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儚き想い、されど永遠の想い

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135部分:第十一話 断ち切る剣その九


第十一話 断ち切る剣その九

「どうしてもじゃ」
「そうなのですか。半島出身者と台湾出身者でそこまで」
「半島も台湾も差別してはならんが」
 それでもだとだ。伊上は現実を話すのだった。
「これが現実なのじゃ」
「何とかしないといけませんね」
「わしもそう考えて動いておるが」
 それでもなのだった。陸軍、海軍も含めてその台湾出身者への冷遇は第二次世界大戦がはじまるまで変わらなかった。それで大戦の時に応募してみてだ。その応募に応えた者の数とその質にだ。驚いたのだ。
「しかしどうもじゃ」
「話は進んでいませんか」
「残念なことにな」
「左様ですか」
「台湾出身者も優秀な筈じゃ」
 このことがわかるのはまさに次の大戦の時であった。
「それを冷遇するのは疎んでいるからじゃ」
「偏見からですか」
「うむ、偏見じゃ」
「そしてその偏見は」
「君達のご両親にもある」 
 そうだとだ。二人に話すのだった。
「残念なことにじゃ」
「御互いの家への偏見」
「それですね」
「商売敵なのはわかる」
 このことは重要だ。だがそれ以上にだというのだ。
「しかし両家は商売以上に感情的になってしまっておる」
「だからこそですか」
「それをなのですね」
「解消しなければならん」
 伊上は着ているその見事な和服の袖の下で腕を組みながら述べた。
「ここでじゃ」
「断ち切るべきなのですね」
「そう常に思っておった」
 伊上はまた言った。
「そしてそこに君達が来てくれた」
「それならばですか」
「私達に」
「わしでよければじゃ」
 まさにだ。そうだというのだった。
「力を貸しさせてくれ」
「有り難うございます。それでは」
「御願いします」
「うむ、それではじゃ」
 話が決まった。そのうえでだった。
 伊上はさらにだ。次の話にその話を進めるのだった。
「義正君よ」
「はい」
「君はどうするのじゃ」
 こうだ。義正に対して問うのだった。
「何を考えておる」
「はい、ただそれぞれの両親に話してもです」
「それでは駄目じゃな」
「私もそう思っています」
「反対するに決まっておる」
 伊上は難しい顔でそのことに答えた。
「話はこじれるだけじゃ」
「そうです。必ずそうなってしまいます」
「わかっておるな。見事じゃ」
 義正のその先見を讃える。しかし今はそれを讃えてもそれだけだった。
 それもわかっているからだ。伊上は話すのだった。
「しかしそれだけでなくじゃ」
「私の考えですが」
「どうするのじゃ?」
「公にしようと考えています」
 このことをだ。伊上にも話すのだった。

 
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