| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ガンダム00 SS

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

ep19 兄さんの機体

 
前書き
今回の主役は劇場版に登場したガンダムデュナメスリペアです。アロウズとの最終決戦後のミッションを描きました。 

 
2313年 地上 元AEU領 A国軍事基地

ロックオン・ストラトスはMSのコクピットから作戦対象の基地を見下ろしていた。

「今のところは何もないが……」

山岳に囲まれた密林の中にあるA国の軍事基地は小さな飛行場と格納庫、司令塔で構成されている。軍が展開している様子はない。

音声通信で仲間の声が聞こえる。同じくMSに搭乗している刹那・F・セイエイだ。

『だが、ここは間違いなく戦場になる。敵がきたら俺たちは介入する』

「ああ。分かってるさ』

長年に渡って対立してきたA国とB国の和平交渉。今日はA国の首都で2国間の式典が行われる。

だが、ここには大きな問題があった。B国内では、この和平交渉について意見が二分化しているのだ。

国内経済の需給バランスが取れたA国と協定を結び、対外貿易を契機に国の推進を図りたい改革派と、軍事力が圧倒的に劣るA国を武力併合し、国内の労働・雇用問題を解決させたい武力派。B国は内部の意見統一をしないまま、今日に流れ着いてしまったのだ。

B国の首脳陣が改革派であるため、今日の和平交渉は彼らの強引な押し切りによって決定された。武力派がこれを許すはずがない。

今回のミッションは、両国の和平交渉会合を決裂させたいB国武力派の迎撃だ。武力派が準備した特務襲撃部隊が、A国軍事基地を強襲する。両軍の軍事力には隔たりがあり、ここで衝突が起きれば和平交渉は元より、両国の対立は以前よりも増してしまうだろう。

そこでソレスタルビーイングは、この裏切り行為に対応すべく作戦を展開している。ミッションは刹那とロックオンが担当することになった。

「それにしても、この機体で敵の数に耐えられるのか?太陽炉だって積んでいないのに」

ロックオンは刹那にぼやいた。彼が今使っているのは、ガンダムデュナメスリペアだ。資金繰りに困っているソレスタルビーイングは、過去に使っていた機体を再利用することで戦力を保持している。

刹那が淡々と答える。

『大丈夫だ。デュナメスは武力介入のために開発された機体。こういう作戦には打ってつけだ』

「武力介入ねえ……。兄さんの機体にケチはつけられない、か」

そのとき、山岳の開けたところから飛行MSの編隊が飛んでくるのが見えた。ロックオンはメインカメラの映像を拡大し、編隊がB国所属であることを確かめる。

「刹那!」

『見えている。エクシア、武力介入対象を確認。駆逐する』

刹那が乗るガンダムエクシアリペアⅢは、左腕に装着したGNロングライフルを展開する。機体が長距離射撃体勢に入り、銃口にGN粒子の煌めきが見えた。

ロックオンはデュナメスを操り、同じようにGNスナイパーライフルを敵に向けた。彼はガンモニターを上から下げてガシリと構え、敵を捉える。

「デュナメス、目標を狙い撃つ!」

一筋の閃光がB国所属のユニオンリアルドを貫き、爆発する。ロックオンは続いてトリガーを引き、敵MSを撃ち落としていく。

ピピっというセンサー音が鳴り、モニターが自動でアップされる。A国軍事基地に向けて接近するB国の地上部隊だ。

『作戦通り、俺が地上部隊を叩く。上は任せる。ロックオン』

「了解だ。頼んだぜ」

エクシアが飛翔し、山岳から地上へと降りていく。地上に足をつけたエクシアはロングライフルを敵部隊に向け、次々と戦闘不能にしていった。

「すげぇ当てるなあ、あいつ」

それを聞いたハロが目を点滅させながら声を発する。

『ロックオンマケソウ、ロックオンマケソウ』

「言うじゃないの、ハロさんよ。俺はお役御免ってか?」

ロックオンはヘラヘラと笑いながら再び射撃を始める。全ての攻撃が敵の中に吸い込まれていった。

「伊達に兄さんの弟やってるわけじゃないんでね」

空戦部隊はGN粒子の干渉でレーダーこそ使えないが、デュナメスに対して攻撃をしかけてくる。ロックオンはそれらを全て回避した。

「この機体には傷1つつけたくないのが本音だ。悪いが狙い撃つぜ!」

空戦部隊の残機が4機になったところで、彼らが撤退を始めた。地上を見ると、B国軍の部隊が基地から遠ざかっている。あちらも戦闘が終了したらしい。

刹那が言った。

『作戦完了。撤退しよう』

「ああ」

ロックオンは生返事で答えて、帰還ルートに入ったエクシアの後を追っていった。




無人島

ソレスタルビーイングが使用している無人島に帰ってきたロックオンは、コンテナに入れたばかりのデュナメスを見上げた。

かつて世界に対して喧嘩を売ったガンダム。まさか自分がこの機体に乗ることになるとは思ってもいなかった。
コクピットから降りた刹那が声をかけてくる。

「どうした」

「ちょっと兄さんの機体を眺めてただけだよ。年季入ってるなあと思ってね」

刹那もまたロックオン同様、デュナメスを見つめる。やがて彼は言った。

「今はあいつの機体じゃない。お前の機体だ。だから気遣いなんていらない」

刹那の言葉を受けて、ロックオンは一瞬言葉を失う。それから苦笑いを浮かべて呟いた。

「心を読むなっての、このイノベイターめ」

だが、刹那の言葉が自分の中にある柵を消してくれたような気がした。

ーーこいつの言葉にあやかるってのもあれだがな……。

ーーデュナメス。ありがたく使わせてもらってるよ、兄さん。

ロックオンはそれ以上は何も言わず、デュナメスに背を向けて歩き出す。

世界はいまだ戦いを止められない。だが、誰かが痛みを抱えることになっても、人類は戦いを終わらせる必要がある。全員がそう意識しなければ、この時代は変わらないままだろう。

ーー痛みを受けるのは俺たちで良い。俺はソレスタルビーイングのガンダムマイスターとして、矛盾の中で狙い撃つまでだ。

無人島の空は水色に似た青に染まっていて、とても戦争の空気を感じられない。ロックオンはその色に想い人を重ね、目を瞑った。

彼女にも、戦争のない世界を見せたかった。それは叶わないが、そういう世界を目指すことはこの先できる。ロックオンは改めて自分の戦いを再確認し、コンテナの待機室に向かった。

終 
 

 
後書き
オムニバス短編はこの回で終わりです。1stのファーストミッションを担当した2機がラストを飾る形となりました。意図はなかったのですが、良い締め方かと個人的には思っています。

予定としては、あと数話ほど書きます。投稿まで少々お待ち下さい。
舞台は2314年以降の世界。イノベイターと旧人類軍の統合戦争を背景に、オリジナルストーリーを書くつもりです。
おつき合いいただきたく思います。よろしくお願いします。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