銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません
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第六十九話 戦艦人事協奏曲
戦艦の人事の話です。
外伝のキャラがでます。
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第六十九話 戦艦人事協奏曲
帝国暦480年4月11日
■オーディン 戦艦ラプンツェル クリストフ・ドゥンケル
小官はドゥンケルと言う船乗りだ。
士官学校卒業時は3000番台と言う決して誇れる成績では無かったが、
それ以来前戦で頑張ってきて13年、33歳まで来た叩き上げだ。
卒業以来イゼルローンに何度も配属されてきた。
一昨年少佐に昇進しイゼルローン駐留艦隊のブレーメン級軽巡航艦ケンプテンの艦長に就任し日夜努力してきた。
11月中旬駐留艦隊司令部から出頭を命じられ艦長職の交代とオーディンへの人事異動を命じられた。
普通の人事異動は10月だが何故か一ヶ月遅れでの移動である。
周りの同僚は『何かしたのか?』と聞いてくるが、
小官にも全く心当たりが無かったのであった。
異動先は軍務省の軍事参議官補佐局だったから、事務職にされるのかと思ったが。
同僚の情報通が言う事には、軍務省軍事参議官が退役寸前のロートル爺さん達の溜まり場だから、
其処のお茶くみか、お前も予備役編入じゃないかと言われたものだ。
出頭後急遽決まった後任艦長には若干25歳のレンネンカンプ少佐で彼と諸事の引き継ぎを行い、
1年ほど住み込んだ軽巡航艦ケンプテンと別れオーディン行きの艦に便乗して出立したのが11月23日の事だった。
艦は駐留艦隊でも最旧式の駆逐艦ハーメルンⅡで艦長はアデナウアー少佐と言い男爵様だが、話してみると元々商船の船長だったそうで気さくな方だった。
ハーメルンⅡは昨年から始まった宇宙艦隊の新造艦配備による旧型艦のローエングラム警備艦隊配備に伴い僚艦キッシンゲンⅢ、バンゲンⅥ、ジーセンⅩⅠ、ライトⅦの第237駆逐隊共々移動するそうだ。
艦長は気さくに笑いながら。
乗員のうち副長ベルトラム大尉、砲術長シャミッソー中尉、水雷長デューリング中尉、
通信主任フレーベル少尉の4人が希望により新造駆逐艦カッツェⅤへ異動し、
士官でも残る連中と艦長自身を含めたロートルと他艦のロートルが乗り込んで来たそうだ。
下士官兵はそのままローエングラム警備隊へ移動だそうで、
安全な内地に帰れると喜んで居る兵も見受けられた。
小官の他に2名の便乗者が搭乗していた。
2人とも若く出張かと思ったが、姿を見ると非常に落ち込んだ顔をしていたので。
話を聞いてみたところ、小官と全く同じでいきなり出頭を命じられ、
軍事参議官補佐局へ移動を命じられたそうだ。
小官も仲間だと聞くと2人とも仲間が出来たと若干は喜んできた。
髭面の男は、ハンス・エドアルド・ベルゲングリューン大尉と名乗り、
オールバックの男は、フォルカー・アクセル・フォン・ビューロー大尉と名乗ってくれた。
2人とも士官学校以来の付き合いだそうで年齢は小官より6期下の27歳だそうだ。
ベルゲングリューン大尉は戦艦クロッセンで運用士官をしていたそうで、
ビューロー大尉は巡航艦マウルブロンで砲術長をしていたそうだ。
3人とも暇だったので、此からのこととかイゼルローン時の事とかを話し合っていた。
特に面白かったのが、ベルゲングリューンの乗艦クロッセン艦長ダンネマン中佐の娘が評判の美人で3人から結婚を申し込まれて迷っている間に、ロイエンタール中尉という者にまんまと攫われた話だった。
その後の話は弄んでポイ捨てされたので、
怒った3人が決闘を申し込んだ挙げ句にロイエンタールの仲間3人と殴りあいになり、
