銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません
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第五十七話 ジジイの恐怖
次は明日の予定です。
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第五十七話 ジジイの恐怖
帝国暦480年1月12日
■オーディン 軍病院特別病棟
本日お父様を軍病院の慰問に連れ出しました。
傷病兵にお言葉を懸けるのがメインですが、
私はケーフェンヒラー准将に会うのがメインです。
朝からお父様とケッセリング中将達と一緒に病室を廻ります。
異例のことなので病院側も緊張しまくりなのが判ります。
病院長が一々この患者は何処何処で負傷し何処で負傷しましたとか言ってます。
父様が傷病兵に言葉を懸けると、
傷病兵達は感動して泣き出す者まで出る始末です。
無論私も声を掛けて励ましますよ。
2時間ほど懸けて、全部の病室を廻りました。
いよいよ最後の病室です。
そうです、あのケーフェンヒラー准将の病室です。
本当なら単独で行きたいところですが、
今回は形式張って医院長や取材陣も一緒なんですよね。
夕方のニュースやネットや電子新聞に流れます。
皇族が映像で出るのが可笑しくないかと言うと、
OVAでアンネローゼの立体映像が雑誌に載るぐらいなので、
父様や私が映像で出るのは普通なんですよね。
看護婦が病室を開けると、
あのOVAで見たケーフェンヒラー准将がベットの起きる角度になって、
起きて居ました。
やっぱOVAの様に沢山の本が置いてありますね。
よくぞあれだけ集めた物だと思いますよ。
恐らく此方へ帰ってきてからも集めたんでしょうね。
「皇帝陛下、皇女殿下、この度はこの老骨をお救い頂き誠に祝着至極に存じます」
事前に台詞のチェックしているのですね、態とらしさ満点です。
顔がなにか企んでいるような感じに見えますよ。
「うむ、ケーフェンヒラー准将、42年間の長い間、囚われてご苦労で有った」
「皇帝陛下勿体ないお言葉でございます」
「さて、卿の男爵家じゃが典礼省に命じて復活させておる、安心して養生するが良いぞ」
「臣としてありがたき幸せにございます」
やめてくれー、腹の探りあいだよ。
可笑しいぞ、笑いそうになる。
私も意を決して、ケーフェンヒラー准将に話しかけます。
「ケーフェンヒラー准将、長い間お疲れ様でした、
何か必要な物が有れば遠慮無く言って下さいね」
ケーフェンヒラー准将が形式的に、
「皇女殿下勿体ないお言葉でございます」
普通の挨拶ですね、まあ今はこのぐらいですね、
取材陣や医院長達が居ますから。
こうして一旦病室を出て、病院の貴賓室で医院長と父様の話を取材し終了しました。
終了後に再度ケーフェンヒラー准将の病室へ行きます。
今度は既に爺様が待っているのです。
今度は病室外に護衛が守ってこの部屋に近づけない様にしています。
この特別病室自体が遮音力場を発生しているので会話は漏れません。
病室に入ると、不敵な笑みを浮かべた爺様とケーフェンヒラー准将が2言3言話していました。
父様と私が入ると、直ぐに「皇帝陛下には再度のお越しありがたき幸せ」とニヤリとしながら挨拶してきました。
「うむグリンメルスハウゼンよ子細は伝えたかな」
「陛下ケーフェンヒラー男爵は不思議がっておりますな」
「であろうな」
「陛下ケーフェンヒラー男爵が幾つか疑問があるそうですので、お答えをお願いできますでしょうか」
「無論じゃ、答えよう」
砕けた話し方に流石のケーフェンヒラー爺さんも少しひいてるね。
「ケーフェンヒラー男爵、疑問とは何じゃ」
「御意、何故私のような老いぼれを態々呼び戻したのでしょうか、
私としてはあの地で一生を終える気でありましたのに、
名指しで帰国を命じられましたが、其れはいかなる仕儀でありますか」
「またあの様な配布品を使い同盟に罠をお張りになったのは、
どなたの考えですかな」
ほー流石ヤンが帝国で謀略を遣らせたら同盟が大変なことになったろうと、
評価しただけのことはあるな。
「卿を呼び戻したのも、あの罠を張ったのも予ではない」
「なるほどそうしますと、此処に居られるグリンメルスハウゼン子爵閣下ですな」
「儂ではないよ、儂は手伝いをしただけじゃよ」
「なるほど陛下にはよほど優秀なブレインがついていらっしゃるようですな」
「ハハハそうじゃのグリンメルスハウゼンよ優秀じゃの」
「そうでございますな、優秀でございます」
2人とも私を見て言わないで下さい。
ケーフェンヒラー爺さんが変な顔してますよ。
「ケーフェンヒラーよ予の優秀なるブレインとはこの子じゃ」
「は?この子と言いますと、皇女殿下でございますかな?」
「そうじゃテレーゼが全て企んだことじゃ」
あのケーフェンヒラー爺さんが唖然としてますよ。
けど企むだなんて、悪党みたいじゃないですか!
もう少しナチュラルに言って下さいよ。
「まさかその様な年齢で彼処まで悪辣な事が出来るとは」
えーとさらっと悪口が入ってませんか_?
