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Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
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A's編
  第四十九話 とあるのどかな日常とメイドさん   ★

 静かに意識を浮上させ身体を起こす。

 十一月というこの時期ではまだ太陽が昇っておらず辺りはまだ薄暗い時間。

 先ほどまで眠っていたベットを整え、服を着替え、キッチンに行き水を飲む。
 そしてそのまま朝食の下ごしらえをしてしまう。
 その後アリシアの墓で線香をたて、手を合わせてから自分の工房である鍛冶場に向かう。

 自身の工房でもある鍛冶場で大きく深呼吸をしてから座禅を組んで瞑想を行う。
 それをしばらく続けた後、鍛練用の双剣を持ち庭で柔軟をしてから剣を振る。

 定期的にシグナムやザフィーラが来る事があるが本日は来ないので素振りと仮想の敵を想定したイメージトレーニングのみ。

 素振りとイメージトレーニングが終わるころには太陽も昇り始めているので双剣をしまい、なのはの魔法トレーニング場所までランニング。

 なのはの魔法トレーニングだが誰かに見られる可能性がないわけではないので俺の家の庭でするという話が一時上がった事があった。
 だが『魔法のトレーニング+なのはの家から俺の家の往復』となると朝の時間ではなかなか慌ただしいので結局今も林道の頂上でトレーニングを行っている。
 もっともなのはの魔法のトレーニングに関しても俺が参加するのは不定期である。

 不定期なのもシグナム達との鍛錬が興に乗り過ぎたり、剣を鍛えている最中だったり、朝一からバイトが入っていたりと理由は様々ではある。

 本日は学校という事もあり剣を鍛えたり、バイトの心配もいらない。
 シグナム達も来なかったので、数日ぶりのなのはのトレーニングへの参加である。

「おはよう、なのは、ユーノ」
「あ、士郎君。おはよう」
「おはよう、士郎」
「Good morning, friend」
「レイジングハートもおはよう」

 あいさつをお互いかわし、なのはは一定の魔力を注ぎながら魔力球を維持する魔力のコントロール技能向上のトレーニングを行い始めるのをユーノと共に観察する。

「なのはの調子はどうだ?」
「もともと才能があるから魔力のコントロール技能もちゃんとレベルアップしてるし、飛行に関してはものすごい進歩だよ。
 まあ、士郎の前じゃ言わないけど魔力のコントロール技能や体力アップのような基礎的なのはね」
「まあ、自分にとってはあまり向上しているのがわかりづらいからな。
 だが土台をしっかりして作っておけば、なのははもっと伸びる。
 俺なんかよりも比べ物にならないぐらいの才能があるからな」

 俺の言葉にユーノが首を傾げる。
 
「前から思ってたけど士郎は自分に才能がないって言うけど僕なんか言うまでもないし、なのは達よりも強いんだよ」

 確かに今現在ではなのはやフェイト達よりも強いだろう。
 だが

「それは実戦経験の差だよ。
 魔術や剣に関しても師からは才能がないから二流レベルって言われてたしな」

 なのは達よりも今現在強いというのは実戦経験と鍛錬を積み重ねてきた時間の差が大きいからだ。
 なのは達がこのまま鍛錬を続ければ俺より強くなるだろう。
 もっとも非殺傷設定というのがある魔導師では命を賭けた実戦の濃さでいえば魔術師の方が濃いのかもしれない。
 それに俺はセイバーをはじめとするサーヴァント、英霊たちの戦闘を見ているのだ。
 俺がいた世界のトップクラス、英霊の域まで上り詰めた使い手達の技能を見るという経験が自体がとても貴重である。

 経験の話は置いておくとしてなのは達が今の俺のレベルまで達した時に俺が抜かれない自信があるとすれば弓ぐらいのものだ。

「二流か。いまいちピンとこないけど」
「魔術も投影以外まともに使えるのがほとんどないからな。
 投影出来る武器をよりうまく使えるように、何かを極めるというよりも手札を増やして、戦いの幅を広げる事を意識してるんだ」
「なるほど、そういうことか。
 あ、あとリンディ提督からなのはの携帯にメールが入ってて今月末ぐらいに一度証人として来てもらう事になるだろうって」

