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ドリトル先生と春の花達

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第十一幕その九

「本当にそれぞれのチームを愛しているからね」
「その愛情が過ぎていても」
「全力で応援出来て」
「それで応援に打ち込める」
「だからなのね」
「そう、それが出来るってね」 
 本当にというのです。
「凄く幸せなことだよ」
「そういえば詠うそのお顔も明るいし」
「お茶も桜餅も楽しんでるし」
「何だかんだで和気藹々としてるし」
「幸せみたいね」
「他人に迷惑をかけない幸せならね」 
 それならというのです。
「いいんだよ」
「あの兄妹はちょっと怪しい感じだけれど」
「迷惑かけてそうな」
「けれどそれでもね」
「幸せなのは確かね」
「願わくば落ち着きという徳分を備えて欲しいけれど」
 兄妹にはというのです。
「けれどね」
「それでもだよね」
「幸せなのは確かね」
「愛するチームがあって戦力で応援出来て」
「そのことだけで」
「僕はそう思うよ、さてお茶も飲んだし」
 後でお代わりはするつもりです。
「また詠もうか」
「そうしようね」
「また一首詠おう」
「それで終わりまで詠って」
「そうして楽しんでいきましょう」
「今日はね」
「そうしようね」
 先生は笑顔で応えてそうしてでした。
 再び歌を詠いました、目の前の兄妹がどんどん詠っていくのを観ながら。
 そして和歌会が夕方に終わった時にです、会場を出たところでまた皆に言われたのでした。
「入賞しなかったね」
「参加賞は貰ったけれど」
「それだけだったね」
「優勝した人は文学部の教授さんで」
「和歌を専攻だったし」
「しかも歌人としても有名って」
「そんな人だったし」
 皆は残念そうに言います。
「他の人達も凄くて」
「勝てる筈なかったね」
「先生も頑張ったけれど」
「入賞出来なかったわね」
「入賞はいいよ」 
 別にと返した先生でした。
「最初から考えてなかったしね」
「そっちは興味なかったのね」
「先生としては」
「特にだね」
「そちらのことは」
「そうだよ、本当にね」 
 このことについてはというのです。
「最初から考えてなかったよ、それよりもね」
「和歌を楽しめるか」
「そのことが大事だったのね」
「先生にとっては」
「そうだったのね」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「僕は満足しているよ、充分詠えたし」
「桜も奇麗だったし」
「和歌会の雰囲気も全体的によかったし」
「お茶も桜餅も美味しくて」
「それでなのね」
「うん、もうね」 
 それこそというのです。
「満足だよ」
「そうなのね」
「じゃあこれでなのね」
「満足して帰って」
「お休みね」
「そうしよう、さて明日はね」
 先生はにこにことして明日のこともお話しました、夕暮れ時の学園の中を皆と一緒に歩きながら。 
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