ノックアウトされたそうだ。
2人や艦長や乗員と知り合いに成り色々話しながら、
再度艦を持てたら彼等と共に行きたいなと思ったが。
まさか直ぐにその願いが叶うとは思わなかった。
12月22日にオーディン軍事宇宙港到着後アデナウアー艦長達と別れの挨拶をして3人で軍務省人事局へ出頭した。
人事局の受付に行き、3人とも受付嬢に出頭命令書を渡すと「人事局長ハウプト中将閣下がお会いになります。局長室は三階の奥に有ります」と愛らしく案内してくれた。
3人とも顔を見合わせて、中将閣下が小官達のような者達に会うとは間違いじゃないかと聞いたが、
受付嬢が『確かに局長室へ出頭せよと連絡が有りました』と言う事で3人とも向かうことになった。
局長室に行くと部屋の中へ案内された。
局長室の待合室には副官だという大尉が一人しか居らず、
局長は奥の個室でお待ちですからと言われ3人で入室した。
「ドゥンケル少佐、はいります!」
「ベルゲングリューン大尉、はいります!」
「ビューロー大尉、はいります!」
部屋に入ると人事局長ハウプト中将閣下が待っていた。
中将は『良く来た』といい話を始めた、その話を聞き3人が3人とも驚きを隠せなかった。
「ドゥンケル少佐、ベルゲングリューン大尉、ビューロー大尉、本日卿等にここへ来て貰ったのは、卿等の新たなる配属先についてだ」
しかし人事局長自身が言う事はよほどのことしかないはずだがと、不思議がっていると。
「卿等は明年4月に竣工する新造戦艦の艤装委員として任命された、
配備先はローエングラム警備艦隊旗艦だ」
「新造艦でありますか」
「そうだ恐れ多くも皇帝陛下の御発案による新型艦だ」
3人とも皇帝陛下の御発案には些か考え込んでしまったようである。
それを見透かしたのか中将がフォローを入れてくる。
「陛下は御発案で設計は艦政本部がしている、」
しかしこの時中将が一番大事な御召艦の話だけはしなかったと判ったのは、
1月に入り飛行長が就任した時であった。
そんなこととは露知らず。
なるほどと納得しあうと、
中将が読みながら渡し始めた辞令を恭しく受け取っていた。
「クリストフ・ドゥンケル少佐、卿を中佐に昇進、新造戦艦艤装委員長へ任命する」
「はっ謹んで拝命いたします」
小官が艤装委員長と言う事は艦長職かまさか直ぐに艦長に戻れるとは思わなかった。
「ハンス・エドアルド・ベルゲングリューン大尉、卿を少佐に昇進、新造戦艦艤装委員へ任命する」
「はっ謹んで拝命いたします」
「フォルカー・アクセル・フォン・ビューロー大尉、卿を少佐に昇進、新造戦艦艤装委員へ任命する」
「はっ謹んで拝命いたします」
「新造艦は皇帝陛下直属工廠で建造中で明年2月に完成する予定だ。
其れから航行試験を行い4月に竣工する予定だ。
その旨を考え準備して貰いたい、
また乗員の選定も卿等の推薦を元に決めることとする」
ハウプト閣下の元を退室した後。
3人とも非常に明るい顔をしている。
早速話し合い工廠へ向かうことにした。
地上車に乗り工廠へ着くが、守衛所で止められた。
新しい制服が間に合わずに皆一階級下の制服姿である。
怪しまれるのは当然だった、書類とIDを見せ納得して貰い、
その後工廠長の元へ案内された。
工廠長は眼光の鋭い40代後半に見える男だった。
「ドゥンケル中佐。話は聞いている、私は工廠長のシュミットバウアー中将だ」
「はっ」
「卿の預かる新造艦を見てみるかね」
眼光は鋭いが意外に話しやすい人物だった。
「お願いします」
中将自ら我々を案内してくれるそうだ。
部屋を出て、廊下の先からエレベーターに乗り地下ドックへ行く。
ドックを見る我々の前に今まで見たことのない形状の艦が鎮座していた。
呆然と眺める我々を見ながら。したり顔の中将が長々と説明を始める。
しまったこの中将はマッドだ!
