レーヴァティン
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第三十七話 極寒の地その十
「生き返られる世界でもな」
「それでもですね」
「食わないとどうしようもないからな」
この現実は絶対だというのだ。
「だったらな」
「はい、ステラーカイギュウもオオウミガラスも」
「食うか」
「そうすべきです」
順一もこの源氏g津を述べた、そして今度は正が話した。
「オオウミガラスはともかくステラーカイギュウは狩りにくいだろうな」
「全長九メートルだったっけ」
源三はステラーカイギュウのその声を言った。
「確か」
「九メートルって相当だよな」
「こっちの島でも相当だよね」
「巨人程じゃないけれどな」
流石にそこまで大きくないがというのだ。
「それでもな」
「九メートルのものをどうして狩るか」
「しかも海にいるのをな」
「確かでござる」
ここで進太が二人に話してきた。
「海に船で出てカイギュウの背中に銛を刺してでござる」
「狩ってたのかよ」
「そうだったんだ」
「カイギュウは極めて大人しく逃げることも戦うこともしなかったそうでござる」
そうした温和なことこの上ない性質だったという。
「しかも傷付いた仲間、それが雌であった場合は尚更助けようと集まってくる習性もあったそうでござるから」
「その集まったカイギュウも狩る」
「そうしてたんだね」
「そして銛を刺して出血多量で死なせて狩るのでござるが」
進太はその狩り方についてさらに話した。
「屍が岸部に流れついたのを取るでござる」
「そうしてか」
「捕まえてたんだ」
「五匹狩って一匹が打ち上げられる割合だったそうでござる」
「ひでえ狩り方だな」
「そうだね」
二人はここまで聞いて顔を顰めさせた、話す進太も聞いている他の者も同じだった。久志は知っていたという顔だが顰められているのは同じだ。
「無駄が多いしな」
「随分残酷だね」
「無抵抗でしかも仲間助けようっていう相手にな」
「そこまでするかってね」
「思うな」
「それは狩人、商人だからでござる」
その立場からのことだというのだ。
「容易く狩れる、そして商売道具を提供出来る」
「そうした相手だから」
「そうしたことをしたんだ」
「そうでござる、しかも極寒の地でござる」
北極海、そこだからというのだ。
「その為で生きてわざわざ出向いて利益を得ようとすれば」
「そうしたことをしてでもか」
「そうでもしないと駄目だったんだ」
「そうだったでござる」
「そういうことか?」
「しかも九メートルの大きさでござる」
進太はステラーカイギュウの体格の話もした。
「最大で」
「鮫でもそんなでかいの稀だよな」
「ホオジロザメでござるな」
「ああ、あの鮫でもな」
映画でも出た人食い鮫の代名詞ともなっている極めて獰猛とされる鮫だ、英語名は文字通りマンイーターシャークという。
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