 フェイトの裁判も順調のようでなによりだ。

「了解した。
 正式な日付がわかったらできるだけ早めに連絡をくれるように返事をしておいてくれ。
 学校も休む事になるから色々準備がいる」
「わかった。伝えておくよ」

 それにしてもフェイトの裁判の証人か。
 それ自体は構わないが、その間学校は勿論バイトも休まねばならない。
 向こうで短期のバイトがないかリンディさんに聞いてみるのもいいかもしれないな。

 それに管理局に行くとなればシグナム達と少し話しておく必要もあるか。
 海鳴を空ける事もそうだが、管理局に行く事で余計な誤解を与えたくはない。
 
 あとは昨日逃した猫の件もある。
 逃して問題なかったとはいえ、また来る可能性も0ではない。
 シグナム達にも伝えておいた方がいいだろう。

 他には……ないとは思うが管理局が向こうにいる間に敵になった場合も想定して銃を隠し持っていくのも手か。
 そこら辺はおいおい考えるとしよう。
 今は

「なのは、そろそろ時間だぞ」

 そろそろ時間切れだ。
 トレーニングの後それぞれ家に戻り朝食を取りそれから学校である。
 あまりゆっくりしていると時間がギリギリになる。

「あ、は~い」

 手の中で維持し続けた魔力をゆっくり霧散させるなのは。
 なるほど。
 ユーノの言うとおり順調の向上しているようだ。

 魔力のコントロールに関しては前回みたのが先週。
 その時は声をかけられた時に魔力が一気に霧散する事はなかったがそれでも一瞬乱れていた。
 今回はそれが見られない。

 今夜は翠屋のバイトだし、なのはの夜の訓練を見る事が出来るか。
 いや、夜の訓練なら丁度試したい事があるからアレをやってみるか。
 
 シグナム達に管理局に行く事についてはなのはとの夜のトレーニングが終わった後に呼び出させてもらうとしよう。
 はやてには管理局の事など伝えていない事があるからシグナム達だけの方がいいだろうし。

「じゃあ、また後でね」
「ああ、今日は翠屋のバイトだから夜のトレーニングには付き合うから」
「うん!」

 なのはと別れ駆け足で家に戻り朝食を仕上げてしまう。

 こうして考えてみるとなのはの夜の訓練に付き合うのも久しぶりだな。
 そんな事を考えながら家までランニングをして、下ごしらえしておいた朝食を作り食べる。
 メニューは白米、味噌汁、卵焼き、焼鮭、納豆、ほうれん草のお浸しの和食である。

 朝食を食べ終わると汗を流し、制服を着て、鞄を持って家をでる。
 勿論弁当も忘れない。
 ちなみに弁当は朝食の準備の際に一緒に作っておいた。

「いってきます」

 誰もいない家に挨拶をしてバス停に向かう。
 
 そしてバスの中でなのは、すずか、アリサ達と合流して学校に到着。

 それから一日の授業を終え、全員で翠屋に向かう。

 その時はあんなものがあるとは思ってもいなかった。



 テーブル席でのんびりとしている、すずかとアリサ。
 その席にホットのミルクティと出来たてのフィナンシェを持っていく俺。

 そして、フィナンシェを作った翠屋のパティシエである桃子さんは今日はどういう訳かなのはと共に更衣室に入っていった。

 それになのはが出てくるのがいつもよりも遅い。
 なにかあったのだろうか?