悪辣ですが人道的にしてるつもりですが。
「本当の事じゃ、先頃のエル・ファシルについてもテレーゼの企みじゃ」
「お父様、企み企みって私がまるで悪の大幹部みたいじゃないですか」
「ハハハテレーゼ様似合うやも知れませんぞ」
「そうじゃな似合うやもしれん」
ハイレグ履いて変な化粧して鞭持って、戦闘員に同盟軍をやっつけておしまいって、
言ってるシーンが目に浮かぶのですがね。
2人してからかいまくりすぎです、ケーフェンヒラー爺さんが唖然としてるじゃないですか。
気を取り直して。
「ケーフェンヒラー准将先ほどは形式的な挨拶でしたが、
父様やグリンメルスハウゼン子爵が言うように、
今回の様々な仕掛けは私が考えて子爵に実行して貰ったモノです」
ここは実行者は爺様だと強調です。
「ホホホ、そうですな、実行は儂が行いましたな」
「しかし、殿下は未だ10歳にも成らないお年のはずですな、
その様な知識が彼処まで出てくるとは、唯々驚くだけですが」
「持って生まれし才能でしょうかね、
これがなければとうの昔に冷たい土の下だったでしょう」
父様が凄く優しい目で見てくれます。
「そうなのじゃ、テレーゼは生まれた時に害されそうになっての、
偶然に助かったに過ぎんのじゃ、それ以来韜晦を続けておる、
こういう謀も表には出ずに予等がやっておるのじゃ」
「しかしその様な事私に伝えてしまい宜しいのですか」
「そこでじゃ、卿の知識と経験をテレーゼの為につかって欲しいのじゃ」
「私の経験や知識は役に立つとは思えませんが」
「いえ聞きましたよ、家庭のことなども知りましたが、
其れについては、私は何も言えません、
しかし20代で地方行政のエキスパート、軍に入っては情報分析のエキスパート、
是非私の師匠になって頂きたいのです」
「ケーフェンヒラー、予からも頼む、テレーゼを助けて遣ってくれ」
考えてるです。
「陛下、殿下、老い先短い老人でございます、お役にたてるとはとうてい思えませんが、
このように頼まれて断るわけにも行きますまい、
テレーゼ様のお手伝いを致します」
なんとかなりましたね、けど体には気をつけて貰わないと大変です。
「臣は何をすれば宜しいのでしょうか?」
「ケーフェンヒラー准将、取りあえずは体を治すことに専念して下さい、
その間に向こうで研究していた、
ジークマイスターとミヒャールゼンの事に対する研究を続けて頂いて結構です、
軍務省や統帥本部や宇宙艦隊の資料にアクセス出来るように取りはからいますから、
自由に閲覧なさって下さい」
おーやはり驚いてますね、どこから漏れたのかと思ってるようです。
父様と爺様には誤魔化して伝えて起きましたら、平気ですけどね。
普通は怪しまれますよね。
「どこから其の話をお聞きに成られたのですか?」
「エコニアに居た方が偶然その話を知っていたんですよ、なんでも看守から聞いたとかで」
「なるほど、そうでしたか。
お言葉に甘えてこの老骨を直し殿下のお役にたてるようにいたしましょう」
「お願いしますね、それと明日付けでケーフェンヒラー准将から少将へ昇進です、
本当は大将にしたいんですが、流石に無理とのことで取りあえず少将で我慢して下さい。
後肩書きは、私の領地のローエングラム領に作った、
ローエングラム星系駐留軍統帥部第7課課長という事になりますので、よろしくです」
「この事は他言無用で願うぞ」
「御意でございます」
「体良くして下さいね」
「ありがとうございます」
病室を出て歩いて帰る途中いきなり急患が入ってきたとの連絡が来ましたよ。
何故にと思ったら、今回の帰還兵が自殺未遂だって、名前聞くとビックリです。
プレスブルク大尉だそうです。
聞くところによるとブラスターで胸を撃ったらしいが、外れて負傷したそうだ。
あれほど帝国へ帰りたがっていたのに自殺未遂なんて、
なんで何だろうと考えながら取りあえず、病室へ向かいます。
病室前でも『死なせて下さい』とか『一族の恥になる前に』とか聞こえてきます。
父様と共に病室へ入ります。
暴れていたプレスブルク大尉が我々を見た瞬間、
目を大きく見開いて顔面が蒼白になり、言葉が出ない状態になりました。
私は察しが付きました、彼は貴族です、捕虜になったのが一族の恥と言われたのではないでしょうか?
父様も察したようです。
「プレスブルク大尉、卿は折角助かりし命を粗末にするのか」
驚きながら少しずつ話してきますね。
「皇帝陛下、小官は俘虜になりしモノです、このような者が生きていく価値はございません」
「馬鹿者が、予が卿等の帰りを待っておったのじゃ、胸を張って生きていけばよいのじゃ」
父様かっこいいですね。
「皇帝陛下・・・・・」
「して如何したのじゃ?」
「「お恥ずかしき話なれど、小官は男爵家次男の当たります、
俘虜になり帰還いたしましたが、
一族からは当家の面汚しなぜ自決しなかったと連日の攻めにございます。
それでも皇帝陛下のご恩に酬いる為に恥辱に混じれながら生きて参りましたが、
生みの親からも、同じように見放されました、そして自賽せよとブラスターを渡されました」
酷いですね、親としても人間としても最悪です!!
「プレスブルクよ卿は予の赤子じゃ、予の言葉を信じるのじゃ予に仕えよ」
涙流し始めましたよ。
「皇帝陛下・・・・・・・・・・」
「よいよい、プレスブルク大尉卿はノイエ・サンスーシの警備に参加せよ、
早く傷を治すのじゃ、良いな」
「皇帝陛下、御意にございます」
良い話ですね、けど帝国貴族とは何たる狭量なんでしょうか、
親なら喜ぶのが当たり前なのに死ねとは、嫌な奴です。
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