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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第七章 C.D.の計略
  暴君の城塞


『呉木田を発見しました!!桜田通りを、東京タワーの方面へ向かっています!!』

無線からしてくる、警官の報告の声。
それを受けて、巧たちはバイクを走らせてその方面へと向かっていた。


一方、呉木田はパトカーの追跡をものともせずにバイクを駆らせていた。
やってやる、やってやると、自分に言い聞かせるようにつぶやきながら。



そしてついに、呉木田が目的地にたどり着いた。


「っしゃぁ!!やってやるぞォ!」

「止まれ呉木田!!」

バイクを降り、気合い一発と吠える呉木田。
その呉木田を止めようと、先んじて止まっていたパトカーと、追ってきたパトカーとが彼を囲んだ。


それを見回し、呉木田はその状況を楽しむかのように顔をゆがませる。


「おぉぉおお!!来いよ!!邪魔してみろよ!!俺はもう止まんねぇからな!!何もできねぇとか、言わせねぇーからなァ!!!」

そう言って、拳銃を向けられているにもかかわらず悠々とタワーへと歩いていく呉木田。
しかし、警官と言えどもいきなりの発砲をするわけにもいかず、五人ほどがその身柄を確保しようと掴み掛かっていった。


だが、呉木田はそれを見て即座にオルフェノクとなり一人一人掴みあげてはブン投げた。
一人また一人と、宙を飛び、パトカーのボンネットを潰し、又は受け止めようとする仲間に飛び込んでいった。


「邪魔ァ、すんじゃねーよ!!」

「邪魔してみろと言ってただろうお前!」

「そりゃ意気込みの話だ。実際やられてうれしがるマゾじゃねーんだよ!!」

スッスッ、と、取り出したスマホを操作してタッチしていく。

ロック画面を解除し、画面の四隅をタッチ。
それらをつないでいき、真ん中に現れた《ready》の文字。

そして、縁の「ENTER」のボタンを押すことで、変身待機状態へと移行した。


《standing by――――》

ギュゥンギュゥン・・・と待機音がなり、そしてそのスマホを左手に放りパスして叫んだ。


「変身!!」

シュコッ

《complete》

そして、ベルトに挿入。
そうすることで、ベルトから全身にフォトンストリームが走り展開されていく。

今度は、端っから銀のフォトンブラッドだ。
ベルトから上下各二本ずつ伸びたそれらは、それぞれ肘と肩に向かっていき、四肢の先端まで回っていく。

さらに胸のところを二辺ずつ、ガチィ、ガチィ!!と直角を描いて、正方形のラインが完成した。


そして最後に、銀の光と共に装甲が展開された。
東京タワーの輝かしいライトアップを背景に、銀のライダーがその戦闘の意思を表した。


拳をボキボキと鳴らし、準備を終えた呉木田は、自分のバイクを掴んでそれを片手で引き摺りながら、東京タワーの麓へと向かっていく。

その背中に向かって、ついに発砲する警官数名。
だがダメージはなく、火花が少々上がったくらいで終わる。

そして、一気に振り返って引き摺っていたバイクを後方のパトカーに向かって放り投げた。


ドガシャァ!!という音がして、直後警官がパトカーから離れると、それは轟音を立てて爆発して、周囲に炎を撒き散らしてその場を照らし出した。
そして、タワーへとないも足を進め、邪魔なパトカーを押し蹴りで退かしてそれをひしゃげさせる。

バシッ!!と、スマホ――――名前を付けるのならばスクエアフォンから、このライダーの強さの源ともいえるマーカーを、タワーの足の一本に打ち込んだ。
そこから、さらに反対側の足に向かって一発。左の足にもう一発撃ったところで、彼の名が呼ばれて振り返る。


「呉木田ッ!!」

「お前、何しようとしてんだ!」

背後に現れたのは、巧と翼刀。
三原と海堂は、検問を回っていたのでまだここに来るまで時間がかかる。

その二人は、バイクで炎を飛び越えてここまで来て、停車と同時にその背中に叫んでいたのだ。


それに対して、クルリと振り返った呉木田は

「何をだってぇ?何もできねぇとか言ってたくせに、俺に何かできると思ってんのかぁ?」

「・・・・は?」

「何をするつもりかだと!?さっきまでお前は何もできないだとか何とか言いながら、今度は何かできるとでも思ってんのか!?お前らの、そういう一方的に「出来る」「出来ない」の言葉になァ・・・・俺ァずっとずっといらだってんだよ!」

