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ドリトル先生と奈良の三山

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第四幕その六

「仏様が見えていたそうだよ」
「ああ、そうなんだ」
「信仰心によってだね」
「目が見えなくなっていても」
「それでもだったんだ」
「仏様は見えていたんだね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「目が見えなくなっていてもね」
「凄いね」
「目が見えなくなっても見えるものがあった」
「それは仏様」
「信仰は見えていたんだね」
「目は不思議な場所だよ」
 身体の器官の中でもというのです。
「見えなくなっていてもね」
「鑑真さんみたいにだね」
「見えているものがある」
「そうしたこともあるんだね」
「そうだよ、それが目というものだというのです。
 そうしたお話をして奈良公園の方に戻るとすっかり夕方になっていました、その夕方を見てです。
 ふとです、先生は皆にこの場所のこともお話しました。
「実は奈良市には士官学校もあるんだ」
「えっ、そうなの!?」
「軍隊の学校もあるの」
「それも士官学校なんて」
「そんなものもあるんだ」
「そう、自衛隊の学校でね」
 それでというのです。
「正式な名前は幹部候補生学校っていうけれど」
「それは知らなかったわ」
「自衛隊の学校もあったなんて」
「士官学校、いえ幹部候補生学校があるなんて」
「意外だったわ」
「どうも知名度は低いけれどね」
 先生は少し寂しそうにお話しました。
「他の場所に比べて」
「ううん、奈良って色々な場所があるから」
「東大寺にしても春日大社にしても」
「さっき行った唐招提寺にしても」
「正倉院だってね」
 とにかく歴史ある場所が多いというのです。
「だからね」
「そうした場所には目が向かうけれど」
「それでもね」
「自衛隊の施設については」
「幹部候補生学校みたいな凄い場所があるなんて」
「思わなかったわ」
「どうにも」
 動物の皆もそうした場所があるとはと言います、ですが。
 自衛隊の学校についてはです、本当にはじめて聞いたといったお顔になって言うのでした。
「そうした場所もあるなんて」
「この奈良市に」
「航空自衛隊、空軍だね」
 先生は微笑んでどの自衛隊かもお話しました。
「そこの学校なんだ」
「ああ、空なんだ」
「そちらの自衛隊なんだ」
「そこの学校なのね」
「自衛隊は三つあってね」
 自衛隊のお話をさらにする先生でした、夕刻の奈良公園の中で。鹿達もそろそろ公園を後にしようとしています。
「陸空海とあるんだ」
「そこは他の国の軍隊と同じだね」
「そうよね」
「三つの軍隊があるのは」
「そうだね」
「そして三つの自衛隊にそれぞれ幹部候補生学校があって」
 今度は学校のお話でした。
「陸自さんは九州の久留米、海自さんは広島の江田島にそれぞれあってね」
「空自さんはここ」
「奈良市にあるのね」
「そうなのね」
「そうだよ、ここにあってね」
 そしてというのです。
「日々立派な士官、自衛隊で言う幹部になる訓練と教育を受けているんだ」
「そうなの」
「僕達が奈良を巡っている間にもなんだ」
「訓練と教育を受けて」
「立派な幹部になろうとしているんだ」
「そうだよ、ただどうしてもね」 
 また少し残念そうにお話した先生でした。 
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