儚き想い、されど永遠の想い
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190部分:第十四話 忍び寄るもの十六
第十四話 忍び寄るもの十六
「そうなのですね」
「先日。それは」
「左様ですか」
婆やは真理の言葉を受けて納得した顔で頷いた。
「では間も無く」
「式はまだですが」
「しかし必ずですね」
それが行われるのは間違いない、婆やが今言うのはこのことだった。
「あの方と」
「そうなります」
「そのことです」
まさにそのことだとだ。婆やは真理に言うのである。
「お嬢様が。遂に」
「結婚することが」
「夢の様です」
まるでだ。実の娘に言う様な言葉だった。
「その日が来るとは」
「あの、婆や」
「すいません。しかしです」
「しかしですか」
「婆やは嬉しいのです」
実際にだ。温かい笑みになっての言葉だった。
「心からです」
「そこまでなのですか」
「お嬢様が幼い頃から一緒で」
言うならばだ。真理にとってもう一人の母と言っていい存在なのだ。そのことは真理が最も自覚してそのうえで接しているのである。
「ですから。余計にです」
「それでなのですね」
「はい、そのお嬢様が幸せになられる」
屋敷の中を進みながら。婆やは真理に話していく。二人で進むいつもの廊下は二人だけの喜びに包まれている。その中での話だった。
「何と言っていいのか」
「では婆や」
「はい」
「私は幸せになって」
そしてだというのだ。
「そのうえでずっと幸せになりたいと思います」
「ずっとですね」
「この命が終わるまで」
それは遥かな先だと。そう思いながらの言葉だ。
「そうしたいと思います」
「左様ですか」
「それでいいですね」
婆やにだ。問うたのだった。
「私達は」
「そうでなければいけません」
婆やは真理にだ。少し厳しい口調で告げた。
「お嬢様」
「そうでなければといいますが」
「はい、幸せは御自身で手に入れられるもので」
「そして二人で」
「はい、それは決して手放してはならないものです」
「それが幸せなのですね」
「婆やはそう思います」
笑顔だ。だがその声も言葉も確かなものだった。
「幸せは自分で手に入れて。それから」
「手放さないように努力するもの」
「そういうものだと思います」
「手に入れるだけではないのですね」
真理はそのことにだ。今思いを巡らす。
そのうえでさらに考えてだ。自分の部屋に向かいながら述べるのだった。
「それも一人のみではなく」
「あの方との幸せですね」
「はい、義正さんと」
「ならばです」
彼と共にいる。だからこそだというのだ。
「それは決してです」
「御互いに。二人が」
「手放してはならないものです」
「私だけでも難しいものですね」
幸せを手に入れ手放さない、そのことがだというのだ。
しかしここでだ。さらにだった。
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