そんなことを叫んで、バッ!とこちらに手を向けてきた。
すると、そこから発せられたエネルギーが二人の足元でスパークし、近づこうとする二人を遠ざけた。


「勝手なこと言いやがってよ。お前ら人の評価できるほど偉いのかよ!!頑張って頑張って、それでダメな奴だっているのにそれを「お前は屑だ」と切り捨てられる奴の気持ち、わかんのか?あぁ!?」

「・・・・劣等感、か」


呉木田の叫びは、彼の行いやそれとはともかく、まっとうなものでは一応ある。


結果は大事だ。
だがすべてではない。

しかし、満足するそれを出せないとわかるや否や、イコールそれはだめな奴というレッテルを張られる社会。

呉木田は、そんな社会や教育の被害者だとも言えるのかもしれない。


そんな彼に、巧は言葉を漏らす。


「そう・・・だよな・・・・」

「あん?」

「がんばって頑張って、それでダメだった瞬間に全部否定される。そりゃあつらいよな・・・・」


彼の経験がある。
というのも、もともと彼は人付き合いのいい人間ではなかったことが原因であった。


今でもそうだが、乾巧は人付き合いが苦手だ。
悪い人物ではなく、むしろいい人なのだが、かかわり方が下手なために誤解を生むのが多かったのだ。


しかも、それが学生時代からともなるともはや致命的なものとなる。

自分の意思が伝わらず、幾度となく拒絶され、拒否された。
スパっ、と割り切れればいいのだが、彼は引きずる人間でもあるため、更にウジウジして好転などしなかった。


種類は違う物の、何か言葉にすることのできない鬱憤やイラつきという点では、巧は呉木田を少しは理解していた。
そしてだからこそ、彼は呉木田に声をかける。



「お前、これ以上暴れてどうするんだよ!!このままじゃ、結局言われっぱなしの通りになっちまうんだぞ!!」

「あぁ!?」

「屑だのバカだの言われてよ!それで、そのままで終わっちまうって言ってんだ!!」

「・・・なるほどな。あんたも同じ感じの境遇だったってか?」

「そうだ。だから、お前のやっていることが無駄だってことも、わかってるつもりだ」

「そうかい・・・・だったら当てが外れたなァ!!!」

バシュッ!!と、タワーの四本足の最後の一本にマーカーを打ち込むスクエア。
そして、フェンスを捻り開けてその足に右足を乗せて見返すように大声で叫んだ。


「俺はな、何もできないままで終わるつもりはねぇ!!すげえでっけぇことやり遂げて、俺は「やる奴だ」ってのを、見せてやるのさ!!」

「それがどんだけバカなことでもか!!」

「やめろ!!それ以上やっても、何も変わらない!!」

カンカン、とタワーを上っていくスクエア。
そのスクエアに声をかけていく二人だが、やれやれと首を振って彼は意にも介さない。



「なあ、テレビとかで見る「無謀な挑戦」的なビデオよォ。あれ、なんで毎回人気かわかるか?」

「なに?」

「見るたびにコメンテーターとかがよォー「なんであんなことするんですかね?」とか「危ないじゃないですか」とかいうけどよォー、それでも人はその姿にドキドキして憧れるだろぉ?それが何でか知ってッか?」

「・・・・・何故だ」

「簡単さ!!出来ねーとタカをくくってなめてるからだ!!出来るわけねぇ。やれるわけねぇ。そんなこと、成功するwけねぇじゃねえかと、お前には無理だと舐め腐ってんだ。だけど、それをやらかした瞬間に「すげえすげえ」って騒ぎだす。出来ないって言って悪かったっていうみてぇーにな!!」



「あれを通して、スリルを楽しんでんじゃねーよ。人間の限界だとかそんなくだらないこと見てんじゃねーよ。あれを見る人の気持ちはな「出来るわけねぇだろ」っつー舐めた考えと、それをぶち壊してくれる「バカ野郎」が見たいからなんだよ。世の中はなァ、とんでもないことしでかすバカが大好きなんだよ!!」


そう言って、バン!!と一気に跳躍してタワーの天辺付近まで跳び上がるスクエア。
そして、その頂上のアンテナに手をかけて更に叫んでみせた。


「さあ見てろよこの俺を舐めてやがったクソッ垂れ共!!俺のやることにビビって驚き平伏しやがれ!!!」

グヴォォン・・・・!!!

