真田十勇士
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巻ノ百十九 大坂騒乱その四
「そしてな」
「片桐殿は」
「前からどうもと思っておったが」
繭を顰めさせての言葉だった。
「この件でじゃ」
「さらに」
「信用出来なくなったわ」
こう言い切った。
「だからな」
「それでは」
「遠ざける、あの者に近い者達もじゃ」
つまり徳川家との融和派もというのだ。
「全てじゃ」
「遠ざけますか」
「そなたはそのままでそしてじゃ」
さらに言うのだった。
「修理達を用いる」
「わかり申した」
「その様にな」
「畏まりました」
「必要ならば」
茶々はさらに言った。
「片桐はな」
「お手打討ちに」
「わらわは刀は使えぬが」
それでもというのだ。
「然るべき者にな」
「では」
「修理にな」
その彼にというのだ。
「そのことも話しておけ」
「それでか」
「そのこともな」
「はい、話しておきます」
大蔵局はその大野の母だ、だからこう答えた。
「その様に」
「ではな」
こうしてだ、茶々は大蔵局の話を聞いてそうしてだった。幕府の言うことを全て聞かぬことにしてだった。
片桐達を遠ざける様になった、そして片桐は。
はっきりと身の危険を感じる様になってだ、周りにも言われた。
「どうもです」
「貴殿の御身ですが」
「危ういですぞ」
「大野殿達に狙われていますぞ」
「お命を」
「そうじゃな」
片桐もそこは察していて言う。
「どうにもな」
「ですから」
「残念ですが」
「こうなってしまうとです」
「お命が危ういです」
「去るしかありませぬ」
「最早」
この大坂をというのだ。
「そうしましょうぞ」
「ここはです」
「残念至極ですが」
「お命なで狙われては」
「どうしようもありませぬ」
「潔く死ぬのも華ですが」
武士としてとだ、こう言う者もいたがこの者もこう言った。
「しかし今はです」
「その時ではないか」
「はい」
こう片桐に言うのだった。
「どうしても」
「そうなのか」
「また時があるでしょう」
片桐にさらに言った。
「その時を待ち」
「今はか」
「この城を去りです」
そしてというのだ。
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