「シロ君、そんなに心配しなくても大丈夫だよ」

 首を傾げながら更衣室のあるバックヤードの方を見ていたせいか士郎さんにそんな事を言われた。
 桃子さんが一緒なのだから、心配する必要がないのはわかっている。

「はあ、でも大丈夫なんですか?」

 だが今日に限っては

「で、でも!!」
「大丈夫よ! 可愛いから!」
「だけど!」

 などなど更衣室からなのはと桃子さんの声が聞こえるのだ。

 一体何事なのか、心配するというよりも疑問の方が大きい。
 声から察するになのはが何かを拒んでるようだが

 すずかとアリサも俺と同じ疑問を感じているのか首を傾げて顔を見合わせている。

 それからしばらくして

「おまたせしました」

 にこやかな表情で出てきた桃子さん。
 そしてバックヤードから顔を少しだけ覗かせているなのは。

「さあ、なのは」
「う~、恥ずかしいよ」
「そんなことないわ。似合ってるもの。
 シロ君も見たいわよね」

 いきなり俺に話を振らないでください桃子さん。
 一体何が見たいのかわけがわからないです。
 わからないのだが

「見たいわよね?」
「えっと……」
「見たくないわけないわよね?」

 笑顔でこちらを見ているのだが、その笑顔が何よりも怖い。
 これって見たくないという選択肢がそもそも存在していないよな。

「……はい、見たいです」
「ほら、シロ君もこう言ってるんだから」
「う~……」

 顔を赤くしながらバックヤードから出来たなのは。

 なのはだがいつもと決定的に違う事がある。

 いつもお店に出るときに身につけている翠屋のロゴが入った黒のエプロンではなく、フリルがあしらわれた白のエプロンで、リボンは解かれ下ろされた髪に頭にはカチューシャ、黒のロングスカートのワンピース。



 一言でまとめるなら恥じらいに顔を赤く染めたメイド少女がいた。

「えっと、どうかな?」

 はにかみながらそんな事を尋ねてくる。

「ああ、よく似合ってると思うぞ」
「ほんと!」
「ああ、可愛い」
「うん。なのはちゃんととってもかわいいよ」
「ほんとよく似合ってるわね」
「えへへ」

 俺とすずかとアリサの言葉に安心したのか笑顔を見せてくれるなのは。

 周りのお客さんの反応を見ても上々のようだ。
 若干、危ない眼をした女性もいるが、これぐらいなら大丈夫だろう。
 この常連さんは俺を見る時も似たような眼をしているし

 それよりも疑問なのが

「桃子さん、なのはのアレは」
「可愛いでしょう」
「ええ、確かに可愛いですが、これから正式採用ですか?」

 今日だけのお試しなのかそれともこれからのなのはの制服として正式採用されるのかという点である。
 その問いかけに桃子さんは

「勿論!!」

 即答した。
 だが

「ええ!! 試作品だから今日だけお試しって言ったよ!!」

 桃子さんの断言に即座に反応するなのは。
 しかし世の中そんなに甘くはなかった。

「あら違うわよ。
 今日の所はお試しだから試作品でねって言ったのよ。
 サイズもデザインも申し分ないんだから一週間後には試作品じゃなくて正式なメイド服が届くから」
「だめです! そんなの頼んじゃ」
「さっき注文しちゃったわよ」

 早っ!!

 というかあれ?
 おかしくないか?

 サイズもデザインも問題ないってことは、なのはが今のメイド服を着て確認してから注文したんだよな?
 更衣室には電話はない。
 つまりなのはと一緒に更衣室から出てきてから俺達話している間にってことだが、いつの間にしたんだ?

「お父さんもなんか言ってよ」
「まあ、良いんじゃないか」
「だけど一人でメイド服は恥ずかしいよ」
「大丈夫よ。美由希の分も注文したから
 それにメイド服は士郎君と一緒の時でいいから」

 よほど気に入ったのか、なのはに絶対着せたいらしい。
 なのはが俺に縋るような見上げてくるが

「ごめん。俺じゃ力になれない」

 桃子さんには敵わない。
 なのはの髪を梳くように撫でながら謝る。

「う~、士郎君と一緒のときだけだからね」

 俺に撫でられながら仕方がないというふうに頷くなのは。

 というわけで翠屋に新たなメイドさんが登場した。
 もっとも美由希さんはメイドの話を知らなかったらしくメイド服が来てから必死に拒否したのだが桃子さんに却下されたのは別の話。
 
 とにもかくにもなのはのメイド服は俺と一緒のときだけとの事なのでその時は精一杯フォローしようと心に決めた俺であった。 
 

 
後書き
お待たせしました。

メイドなのは登場です。

来週はなのはと士郎の訓練、そしてその次は完全に私の趣味でミッドでのお話でようやくA's本編に入っていきます。
・・・本編はいるまで時間かけ過ぎな気もしますが

それではまた来週お会いしましょう。

ではでは 
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