「な、なんだ・・・・?」

突如として響く、重々しい何かの起動音―――のような何か。
腹の底から響くような、重々しい音だ。


翼刀はその場の力の圧を感じ取っていたが、巧は別のものを見ていた。

スクエアの手だ。
その手が掴んでいるアンテナが、段々と銀色に光って輝きだしている。

更に、その光はラインとなって東京タワーを走り廻っていき、それはまるで変身するときのあれでもあり―――――


「ヤバい!!あの野郎、ここら辺全域の人間をオルフェノクにする気だ!!!」

「んな!?」


スクエア―――呉木田は、アークオルフェノクの因子を最も濃く継いだ男だ。
それに加えて、スクエアの爆発的なフォトンブラッドのエネルギーがあれば、このタワーを覆うことは可能だろう。

そして、このタワーは電波塔だ。
そこからもし、そのエネルギーを撒き散らし、さらにそこにオルフェノクの因子が混ざるとすれば、それを体に受けた人間がどうなるかは考えるまでもない。


耐えたとして、人間でなくなる。
耐えられねば―――大半の人間はそうなるが、灰となって消滅する!!



「ふざけんな!!」

「呉木田・・・あれだけ言ってお前がまだそのつもりの、ホントのホントにバカだってんなら、俺はもう容赦はしねぇぞ!!!」

ピッピッピッ《5,5,5―――standing by》

「変身!!」

《complete》

ギィーン!!と、全身をフォトンストリームが走り、巧の身体がファイズへと変わる。
スクエアは対照的な、なめらかな流れのフォトンストリーム。

ビッ!と右手を払い、アクセルメモリーをファイズフォンへと差し込んだ。
装甲がガシュウとせり上がり、アクセルフォームへと移行して、さらにミッションメモリーをセットしてファイズポインターを足に取り付ける。


「行くぜ」

《start up》

グオングオングオン・・・・・

「ハッッ!!」


翼刀の隣から、ファイズの姿が消えた。
超高速で走り出した彼の足は、即座に東京タワーの鉄骨に接地し、そのなだらかな斜面を駆け上がっていく。


さらにその速度は上がり、重力を無視して、ほぼ地面に直角となったそこをも走破してスクエアへと肉薄していき


「はっ!!」

「ッ、ぉお!!」

目の前でポインターを打ち込み、即座に背後に回った。

目の前に突如として出現したそれを、スクエアはバチンと腕の動きで弾き破壊する。
だが、背後からさらに二本三本と撃ち込まれ、それらの対処についに追い付かなくなった瞬間


「ダァああ!!」

「ぐぉぉお!!」

ファイズの、アクセルクリムゾンスマッシュが炸裂した。
無数に突き刺さるポインターと、ファイズに叩き込まれるエネルギーに、スクエアの身体がガクガクと揺れていく。

だが、おかしい。
このライダーは、装甲に触れた瞬間に爆発するような、そんな反撃型のライダーではなかったか――――!?


「溜めてんだよぉ・・・それによ、これだけ力ばらまいてんだから、そんな爆発、いちいち起こせるわけねぇーだろォーがよ!!」

バガァッ!!とファイズアクセルの、無数のポインターが純粋なパワー負けをして弾かれる。

スピードがあるからと言って、一発一発が軽いわけなどない。
これは、ノーマルファイズのクリムゾンスマッシュが、見た通りの回数分叩き込まれる技。


にもかかわらず、その数回分のそれをこのスクエアは持ち前のパワーのみで打ち砕いて見せたのである。



「何も考えてないバカだとでも思ったか?それくらいのこと、考えてんだよ!!」

バキィ!!と、宙に浮くファイズをスクエアがぶん殴り、その身体が真下へと落ちていく。



ズチャッ、と着地するファイズだが、アクセルフォームはすでに解除された。
あの場まで一気に行く方法は―――――


と、そこで再び、ファイズは見た。
自分のキックによっておこる筈だった、スクエアの爆発。
加えて、その喰らったダメージ。

それらは一体どこに行ったのか。
その答えが、見えたのだ。



東京タワーを覆う、フォトンストリーム。
それはまるで、ライダーズギアで変身したライダーの様でもあるという感想。


それは、全く持って間違ってなかった。
むしろそのままだ。

この東京タワーは今、スクエアの固有武装であり、スクエアそのものでもあるということ。

そして、ぶち込まれたダメージや、放つはずだったエネルギーが、ファイズの者だった赤い閃光となって、フォトンストリームを走ってファイズと翼刀の目の前の鉄骨へと滑り落ちてくる――――!!



「離れろ!!」

「グッ・・・ぉおお!?」

ドォオン!!


