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レーヴァティン

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第三十七話 極寒の地その九

「海はともかく陸は少ないからな」
「だからか」
「食いものも持って来てよかったな」
 保存食、それをというのだ。
「本当にいざって時はそれが命になるからな」
「だからだよな」
「そうだよ」
「備えあれば憂いなしだな」
「まさにな」
「尚オオウミガラスやステラーカイギュウは美味とのことです」
 順一は仲間達にこのことも話した。
「ステラーカイギュウは子牛の様な味がするとか」
「子牛か」
「脂はアーモンドの様だとか」
「ってことは美味いんだな」
「そう資料に書かれています」
 実際に食べた者達が書き残している。
「オオウミガラスもだとな」
「そうか、じゃあ海の方に行ったらか」
「危急の時は」
「何か気が引けるな」
「絶滅しているからですね」
「俺達の世界だとな」
 そう思うというのだ。
「どうしてもな」
「この世界はこの世界ですが」
「わかってるけれどな」
 このことはというのだ。
「俺にしても、けれどな」
「どうしても我々の世界のことを思って」
「だから絶滅している生きものを食うのはな」
 オオウミガラス然りステラーカイギュウ然りというのだ。
「抵抗があるぜ」
「そうですか、しかしです」
「こっちの世界ではだよな」
「普通です」
 そうした生きもの達を食べることはというのだ。
「至って」
「こっちの世界はこっちの世界か」
「はい、そして彼等は食べますと」
「美味いんだな」
「そうです、それも極めて」
「そう言われてるんだな」
「その為絶滅しました」
 オオウミガラスもステラーカイギュウもだ、オオウミガラスは個体数が激減してから保護される様になったが僅かな場所になっていた生息地で火山が噴火してそのせいで遂に絶滅してしまった。十九世紀の話だ。
「そうなってしまいました」
「人間の業だな」
「他にも絶滅した生きものはいます」
「ドードー鳥とかクァッガとかか」
「ブルーバックもです」
 こうした生きもの達というのだ。
「全てです」
「絶滅してるか」
「残念なことに」
「全部人間の業だな」
「我々の世界の」
「このことは覚えておかないといけないな」
「二度と繰り返さない為に」
 その為にというのだ。
「そうしていかないといけません」
「そうなるか」
「はい、そしてお話を戻りますが」
「いざって時はか」
「そうした生きもの達も食べてです」
 そうしてというのだ。
「生きないとなりません」
「そういうことか」
「必要ならば」
 その時はというのだ。
「そして目的を達成する」
「この島の統一、そうしてな」
「この世界を救う為に」
「そうした生きものも食わないといけない場合もある」
「そういうことです」
「成程な、まあ実際にな」
 この島そして世界の現実をだ、久志は意識して話した。 
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