レーヴァティン
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第三十五話 北の大地その一
第三十五話 北の大地
一行は防寒着をそれぞれだけでなく彼等の馬の分まで買い着て着せてだった。そのうえで島の北部に入ったが。
北の見渡す限り白く雪が降り注ぐ大地を見てだ、久志はこんなことを言った。
「聞いた通りだな」
「かなりのものでござるな」
進太が久志に応えた、一同は今は馬に乗らず馬を曳いて歩きつつ住んでいる。
「この寒さは」
「ああ、雪ばかり降ってな」
「防寒着を着ていてよかったでござる」
「若し着てなかったらな」
その防寒着をというのだ。
「それこそな」
「拙者達は凍えていたでござる」
「それで凍死していたな」
「そうなっていたでござる」
「だよな、しかも馬に乗ってるとな」
そうしていればというと、普段の様に。
「動かないからな」
「その分身体が冷えてでござる」
「凍えるな」
「そうなるからでござる」
「こうして歩いてるんだな」
「そうでござる、しかも馬に乗っているとでござる」
進太はその場合についてさらに話した。
「馬に負担がかかってでござる」
「馬が体力を消耗してな」
「馬が寒さに耐えられなくなるでござる」
「何かそんな話あったな」
「ナポレオンですね」
久志が今馬に乗らない理由について記憶の何処かに引っ掛かるものを感じたその瞬間に順一が言ってきた。
「当時のフランス軍です」
「フランスの話だったか」
「当時のフランス騎兵は行軍中も馬に乗っていました」
「戦争の時だけじゃなくてか」
「その分馬が体力を消耗してです」
「倒れていったんだな」
「はい、そしてロシアとの戦争の時は」
寒いロシアではというのだ、今彼等がいる銀世界の様な。
「馬は余計に体力を消耗し」
「倒れていったか」
「それまでの戦争で馬もかなり消耗していましたが」
それに加えてというのだ。
「ロシアとの戦争の時は」
「余計にか」
「消耗しフランスいえフランス自体がです」
「馬が足りなくなったんだな」
「そうなりました」
「そうした話だったか」
「人間は重いです」
その体重がというのだ。
「普通の荷物よりも」
「っていうか人間自体が荷物だよな」
「その通りです、何十キロもある」
「そんな荷物を乗せて何時間もとかな」
「馬にはかなりの負担です」
「だよな、しかも極寒の場所だとな」
ロシアや彼等が今いるその極寒の雪原地帯ではというのだ。
「余計にだからな」
「馬に無理はさせられません」
「そうだよな」
「はい、私達が身体を冷やさない為にもです」
「俺達自身で歩くべきだな」
「こうした場所では」
極寒の地ではというのだ。
「そうしていきましょう」
「そうだな、あとな」
「カイロ役に立ってるかな」
源三が笑顔で言ってきた。
「どうかな」
「錬金術で造ったあれだな」
「そうそう、それね」
「まさかこっちの世界でもあるなんてな」
「というかあちらの世界のをモデルにして造ったんだよ」
使い捨てカイロ、それをというのだ。
「そうしたんだよ」
「こうした時に備えてか」
「そうそう」
実際にというのだ。
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