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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第七十話 パイロットがいっぱい


第七十話 パイロットがいっぱい

帝国暦480年1月

ローエングラム警備艦隊が帰還兵を受け入れる1月25日の18日前の1月7日ローエングラム警備艦隊司令部に一通の軍務尚書の命令書が電送されてきた。

【ローエングラム警備隊及び帰還兵の中より飛行長の出来る。
ワルキューレパイロットを推薦せよ】

此が送られて来たとき、リンデマン准将はどうするかと考えた。
帰還兵には知らせないで良いのではないか?
彼奴等は俘虜になるような軟弱者だ。

そう思い副官に艦隊の飛行長の一人を適当に出せば良いと指示を出したところ。
司令官室の扉が勢いよく蹴り開かれた。
何処の無礼者が来たかと思わず、ブラスターに手を伸ばすリンデマン准将だが。

入ってきた人物は、屈強な下士官を従えた少将だった。
「軍務省人事局人事部長補佐バウマン少将だ」そう名乗った後。
火薬式拳銃を右手に持って、バウマン少将は隻眼の厳つい顔で睨みながら。

「リンデマン准将。エーレンベルグ元帥が出した命令は警備隊と帰還兵全員に知らせろと有るが、
其れを無視する気かね?」

すっかり呑まれる。リンデンマン准将。
「いえ・・・・」
「なら宜しい。命令書どうりに発表しなさい」
「はっ」

びびりまくる准将である。
「あと選考は俺が仕切るから良いな」
「はっ」

その後全兵士に布告するまで、バウマン少将は執務机に腰を掛けて火薬式拳銃を磨き続けたのである。
そしてバウマン少将が帰った後には、壊れた扉と放心するリンデンマン准将の姿が見られたのである。

「バウマン閣下。あれはやり過ぎですよ」
「あれぐらいせねば、ああ言う奴は直らんよ」
「准将は閣下のことを見て、完全にびびってましたぜ」

「クルマン曹長、シュミット曹長。
卿等も悪人過ぎだ、何処のギャングかと思ったぞ」
「閣下ほどでは有りませんよ」
「閣下此は1本取られましたね」

大笑いする少将と部下達。
「ハハハ参ったな。よし今日は俺の奢りだタップリ呑もう」
「「はっ閣下ゴチになります!」」 

まあ此でグリンメルスハウゼン爺さんの頼みはOKだろうな。
態々巡航艦をかっ飛ばして来たんだからな、帰ったらオーバーホールしないと駄目だな。
バウマン少将はそう考えながら部下達を連れてローエングラム市の繁華街へ消えていった。

翌日1月8日二日酔いでフラフラの部下を連れて、
帰還兵パイロットが駐屯軍戦術訓練センターへ向かうのを確認してから、
自分もセンターの大会議室で睨みを利かせて待っていた。

駐屯軍戦術訓練センターでは多くの帰還兵パイロットが集まってきていた。
本来の集結日は1月25日だが、布告を聞いて集まってきたのである。
大会議室へ数千人のパイロットが集まってきていた。

バウマン少将が集まったパイロットの大尉、少佐を残して帰すと言うと、
大ブーイングが起きたが、睨み付ける眼光と、
少将にしては珍しい丁寧な説明でその他の者は、
25日に再度来る様にと解散する事になり結局は宥めて帰宅させた。

指揮官としての大尉、少佐クラスが残され。
其処で詳しい募集要項が発表された。
【ローエングラム警備艦隊旗艦の飛行長になれる士官と各航空隊長を特に旗艦の飛行長は早急に欲しい】

残った士官は250名を越え、しかも御召艦に成る艦であると言えば、
皇帝陛下と皇女殿下に並々ならぬ御恩がある彼等にしてみれば、
小官こそが、俺こそが、私こそがと我先に手を挙げはじめて収拾が付かなくなっていた。

