猫の手を借りると
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第三章
「私のところに来て」
「そっちでもか」
「今丁度やってきたわ」
右の前足を出してだ、キッチンを拭く美幸のその手の作業を邪魔しだした。
「それも二度三度と」
「そっちでもか」
「邪魔よ」
美幸はミミに怒った顔で言った。
「本当にね」
「どけるか?」
「そうするわ」
作業を一時止めて両手でミミを捕まえた、するとミミはむっとした芽になって美幸を睨んで自分を掴む両手を噛んできた。
だが美幸はそれに構わずミミをキッチンの下に置いた、だがそれでもだった。
ミミは今度は美幸の足元で悪戯をしだして彼女のズボンの裾に前足をやってきた。それで美幸は再びだった。
ミミを怒ろうとしたがミミはそれより素早く駆けて逃げてだった、美幸の前から完全に消えてしまった。
だが美幸は安心せずにだ、窓のところで拭き続けている大輔に言った。
「ミミ何処かに行ったわよ」
「そうか?」
「ええ、何処に行ったのかしら」
「また自分の好き勝手なところに行ったんだろう」
その行きたいところにというのだ。
「そしてな」
「またなのね」
「悪さするさ」
そう言った途端二階で掃除をしている子供達が叫んだ、大輔はその声を聞いてそのうえで美幸に言った。
「ほらな」
「今度は二階に行ったのね」
「そしてな」
「そこで子供達になのね」
「ちょっかいをかけてるんだよ」
「やれわれね」
美幸はミミがいた場所をあらためて拭きつつ零した。
「ミミは」
「起きたらこうだからな」
「もうこうなったらね」
「どうするんだ?」
「おトイレ掃除したから」
この場所の掃除は終わったからというのだ。
「だからね」
「トイレの中に入れるか」
「お掃除が全部終わるまでね」
「じゃあ夕方までか」
「そうね」
その頃には掃除も他のことも全部終わると見ての考えだ。
「その時までね」
「トイレに入れておくか」
「一階のおトイレはミミのおトイレもあるし」
猫用のそれがだ。
「もうそこにね」
「放り込むか」
「あそこならね」
トイレならというのだ。
「ミミもおトイレ出来るし」
「そっちの心配もいらないな」
「それに寝てるだろうし」
トイレにいるうちにというのだ。
「便座さえ閉じていればね」
「トイレに落ちることもないしな」
「いいでしょ」
こう夫に言うのだった。
「そうでしょ」
「ああ、子供達にはミミがそこにいるって言ってな」
「お掃除が終わるまで二階のおトイレを使ってもらって」
勿論このことは美幸も大助も同じだ。
「そうしてね」
「家事が終わるまでか」
「大人しくしてもらいましょう」
「正確に言えば隔離だな」
「それまではね」
こう言って実際にだった、美幸はミミを捕まえるとトイレに放り込んだ、便座はもう閉じられていたのでそこをどうする必要はなかった。
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