赤い閃光が銀のラインを走って落ちてきて、そして地面で爆発した。
その爆発はすさまじく、ヴァルクヴェインを使って一気に飛翔しようとしていや翼刀や、身構えていたファイズの身体を木の葉のように吹き飛ばすほどの威力があった。


ブンブンと頭を振って立ち上がる二人。
だが、すでに間に合わないのか。


タワーを覆うフォトンストリームは最高の輝きを灯し、タワーの先端からは銀の光子がばらまかれ始めている。


「ガッ・・・」

「ぅぐ・・・くる・・・し・・・・」

「げほっ!!ガは・・・」


街中で、次々に被害が広がっていく。
まだ完全に変異が始まっているわけではないが、時間の問題だ。

おそらく、この被害は東京中に広がっている。
もしかしたら、電波に乗ってさらに広がり、この世界全体にまで―――――!!!


「よせぇえええええ!!!」

それをみて、鉄骨を駆けだす翼刀。
振るわれたヴァルクヴェインの無数の刃が、一騎にスクエアへと飛来する。

だが、距離がありすぎだ。
スクエアのもとに到達することには、それは銀のフォトンストリームに阻まれる程度の威力しかない。


翼刀とファイズの額に、冷や汗が流れる。
まさか、この男がこれだけのことをしでかすとは。

間違いない。
こいつは、オルフェノクの王としての力を、十分すぎるほど有している――――!!!


その呉木田の脅威のパワー。
そして、スクエアギアの驚異のスペック。

さらに、この男が考えているのかどうかは知らないが、この地形。

一度打ち払われてしまえば、連続攻撃をするには困難だ。
遠距離で攻撃しようにも、この距離では先ほどの刃と同じ結果。



このままでは、被害が広がる。
翼刀が、タワーごと切り倒すかと剣を握って力を込めた。

その後の、倒れるタワーなども大変だが、この際四の五と言ってはいられない!!!


と、その瞬間



――――――ォォオオオオオ!!

「んあ?ぁぁああああんんじゃありゃぁ!?」

ドォオンッッ!!!

どこから飛んできたのか、虹色の砲撃が飛来してきた。
それは東京タワーのてっぺんにいたスクエアを掠めて通り過ぎ、タワーのその部位を抉り取ってそのまま消滅する。


スクエアは直撃こそしなかったが、体勢を崩してその場から展望台の屋根の上まで落下していった。
背中を打ち、息が吐き出され苦しそうに身もだえるスクエア。

瞬間、タワーの輝きが鈍くなり、怪電波の発信は止まった。


何だ!?と、翼刀もファイズも振り返るが、その方向には何もない。
ただ、武道館から煙が上がっているのだけが、遠目に確認できる。

ともかく、今は呉木田の確保だ。



幸か不幸か、このまま放っておけば何をしでかすかわからないほどの評価を得ることができた呉木田は、翼刀とファイズから見て脅威とみられるほどにはなった。

そうして二人が昇っていき、展望台の屋根の上のスクエアを見つけ、起き上がらせて身柄を拘束しようとした。


だが、そうはうまくいかなかった。
先ほどスクエアにとって良くないことが起きた用に、今度は彼らにとって良くないことが起こったのだ。


バァンッッ!!という凄まじい音と共に、遠くの方からドラゴンが飛翔してきた。
そのドラゴンは、フォトンブラッドの輝きかエネルギーかに惹かれて、東京タワーの上にズンッ!と陣取って炎を吐き出す。


ぐらぐらと揺れて、体勢を崩す二人。
瞬間、スクエアが二人の足を払ってその場から突き落とした。

ハァ、ハァ、とタワーの足に手を合ててエネルギーを繰り込むスクエア。
その上部には、自分を追ってくる二人のライダーを睨みつけるドラゴンワーム兇暴態。



「なんだありゃぁ!?」

「ドラゴン・・・・?それにあれは、天道さん!?」


マシンに乗って飛んできたカブト、ガタックを確認し、ファイズと翼刀もまた、武器を握り締めなおす。



戦いはこれからだ。
敵は一人と一体。


城砦を得た暴君と、巨躯を誇る邪竜。



二人のライダーの物語が、交差した。






to be continued
 
 

 
後書き

はい!!
ここで、ファイズ編とカブト編が混ざります。

なんかMovie大戦の2010見たいっすね!!

こうやって見ると、スクエアっつーか呉木田って成長率はすげーっすね。
いやまあ、結局やられてますがwwww

挫けずに頑張ってれば、彼もまだまっとうにはなれたんでしょうがねぇ・・・・



翼刀
「次回。仮面ライダー×仮面ライダー カブト&555 MOVIE大戦・・・・なんだろう?」

ではまた次回


 
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