其処へ、少将が天井へ向けて拳銃を数発発射して騒ぎが一瞬で収まった。
「やい!てめーら。仲間同士でガタガタ騒ぐんじゃねー!
パイロットなら腕で決めな腕で!」

其れを聞いた。パイロット達は飛行場へ走り出そうとするが、
今度は少将が部下から奪った火薬式短機関銃を天井に撃ちまくった。
バラバラと薬莢が散らばり、屋根の欠片が降り注ぐ。

「やい!てめーら!いきなり出て行くんじゃねー!
いきなり操縦しても駄目に決まってるだろう!
シミュレーションで決めるんだよ!」

短機関銃を肩に担ぎながら凄む隻眼の少将、見た感じはギャングのボスである。
シーンとするパイロット達。
見かねた、少将の副官が話し始める。

「バウマン少将閣下副官のネルリンガー中尉です、今回の募集は飛行長一名を大至急決めるモノです。
その為パイロットとしての腕より各種航空作戦や整備班との話し合いなどを行える人物をお願いします」
ざわつかず、お互いを見合う者達。

「またその後で80機分のパイロットや整備班はその飛行長に決めて貰います」
非常に苦労していそうで胃が悪そうな中尉である。

「お前等。と言うわけだ!頭に自信がねー奴はやめておけよ!」
少将の物言いに、中尉が頭を抱える。

文句を言いたそうな士官も居るが、少将の威圧で何も言えない。
「良いですか、順番にシミュレーションを行います。
その後ペーパーテストも行います」

「と言うわけだ、野郎共駆け足!」
少将の声に反応し走り出す士官達、
其れをニヤリと見ている少将、悪人面である。

4日間に及ぶシミュレーションやペーパーテスト。
その後の実機を使ったテストを経て、12人の飛行長候補と大隊長候補が決まった。
じたんだ踏んで悔しがった、他の連中は警備艦隊所属艦の飛行長や隊長候補として名簿に記録された。

旗艦にはワルキューレを80機を搭載するが予備パイロットを含めて120名が乗り込む為、
飛行長1名と飛行長補1名と各大隊長10名が決まったのである。
喜びを隠せない12名は、やっかみ半分の仲間達から手厚い胴上げをされて、
寒いプールに投げ込まれた。

「てめーら、俺達を殺す気か!」
投げ込まれた連中が叫んでいるが、顔は笑っていた。
其れをバウマン少将は笑って見ている。

飛行長補と大隊長は取りあえずローエングラム警備艦隊新発足の25日までは休暇であるが、
腕をならす為に休暇返上で訓練を始めるそうだ。

飛行長に決まった、ヘルマン・メルダース少佐は30歳、
士官学校卒業後にワルキューレパイロットとしてイゼルローン要塞へ配属された後、
メキメキと腕を上げ、戦艦2隻、巡航艦6隻、スパルタニアン撃墜数89機を誇ったが。

5年前当時新進気鋭のパイロット、カール・グスタフ・ケンプ少尉が無茶な行動をして撃墜されかけ、
ケンプを守ってで自機が被弾そのままケンプを逃がした後、
戦場に置き去りになり叛徒の捕虜になったのである。

撃墜王の彼は同盟で怨嗟の為に酷い尋問を受け片眼が不自由に成っている為、
最早パイロットとして再起不能として同盟側も前回の捕虜交換で釈放したのであり、
五体満足であれば釈放されなかった可能性が高かった。

しかし彼は、其れを感じさせないほどの努力でハンディを克服している。
しかも彼は元々明るく部下思いなため逆境にも耐え続けたのである。
また自分を見捨てたケンプについても何ら恨み言を言わないほどの清廉さである。

そして素晴らしい見識を持って居る為、
バウマン少将がメルダース少佐を認め、
飛行長を手に入れたのである。

彼の嬉しのあまり、ガッツポーズをして同僚から、からかわれたのである。
そして取るモノも取りあえず。
オーディンへ帰還する。バウマン少将の巡航艦アトレビドに便乗し旅立った。

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出てくる少将はどっかで知ってる様なかたです。


 
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