新型傾斜装甲や新型機関、エトセトラと長い長すぎる、
ベルゲングリューンは居眠りを始めそうだ。
ビューローも目の周りを揉んでいる。
小官はじっと我慢して聞いている。
ジックリ2時間ほど掛かって中将の話が終わった。
話し終わると満足したらしく「後は勝手に見てくれと」帰ってしまった。
しかしこの工廠長がガチガチに緊張する日が来るとは当時は考えつきもしなかった。
途方に暮れる我々を見かねて造船主任が説明してくれた。
「ようこそ少佐、小官はタウベルト造船大佐です。この艦の造船主任をしております」
階級が少佐のママで間違えられた。
「大佐殿よろしくお願いします」
その後色々なところを見学し帰還した。
帰りに3人でゼーアドラーで呑んで親交を深めた。
その夜は家に帰るのが遅くなり1年ぶりに会う、妻と子に文句を言われてしまった。
翌日から3人で軍務省に用意された部屋に集まり乗員を考え始めた。
「フォルカー。機関長は老練なあの人が良いんじゃないか?」
「ハンス。良い案だと思うぞ」
「艦長如何でしょうか?」
「おいおい俺だけ艦長か、クリストフで良いぞ」
「しかし」
「なあ」
「まあ3人だけだから良いじゃないか」
「「判りました」」
「で機関長はインマーマン工兵中尉にしたいが、
階級がせめて少佐じゃないと駄目か」
「なら階級を上げよう。
その位の権限は与えられているし、
聞いた限りじゃ優秀な機関長だ」
「アデナウアー少佐は商船出身だし商人もしていたそうだから、
艦長から格下げだが補給担当の補給長を頼みたいな」
「ローエングラム警備艦隊所属なら。いっその事ハーメルンⅡの乗員を全員引き抜こう」
「あとは、ケンプテン、クロッセン、マウルブロンの乗員や後輩連中を引き抜こう」
「あと防衛指揮官にジンツァーを呼ぼう」
「ジンツァーとは?」
「クリストフ先輩、我々の同期で良い奴です」
「お前等が言うならそうしよう」
延々と話が続いた。
480年の1月5日を迎え軍務省に散々考えまくった1150名の乗員名簿を提出した。
ワルキューレ関係は飛行長が就任してから相談する予定だ。
パイロットと併せて400名が必要だから、専門家に聞かないと駄目だからな。
最初は撃墜王のカール・グスタフ・ケンプ少佐に打診したが、
『田舎の警備隊の飛行長なんぞ出来るか!』と速攻で断ってきた。
奴の言いように、3人共むかついたが、仕方なく軍務省に人事を頼んだ。
数日後に、飛行長は元ワルキューレパイロットでローエングラム警備艦隊所属の少佐が喜んできてくれると連絡が有った。
連絡三日後の1月14日に取る物も取りあえず来た風の少佐がやって来た。
会合一番「ヘルマン・メルダース少佐であります、この度名誉を与えて頂きありがとうございます」
我々は非常に驚いたが、彼は真剣だった。
「メルダース少佐。卿に飛行長をお願いしたいが大丈夫かね?」
「無論であります、今すぐにでもワルキューレを操縦して見せます」
「おや引退したのではないのかね?」
「いえ長期休暇で腕が鈍っただけです、現在復帰の為猛訓練中です」
「80機のワルキューレを搭載するが、
それらのパイロットと整備員など400名の手配を任せて良いだろうか?」
「はっお任せ下さい」
彼は非常に真剣にそしてキビキビとしている、此はめっけもんかも知れない。
「しかし何故そんなに真剣なのかね?」
「はっ?」
不思議そうな顔をする。
「其れはこの艦が皇女殿下御召艦とローエングラム警備艦隊総旗艦になるからでは有りませんか」
今度は此方が不思議そうな顔をする番だった。
「「「はっ?」」」
「警備艦隊旗艦の話は聞いているが、皇女殿下御召艦の話は聞いてないぞ、本当なのか?」
「本当で有ります。多くの警備艦隊員が小官が乗艦すると聞いてじたんだ踏んで悔しがっております」
「「「かつがれた!」」」
中将め教えてくれても良いじゃないか、人員の集め方が果たして許されるか不明になってきたぞ。
しかし不安より、御召艦という栄誉を受けることに感動を感じている自分が居た。
フォルカーもハンスも同じなのだろう、喜んでいることが判る。
取りあえずハウプト閣下にねじ込みに行こう!
そうしようとしたとき。まるで見ていたかのようにエーレンベルグ元帥から出頭せよと連絡がいきなり来た。
仕方がないので直ぐ行くと、尚書室へ通されエーレンベルグ元帥から直接説明を受けた。
結局御召艦と判れば、型にはまった乗員しか集まらないので、敢えて知らせなかったそうだ。
エーレンベルグ元帥曰く我々が調べて推薦した1150名は全員合格だそうだ。
結局かつがれたが、後々嬉しい事だった。
しかしまさか進宙式で皇帝陛下と皇女殿下が御臨席するとは思わなかった。
昨日は一生の誇りになった。
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ケンプと仲が悪くなるフラグが立ちました。
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