
「あの、東雲先輩は今、どちらにいるのでしょうか?」
「叢雲お嬢様ですか?
現在CICにてやる夫様と戦闘指揮をしておいででございます。
いずれ時間を見て、会えるように計らいますので今はご容赦を」
「……」
「……」
「……」
「……」
四人とも顔を見合わせる。
できれば聞きたくなかった単語が出できたので、いやいやながら三人を引き込んだ東雲愛歌が言葉を出す。
「CICで戦闘指揮?」
「はい。
叢雲お嬢様はこの艦全てを差配しており、司令官のやる夫様と共に長くガミラスと戦っておられました」
「……」
「……」
「……」
「……」
「えっと三河さんだっけ?」
「はい。
私は三河156号とお呼びください」
「少し俺達だけで話がしたいがいいかな?」
「かしこまりました。
部屋の外で控えておりますので、何かございましたらこのブザーにてお呼びください。
では、失礼致します」
一礼をして三河156号がドアの向こうに消えたのを確認した後で四人同時に再度頭を抱える。
爆弾だとは思っていたが、核爆弾どころか惑星破壊爆弾レベルの厄介事が出てきたのである。
古代守が東雲愛歌に嫌味を言う。
「おい。
ゴップ提督のお嬢様。
これを知っていたのか?」
「知っていたら、ここであなた達と同じように頭を抱えていないわよ!」
珍しく叫ぶゴップ提督の七光で名誉大佐として送り込まれた観戦武官東雲愛歌。実年齢2歳。
限りなく全能に近いのだが、それを使いこなすには彼女には圧倒的に時間が足りていなかった。
それ以上に、感情が追いついていなかった。
その為、理で政治家どもを翻弄した彼女に情で接した古代守と真田志郎と新見薫にイマイチ頭が上がらない。
背景も生存理由もちゃんと教えたのだが、この三人にとっては所詮『叢雲の妹』でしか無かった事が東雲愛歌の敗北である。
「むしろ、この話を俺らに開示した意味を考えてみろ」
真っ先に回復した真田志郎がその意味に気づいてまた頭を抱える。
つまり、この情報を出しても構わない何かを更に漂流者艦隊は抱えているという事だ。
「失礼します。
まもなくガミラス艦隊と交戦いたします。
モニターの方を用意いたしましたのでこちらを御覧ください」
スピーカーから女性の声が聞こえ、モニターに大艦隊が映し出される。
そこに映っていた超巨大戦艦に四人は度肝を抜かれる。
「でかいな……」
「ああ。
この船と同じぐらいか?」
「プローグ・コモナリティ旗艦級戦艦リバイアサンですね。
叢雲お嬢様と同じぐらいの大きさと聞いております。
プローグ・コモナリティでは、叢雲お嬢様の事を旗艦級戦艦として認識しているそうです」
モニターの艦艇説明に入ってきた三河156号が淡々と説明を続ける。
そして第三次オールト会戦が始まり、彼女の火力と脆さを見せつけられる事になった。
「総員!
衝撃に備えろ!!」
ガミラス戦闘機隊の猛攻に艦にミサイルが当たる瞬間、スピーカーから三人には懐かしい声が聞こえた。
そして衝撃が来るが、四人には被害らしいものは起こっていなかった。
「被害報告!」
「三河156号よりCICへ。
ゲスト四人のバイタルチェック。正常。
担当エリアの船体ダメージチェック。正常。
送ります」
四人はガミラスの脅威をはっきりと見ることができた。
そして、それをいかに漂流者艦隊が多大な犠牲で防いでいたかという事までも。
更に異星人の科学力も彼らはこの目で見たのだ。
「3000機出して帰還機が一割ちょっとしか無いだと……」
「けど航宙戦が終わらないと、艦隊決戦にすら移れないとは……」
「あの超巨大戦艦一隻でガミラスの船が百隻近く沈んだのですけど、彼らあれで中規模艦隊なの?」
古代守、真田志郎、新見薫がそれぞれモニターの中の戦闘を眺めて感想を述べているが、東雲愛歌は三河156号のある言葉に違和感を感じ続けていたのである。
で、ついでだからと聞いてみる。
これ以上の爆弾なんて出てこないだろうと思ったのだが、それ以上の爆弾が炸裂する事を東雲愛歌は知らない。
「ねぇ。
『叢雲お嬢様の事を旗艦級戦艦として認識している』って言ったけど、それは叢雲お姉さまがこの船そのものになっているという事?」
「はい。その通りですよ。
この船は叢雲お嬢様そのものなんですから」
何を言っているのだろう?こいつ?
