ガルパン主人公に転生したけど、もう限界な件
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
番外編 逸見エリカ
『いよいよ戦車道世界選手権も決勝戦を残すのみ!今大会は本当に我々に夢を見せてくれました!これまでの戦車道国際大会において、日本の最高成績はユースを除いてベスト8!日本勢はこれまでベスト8の壁を越えられませんでした。ですが、この分厚い壁を見事に破って日本勢は苦しみながらも優勝候補の一角ロシアを相手に危なげながらも辛勝して決勝戦に駒を進めました!その原動力となった選手はもはや日本戦車道のスーパースターであり、日本代表の隊長に抜擢された逸見エリカさんの活躍が大きいと言ってもいいでしょう。今大会の優勝は日本戦車道において夢であります。しかし、それでも決勝戦の相手はロシアに続いて厳しい。今回の決勝戦の相手は世界の分厚い壁を嫌でもわかってしまいます。そう、戦車道常勝軍団のドイツ代表です』
控室に設置されてるテレビから実況の声が聞こえる。ここまで日本代表は一つも楽な戦いはなかった。一戦一戦が激戦。どれも苦しい戦いだったけど、それでも私達は勝ち上がってきた。ようやく夢にまで見た世界の頂点に手が届く所まで来ている。
「いよいよですねエリカ」
「そうねノンナ。ようやくここまで来たわ」
彼女の名はノンナ。私にとって仇の対象とも言うべきプラウダ高校の生徒だった。みほの仇といわんばかりに第六十三回戦車道全国高校生大会において私達は去年より大幅に戦力ダウンしたなかで優勝して雪辱を晴らした。
だけど私とノンナとの縁は切れなかった。高校卒業後もこのノンナとは大学リーグでも何度も戦い、プロリーグに進んだ時は皮肉にも同じチームに所属する事になった。私は過去の事を見ず流そうなどドラマや典型的なネット小説の主人公みたいに物分かりが良い方ではない。プロリーグで同じチームになった時は本当に売り言葉に買い言葉と言わんばかりに毒舌の応酬。そしてついに、本気で殴り合いの喧嘩にまで発展した時は今でも鮮明に思い出す。
『貴女がみほを……私の友達を殺しておいて被害者面するなあああ!!』
『黙れ!お前の副隊長が軽率な行動をしたせいで、カチューシャがどれだけ苦しんだが貴女に分かるのですか!!』
『黒森峰を……隊長をどん底まで突き落としておいて!!』
『プラウダの栄光を……カチューシャの未来を栄光を台無しにして!!』
あの時はお互いの顔の原型が留めない程に殴り合った。お蔭で二人して監督から大目玉を食らった。それでお互いにろくに話もしなかったノンナと話すようになった。みほが死んだあの全国高校生大会の後は黒森峰は壊滅的な打撃を受けたが、プラウダ高校も例外ではなかった。それは黒森峰にいた時に噂程度に聞いていたが、あの当時の私は隊長と一緒に黒森峰の立て直しが急務で、そこまでプラウダ高校を気に留める暇がなかった。いや、噂を聞いてみほを死に追いやった学校が被害を受けたと聞いて当時の私は当然の報いだと思った。
しかし、プラウダ高校も第六十二回戦車道全国高校生大会の後の不評被害は酷く。プラウダ高校戦車道を離れる生徒が後を絶たずにいて、隊長に任命されたばかりのノンナの大切な幼馴染のカチューシャは何とか隊員を引き留めようとしたが殆どのものが去ってしまった。ノンナは語った。辞める隊員の殆どが戦車道を去る間際にカチューシャに対して言った言葉は……。
「人殺しの隊長と一緒に戦うつもりはない」
ノンナからこの話を聞いて私は今だからこそ客観的に酷いと判断が出来るようになったと思う。黒森峰の副隊長との頃の私だったら「ざまあみろ」とプラウダ高校の隊長に対してそう思っただろう。今にして思えばあの当時の私はかなり追い詰められていたが我ながら酷い性格だなと思う。それでも残ってくれた隊員の思いに報いて次の大会で決勝戦まで駒を進めた事を考えたらカチューシャというプラウダ高校の隊長の実力は本物だと実感した。それでも黒森峰にいた時は私は決勝戦でプラウダ高校の隊長を見た時は、初めは小学低学年ではないかと思った。
