ロマンティックな夜に
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第一章
ロマンティックな夜
暑い、うだる様な日だった。
まだ五月の終わりなのに夏並に暑い。それで私はオフィスで苦い顔になって同僚の皆に言った。
「何か今日はね」
「暑くてっていうのね」
「辛いっていうのね」
「ええ、五月よ」
それでもだ、私は実際に皆に話した。話す間も額に汗が滲む。
「それでもこの暑さはね」
「そうね、急に暑くなるから」
「この前まで涼しかったのに」
「今年は春寒かったのに」
「この暑さだからね」
「春の時はこう思ったわ」
私は額の汗をハンカチで拭きながら皆に話した。
「地球本当は寒冷化してないかって」
「実際そうした話あるしね」
「本当はそうじゃないかって」
「何か太陽黒点があったとかなかったとか」
「その関係でね」
「それがこれよ」
今は暑い、とにかくだ。
「それで温暖化しているんじゃないかって思うけれど」
「夏はいつもそう言うわね」
「テレビじゃいつも言うし」
「夏になるとね」
「温暖化がどうとか」
「そうよね、今は私もそう思うわ」
温暖化しているんじゃないかとだ、暑くなるとそう思う。
「実際はって。ただね」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「今夜デートなのに」
言うまでもなく彼氏とだ。
「それでこの暑さはね」
「夏よね」
「そんな感じよね」
「こんなに暑いとね」
「嫌になるわね」
「全くよ、これはね」
私は次第に暑さに辟易しつつまた言った。
「嫌になるわ」
「まあそれでも楽しんできてね」
「今夜のデートね」
「そうしてきてね」
「そのつもりよ、まあ暑くても」
不穏当にそれでもだ。
「デートは楽しむわ、暫く振りだしね」
「最近うち忙しいしね」
「何かとね」
「お仕事が入って」
「そのせいでね」
「残業手当はちゃんと出て勤務時間も気を使ってくれてるけれど」
だからブラックじゃない、幸いに。けれど忙しいことは確かでだ。
「お互いそうで暫く夜もね」
「デート出来なくて」
「それが嫌だったわよね」
「家帰っても簡単な料理で」
「子供のこともなおざりになりそうで」
子供がいる娘もいるけれどそうした娘は余計に大変だった。
「ちょっとね」
「最近の忙しさはね」
「結構参ったわ」
「本当にね、けれどね」
それでもだった、今夜は。
「デート楽しんでくるわね」
「暑くてもね」
「それでも」
「ええ、せめてもう少し涼しかったら」
それが私の今の願いだった。
「そう思うけれど」
「ええ、楽しんできてね」
「暑くてもね」
「そうしてくるわね」
私は皆に笑って応えた、そしてだった。
私は彼氏との夜のデートを楽しみにしながら昼の仕事を頑張った、確かに暑いけれどそれに我慢しながら。
そして仕事が終わるとすぐにだった。
私は着替えて職場を後にした、それからデートの待ち合わせ場所に向かった。かなり急いで。
そこに来るとだ、彼が待っていた。夕暮れのその待ち合わせ場所で。
そこでだ、私に笑顔で言ってきた。
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