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ドリトル先生と奈良の三山

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第四幕その五

「奈良時代はね」
「まだ方言もなくて」
「関西弁喋っていたかどうか」
「多分違うんだ」
「当時は」
「そうみたいだよ、まだそうした時代だったんだ」 
 言葉もというのです。
「日本が今みたいになっていく」
「その最初の頃だったんだね」
「奈良時代って」
「そう、大体古墳時代が古代日本の終わりで」
 そしてというのです。
「飛鳥時代が中間かな」
「それで奈良時代がはじまりなんだ」
「今みたいな日本みたいになる」
「そうした時代で」
「言葉もこれからなんだ」
「形成されていっていたんだ」
「奈良時代からね」
 こうお話する先生でした。
「まだ平仮名も片仮名もなかったけれど」
「そこからだね」
「徐々に日本が形成されていって」
「今の日本になっていく」
「そうした時代だったの」
「江戸時代にかなり確立されたけれど」
 今の日本の姿はというのです。
「やっぱりはじまりはというとね」
「奈良時代でだね」
「鑑真さんもその時代の日本に来られて」
「仏教の発展に貢献してくれたんだ」
「何度来日に失敗しても」
「嵐に襲われたりお役人に連れ戻されたり」
 鑑真さんの来日にはそうしたことがあったのです、本当に何度も失敗して苦労してだったのです。
「そうしてね」
「そしてだね」
「目が見えなくなってもだね」
「何とか日本に渡ろうとして」
「そして苦労して」
「何とかだね」
「来られてね」
 そうしてだったのです。
「やっとだったんだ」
「そして来日して」
「仏教を教えてくれた」
「一三〇〇年前の日本に」
「まだ平仮名や片仮名がなかった時代に」
 その日本にというのです。
「そしてだね」
「今もこうしてだね」
「鑑真さんの息吹が残っているんだね」
「この唐招提寺に」
「そうだよ、このお寺は歴史的なね」
 まさにというのです。
「場所でもあるんだよ」
「東大寺や正倉院と一緒で」
「そうした場所でもあるんだ」
「鑑真さんがおられて」
「そうしてだね」
「そうだよ、それとね」 
 さらにお話した先生でした。
「鑑真さんは目が見えなくなったって言ったね」
「うん、何度も来日に失敗している間に」
「数々の苦難の中でだね」
「目が見えなくなっていたんだよね」
「そうだよね」
「けれどその目にはあるものが見えていたらしいよ」
 皆にこうもお話するのでした。
「それでもね」
「へえ、そうなんだ」
「目が見ていなくてもなんだ」
「見えているものがあったんだ」
「そうだったんだ」
「そうだよ」
 皆に笑顔でお話しました、鑑真さん所縁の唐招提寺の中にある歴史的資料達を見て回りながら。 
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