何しろ身長が130もないのだ。あれで自分より年上だと聞いて私は正直言ってあの時はどのように反応していいか困った。
でも、あのプラウダ高校の隊長がここまで来た道のりが険しく、安易な道ではなかっただろうと、あの当時の私は本当は認めたくなかったが、あの小さい体で人から馬鹿にされながらも弱みを見せずに厳しい道を歩んだ彼女を隊長程ではないが敵ながら尊敬した。けれど第六十三回戦車道全国高校生大会は私達がプラウダ高校に勝利した。それでもカチューシャは涙を見せずに最後まで堂々としていた。あのように見た目は幼く体も小さいながらも最後まで隊長の責務を全うする姿を見て本当に強いと思った。
だけど、それは過去の話。プラウダ高校の小さな暴君カチューシャは全国高校生大会終了後に終わった。大学時代の時にプラウダ高校のカチューシャの名を聞かなくなった。大学の大会にも出場しなくて不思議に思ったが、殴り合いの喧嘩にまで発展して監督から大目玉を食らってしばらくしてノンナとは、仲良しとはいかなくてもある程度は腹を割って喋れる程度まで改善した私は思い出したように「いつも隣にいたちびっ子は今はどうしているの?」と、今を思えば私は無神経な質問をノンナにしてしまった。私の質問を聞いた時のノンナの険しい表情は私は忘れる事が出来ない。
ノンナから「カチューシャに会いますか?」と、言われて私はシーズンオフだった時もあって特にやる事もなかったからノンナと一緒にカチューシャに合いに行った。そして何年かぶりにちびっ子隊長に合った時は私は言葉を失った。
『何よ……これ』
『だあ~う~~~あうあう』
見た目は高校時代の時と変わらない小さい体。だけど私が最後に見たプラウダ高校の誇り高い隊長の姿はなかった。まるで子供……いや赤ん坊だった。いったいカチューシャに何が起きたのかと私はノンナに詰め寄って聞いた。
『カチューシャは、西住みほがあの大会の時に事故死した事に心を痛めていました。しかし、弱みを見せずに常に強気の姿勢を見せてプラウダ高校の隊長としての責務を続けました。ですが常に心もとないヤジと隊員達のカチューシャに対する批判は収まらず、第六十三回戦車道全国高校生大会で優勝を逃したカチューシャの批判は更に高まり、遂にカチューシャの心は限界が来てカチューシャの心は崩壊してしまいました。』
普段は高校時代のあだ名通りにブリザードのノンナの異名と同じように表情を崩さないノンナが涙を流して私に言った。今のカチューシャは自分が最も幸せな時代だった時の子供時代の記憶まで退行している。それで当時のノンナはカチューシャの幼児退行にショックを受けて一時はカチューシャの面倒を見る為に戦車道を引退しようと考えたらしいが、それをカチューシャの親から止められた。カチューシャの親から自分の面倒を見る為に戦車道を辞めたら記憶が戻った時にカチューシャが悲しむから、カチューシャが一番好きなノンナの姿のままでいて欲しいと言われてノンナは戦車道を再開した。
『カチューシャ。今日から長い休みが取れました。しばらく貴女と一緒に居れますよ』
『あう~♪』
『嬉しいんですか。私も嬉しいですよカチューシャ』
『あ~♪』
ノンナはカチューシャが幼児退行してしまった事は今でも割り切れていないだろう。だけど、そんな悲しみを見せずにノンナはカチューシャと接していた。
カチューシャは今も親戚の北海道にある別荘でひっそりと療養しながら暮らしている。それでも一向に記憶が戻る気配も治る傾向がない。この前もノンナと一緒にカチューシャを訪ねたが、幼児から小学校低学年位にまで回復していたが完全回復までいっていない。
