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儚き想い、されど永遠の想い

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213部分:第十六話 不穏なことその五


第十六話 不穏なことその五

 義正は今着替えている。妻がそれを手伝っている。箪笥の前でだ。二人は夫婦として話しているのだ。
「それで今日は」
「クッキーをですね」
「それを召し上がられますか?」
「そうですね。ではそのクッキーを」
 笑顔でだ。義正は答えた。
「御願いします」
「はい、それでは」
「クッキーと。飲み物は」
「それは何にされますか?」
「紅茶がいいですね」
 微笑んでだ。それだというのだ。
「それにしたいのですが」
「わかりました。紅茶ですね」
「はい、それを」
 また答える義正だった。そう言った時にだ。
 着替え終えていた。スーツとネクタイから身軽な普段着になっている。その服で二人の部屋から出てだ。そのうえで真理に話すのだった。
「二人で楽しみましょう」
「それでは」
 こうした話をしてだった。二人は。
 ベランダに出てそこで白いテーブルに座ってだ。紅茶とクッキーを口にしはじめる。時間はもう夕刻の遅くになろうとしている。
 赤くなっている日を見ながらだ。義正は真理に言った。
「夕陽は」
「はい、夕陽は」
「やはり。海のものが一番いいですね」
 微笑んでだ。海まで赤くしている夕陽を見ての言葉だ。
「何もかもを赤くさせて」
「あの青い海を」
「はい、赤い海もいいものですね」
「そこに銀の波もあり」 
 海にはそれもあった。その銀の輝きが赤くなっている海をさらに際立たせている。その銀色も見てだ。二人は話をしていくのであった。
「その二つが合わさって」
「奇麗になっていますね」
「そうですね。空も」
 真理は空を見た。そこも赤くなっている。
「終わりに近付いていますね」
「本来は青いものが赤くなっている」
「不思議ですね。終わりに近付くと」
「ええ。特に」
 今度はこんなことを言う義正だった。
「道ですが」
「道とは」
「アスファルトの道です」
 この時代になり舗装されてきているだ。その道はどうかというと。
 赤ではなかった。かといって青でもない。その色は。
「より不思議な色になっていますね」
「紫ですか」
「これまでの青と。今出ている赤が合わさり」
 そうなっていた。アスファルトの道は紫だった。
 その紫の道も見てだ。義正は真理に話すのだった。
「不思議な色になっていますね」
「紫の道とは」
「本来は有り得ないものです」
「しかしこの時間だけは」
「はい、あります」
 こうだ。真理にあると話すのだ。
「この時間だけの紫の場所です」
「この時間だけしかないのですね」
「そうです。それを考えると」
「余計に奇麗ですね」
 真理も自然と笑顔になってだ。それで義正に応える。
「何か別の世界を見ているようです」
「これまでの青い世界が赤い世界になり」
「そしてその中間にある場所が」
「紫になるのです。ほんの一瞬ですが」
「一瞬の。それだけの」
「特別な色です」
 それが今二人が見ている道路だというのだ。
「この紫はです」
「それに。アスファルトですね」
 真理はその紫になっている場所が何なのかも話した。
 
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