ドリトル先生と春の花達
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第十一幕その八
「縦に横に」
「特に巨人戦だと」
「あの応援を観ていたら」
トートーも思うのでした。
「どれだけ巨人への敵愾心が強いかわかるよ」
「それは阪神だけじゃないんだね」
老馬は女の子を見つつしみじみとしたお顔で言いました。
「広島もなんだね」
「いや、猛虎魂っていうけれど」
ガブガブも思いました。
「巨人に対してはそれが別格だね」
「もう負けた時なんてね」
ダブダブもその時の荒れ様を知っています。
「大惨事だから」
「あの有様を見るとね」
「フーリガンだよ」
オシツオサレツが二つに頭で言いました。
「まさにね」
「そのものだよ」
「暴れるのはよくないよ」
例え巨人に負けてもです、先生は紳士として言いました、
「そうした時こそ我を忘れない」
「それが大事だよね」
「どんな負け方をしても」
「例えそれが続いても」
「それでもよね」
「そうだよ、折角負けても華があるチームなんだよ」
阪神はそうしたチームだからというのです。
「それで負けて荒れるとかね」
「やったら駄目だよね」
「負けて荒れるなんて」
「まさにそうした時こそ落ち着く」
「紳士はそうあるものね」
「そう思うよ、そこはしっかりしないと」
負けた時こそ自分を保ち礼節を守らないといけないというのです。
「駄目だよ、僕も気をつけてるしね」
「先生はそこはしっかりしてるね」
「いつも紳士だよ」
「穏やかで礼儀正しくて」
「例え阪神が巨人に負けても」
「それでもね」
「そう、そもそも阪神はいつも何かがあるチームだからね」
このチームの宿命でしょうか。
「肝心な時にアクシデントやミスやそこからの敗北とかね」
「本当にいつもだよね」
「阪神の場合は」
「毎年みたいにそうで」
「中々優勝出来ない」
「そうしたチームよね」
「そのこともわかってね」
そのうえでというのです。
「やっていかないと駄目だよ」
「その通りだね」
「このことも分かって応援しないと」
「大きな心で応援する」
「それが大事だね」
「僕もそう思うよ、それと和歌もね」
兄妹もそれはしていますが。
「ああして鬼気迫るものじゃないと思うけれどね」
「和歌というか野球?」
「そっちへの情熱が動いてる?」
「それもかなり」
「そうなってるわね」
「それはね」
どうにもというのです。
「和歌の普通の楽しみ方じゃないかもね」
「だからだね」
「もっと落ち着いてだね」
「平常心で詠っていく」
「そうあるべきね」
「僕はそう思うよ、スポーツの観戦は紳士の嗜みだよ」
それこそ観劇の様にというのです、先生はそうしたことは余裕を以て勝ち負けではなくスポーツ自体を観て楽しむべきだと考えているのです。
「だからね」
「歌にするにしても」
「落ち着いてなのね」
「紳士的に」
「そうあるべきね」
「僕はそう考えているよ、ただ彼等は幸せみたいだね」
またそれぞれのチームのことで言い合っている二人を見ての先生のお言葉です。
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