あのカチューシャの姿を見てから私はノンナとの距離はある程度縮まったと思っている。それでもやはりお互いの譲れない部分がどうしても強く、私にとってはみほ。ノンナにとってはカチューシャ。その部分はどうしてもお互いも譲れなかった。確かにカチューシャに経験した苦しみと悲しみは同情するが、それでもやはり怒りを露わにするほど憎しみはもう抱いていないが、それでもみほを殺したきっかけを作った相手という事でほんの僅かだが私はカチューシャを許す事が出来ない。自分でも器が小さいと自覚している。私は非常に我儘な性格である。私とノンナの関係は、戦車道の実力は認めるてある程度は心を許すが、しかし自分達にとって大切な人間を奪った絶対に許す事は出来ない憎い相手。
自分でも自覚する程に曖昧な関係でハッキリとしないが、私とノンナの関係はこれで良いと思っている。
「エリカ。そろそろ試合が始まるぞ。皆も集まっている」
「わかりました隊長」
「私は隊長じゃない。このチームの隊長はお前だエリカ」
戦車道全日本代表監督のまほさんは呆れながら私に呟く。これからドイツが相手だというのに随分と懐かしい記憶と自分にとって甘い頃の過去を思い出すとは昔の自分には考えられない事だ。少なくともこんな大舞台の試合が黒森峰の時代の自分なら緊張しすぎて醜態を周りにさらしていたに違いない。私もあれから随分と変わった事もあれば変わらない部分もある。
「まほさん」
「どうしたエリカ?」
「今回の代表監督の任を受けてくれて本当にありがとうございました」
「どうしたんだいきなり?」
「いえ、ただ何となく」
本来なら全日本代表監督にまほさんが選ばれる事はなかった。当たり前だが高校で好成績を収めても既に現役選手として引退しており年齢も二十代後半の小娘である。そんな彼女が代表監督になったのは私の我儘だ。私が代表の隊長に選ばれた時にどうしてもと代表監督にまほさんを指名した。周りは反対したが、スーパースターとして注目されていた効果なのか知らないが、すんなりと意見は通った。今回の代表監督にまほさんが指名された時は高校生大会を最後に公式戦にも参加せずに、アマチュア試合の監督経験しかない事から実力に疑問視されていたが、決勝戦まで駒を進めた事で評価は急上昇した。
元々まほさんは綺麗だから若くて美しい女性監督として、現在は世間で人気者になっている。最初はあれだけ叩いておいて決勝戦まで来たら直ぐに手のひらを反すとはと世間の反応に私は若干だが呆れていた。
「本当に変わったなエリカ」
「あまり自覚はありませんけどね」
実際にそうだ。私は未だに自分が一番だと思っていない。世間で私をスーパースターと言っているが超えるべき壁を私はまだ超えていない。私はまだあの太陽を超えていない。西住みほという太陽の位置に私は到達していない。
「さあ時間だ。U-22で島田流の島田 愛里寿が優勝したそうだ。私達も負けるわけにはいかないぞ」
「当然です。私達が目指すのは優勝だけです」
「ふ、そうだな。いくぞ」
「はい」
「私の存在も忘れないでください。私は副隊長ですよ」
「あら居たのノンナ?」
「気がつかない程に老いましたかエリカ?」
「お前達。これから決勝戦が始まるんだぞ。いつもの事だが、頼むから少しは自重してくれ」
「「監督のお願いでも、これだけは無理です」」
みほ、見ていてね。もう貴女は亡くなってしまったけど、それでも私は絶対に貴女を忘れはしないわ。だから、私の戦車道が何処までいくのかわからないけど、最後まで見続けてね。
後書き
これで完結します。もうネタが尽きた。
ていうかカチューシャファンの皆様本当に申し訳ございません。カチューシャを幼児退行しましたが、ノンナというお母さん(笑)がいるから幸せって事にしてください!!マジでお願いします。
またネタが浮かんだから書くかも知れませんが……多分。
こんな作者の自己満足小説を評価してくれた読者の皆様には感謝の気持ちが一杯です。本当にありがとうございました。
ページ上へ戻る