それを言うほど東雲愛歌は子供ではなかった。
「乗員の皆様。
エクゼクター級スター・ドレットノート『叢雲』副長武蔵がお知らせいたします。
当艦は陸軍輸送船団と共に戦場を一時離脱。
離脱後に第一種戦闘態勢を解除し第二種戦闘態勢に移行します。
第二種戦闘態勢期間中はシールド回復にジェネレーター出力のほとんどを回すので、幾つかのブロックが使用不能になります。
戦闘要員は待機要員と交代し、十分に休養をとられてください。以上」
そんな艦内放送が流れたと同時に、三河156号が四人に向かって告げる。
「失礼します。
当艦が戦場を離脱し第二種戦闘態勢に移行した時にお時間が取れるかもしれません。
その時にお会い出来ないかと司令官が申しておりますが?」
軍組織におけるお願いは命令に等しい。
名目上国家と等しい待遇を得ているこの漂流者艦隊の司令官ともなると実質上の国家元首と同じ扱いとなる。
そんな司令官になっているやる夫からの会談の誘いに四人は断る訳がなかった。
会談そのものは、『叢雲』艦内のプライベートエリアにて行われた。
艦の中核に位置しCICの真下にあるこのエリアは、野球場ほどの広さが用意されたやる夫と叢雲の愛の巣でもあった。
それゆえ、立ち入りは厳重に制限されている最重要区画に四人はあっさりと通される。
「久しぶりだな。
こんな形では会いたくは無かったが」
庭園風の広間で金色の肩章がついた純白の軍服を来た入即出やる夫と、その制服を肩に羽織った上で扇情的なドレスをまとった東雲叢雲が出迎える。
やる夫の方はスターウォーズの大提督の制服だが、叢雲の方はなまじ体が超弩級戦艦サイズに進化した為に授乳スリットが実にエロい事になり、慌てて何かを探した結果である。
で、メイドたちのボスだからとメイド王じゃなかったメイドオルタ第四形態をチョイスするあたり、彼女のセンスはどこかすれている。
二人の後ろで控えているのは三人も知っている鹿角さんで、部屋の隅に赤い鎧を纏った三河型アーマーメイドが六人、儀仗兵兼護衛兵として控えている。
どう考えてもロイヤルガード何だが、その姿は赤色王旗にしか見えない。
「ああ。そうだな。
やる夫」
かつての酒場での約束ではないが古代守がやる夫を殴ろうと殺気を出した瞬間に、アーマーメイド達が古代守と入即出やる夫の間に割って入る。
そこから古代守が拘束等をされなかったのは、殴ろうとした入即出やる夫の声のせいだった。
「やめろ!
彼は俺を殴る権利がある」
「どうして……どうして一言言ってくれなかった……やる夫……」
殴ろうとした手を止めて、古代守の顔から涙が溢れる。
その彼の怒りがまっとうだからこそ、やる夫は人の欲望のドス黒さを告げざるを得ない。
「言って戻ったらどうなると思う?
この船を巡って世界大戦が起こっていただろうよ。
俺達の事故の一件は知っているのだろう?」
ただ嗚咽する古代守の肩を真田志郎が叩く。
その横を東雲愛歌が駆けてゆき、叢雲に妹として挨拶をする。
「はじめまして。お姉さま。
私は東雲愛歌。
ムラクモ・ミレニアムのウェンズデイ機関最後の娘で、今は地球のゴップ統合国連軍統合参謀本部議長の娘をやっているわ。
よろしくね」
「叢雲よ。
ま。せいぜい頑張りなさい」
「そういう事をいいながら、最初の挨拶に30時間ばかり悩んでおられたのは……」
「鹿角うるさい!」
「ああ。
本当に東雲先輩なんですね」
男たちは男たちで熱く、女たちは女たちで姦しく。
そんな感じで旧友との再開ははじまった。
後書き
元ネタ
大提督
スターウォーズだと皇帝死後に帝国残党をまとめたトップエリート。
問題は、皇帝独裁のために微妙に地位と役割が違い、大総督や大将軍なんてのもあって帝国残党の分裂に拍車をかけたとかなんとか。
というか、帝国実質No2のターキン大総督が悪い。
軽く調べたら、大総督って大提督や大将軍より一歩地位が劣るんだよ……
アーマーメイド 赤色王旗
元ネタは『花右京メイド隊』。
グーグル先生では元絵が出てこずに『千年戦争アイギス』の方が出てくる。
なお、やっている事はスター・ウォーズの皇帝のロイヤルガートである。
メイド王じゃなかったメイドオルタ
元ネタは『FGO』。
アイスは買ってこない。
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