ガンダム00 SS
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ep16 アルケーガンダムVSガンダムアストレアF
前書き
16話は対ガンダム戦ですが、2機ともパイロットはCBとは言い難い極悪人です。
漆黒の宇宙で2つの赤いMSが衝突を繰り返している。1つは大型の実体剣と無線誘導兵器を装備した機体ーーアルケーガンダムで、もう1つは頭部にセンサーマスクを被せた軽装の機体ーーガンダムアストレアFだ。
どちらも赤いGN粒子を放出しているが、アルケーのそれはさらに禍々しい色をしている。
パイロットのアリー・アル・サーシェスはモニター越しに敵へ向かって叫んだ。
「ハハッ、面白えなあ!どこのガンダムだテメェ!」
無論、通信はオンにしていないので相手には聞こえない。だがサーシェスはそう言わずにはいられなかった。
雇用主ーーリボンズ・アルマークから渡された任務。偽情報で誘き出された敵を戦闘不能にする。生身では活かされない、命をすり減らすようなギリギリの楽しい戦いはサーシェスの本分だ。
そして、やってきた対象は擬似GN粒子をエネルギー源とする所属不明のMSだった。マスクをつけているが、サーシェスには一目でガンダムだと分かった。
戦闘が始まってすぐに、サーシェスは敵がかなりの手練れであると悟った。彼自身、腕には自信を持っていたが、敵はこちらの攻撃を見事に回避し、その上で反撃の手を打ってきた。
ーー互角か。この俺についてくるとは。
機体は被弾していないが、GNファングは2つ破壊されている。敵はビームサーベルで強引に切り落としたのだ。
ーーファングがやられたのはクルジスのガキくらいだ。野郎と同じくらいの腕ってことか。
サーシェスは心底楽しいとばかりにゲラゲラと笑った。
「おうよ、そうこなくっちゃなあ!」
アルケーからGNファングが4機射出される。それらはビームを発しながら、歪な進行でアストレアFに迫っていく。
アストレアFのGNシールドがファングの攻撃によって粉々になる。敵パイロットがファングの破壊に意識を向けているのをサーシェスは見逃さなかった。
「くたばりな!」
アルケーがアストレアFに急接近し、GNバスターソードの先端を相手の胴体目がけて飛ばす。アストレアFは左手のビームサーベルを発現させ、迎撃の姿勢を取った。
その動きこそ、サーシェスの狙ったものだった。
GNバスターソードの突撃が紙一重に躱された瞬間、アルケーが強引な制御によって動きを止めた。それから右足のつま先からビームサーベルを発生させ、逆上がりのイメージで敵の左腕を下から切り落とした。
アストレアFは、背中を見せた敵に近距離でビームライフルを向ける。だが、それをサーシェスが予測しないはずがない。
「左足にもあるんだよ!」
左足のつま先からもビームサーベルを発生させたアルケーは、逆さまの状態から左足を捻り、敵の頭部の切り落としにかかる。だが、アストレアFは後ろに飛んでその攻撃を避けた。頭部の直撃こそ避けられたものの、敵のセンサーマスクは刃先に焼かれる。ガンダムフェイスが顔を覗かせていた。
次いでアストレアFはビームライフルを連射した。サーシェスはそれを左腕のGNシールドで受け止め、GNバスターソードによる攻撃を再度仕掛ける。
胴体を斜め切りする攻撃を、アストレアFはビームサーベルで受け止めた。とはいえ、推進力と武器の能力差では勝ち目はないだろう。
そのとき、敵から音声通信が入った。サーシェスはニヤリと笑い、その通信を開く。
その途端、ヘルメットに敵の声が響き渡った。
『あげゃげゃげゃげゃ!イノベイターの手下になっているとはな。偽善の世界統一に協力してるのか?』
耳をつんざくような笑い方が特徴的な、若い男の声だった。サーシェスはその笑い声に心当たりがあった。ただ、名前と顔は思い出せそうにない。
「大将からテメェを動けなくするように言われてるんでね、サービス増しでぶっ殺してやるよ!覚悟しな!」
それでもサーシェスがやることに変わりはなかった。敵を潰す。相手が誰であろうが、傭兵は仕事をこなすだけだ。
そのとき、アストレアFのビームサーベルが消えた。敵に重心をかけていたアルケーは前のめりになる。
「何ッ!」
真横には片腕を失った敵機体がおり、サーシェスはすかさず機体を敵から離す。
だが、敵はすぐに対応してきた。腰部に装備していた武器がいきなり飛び出してきたのだ。アルケーはGNバスターソードを手放し、両手でその武器を掴んで推進力を落とす。
球体にトゲが生えた、見たことのない武器だった。ハンマーみたいな形をしている。
すると、そのトゲはGN粒子の輝きを発し、突然真っ直ぐに長く伸びた。その威力は想像以上に高く、ほぼゼロ距離にいたアルケーの機体にぶっ刺さる。
「ッ!テメェ……!」
ビームで作られたトゲがアルケーの両肘から下を破壊する。幸い胴体への直撃はなかったが、GNファング収容コンテナが破損していた。これでは戦いにならない。
サーシェスは舌打ちし、敵のガンダムを睨んだ。ガンダムフェイスを覗かせた敵の右腰にあるハンマーはすでに元の形状に戻っている。
敵から再び通信が入った。
『お前の大将に伝えておきな。イノベイター風情が人間の営みにしゃしゃりでるなってよ。あげゃげゃ!』
「そう言うテメェこそ、この世界にとっては邪魔な存在じゃねぇのか?元テロリストさんよぉ!」
『どうやらオレを少し思い出したみたいだな。だがその方が絶対に面白い……。あげゃげゃげゃげゃ!』
敵は最後まで奇怪な笑い声を上げ、宙域を離れていった。サーシェスは長い息を漏らすと顔をしかめる。
「チッ。せっかくの獲物を仕留め損なった。……それにしても」
サーシェスは仕事を完遂できなかったことよりも相手の素性が気になった。
ガンダムに乗っていたあの男は確実にサーシェスのことを知っている。元テロリストだとも認めた。恐らく、過去にサーシェスと同じ仕事をしたことがあるかもしれない。
「野郎、またどこかで会ったら今度こそ確実に潰してやる」
相手もまた、この先どこかで会うことを想像していたようだった。だからサーシェスは次の接触に期待することにした。
しかし、この先2人の男が戦場で出会うことは一度もなかった。
終
後書き
ガンダムアストレアFに搭乗するフォン・スパークはリボンズ・アルマークによる妨害を度々受けていたことが公式エピソードで描かれています。彼が差し向けたのがサーシェスでも不自然ではないかと思い執筆しました。まあ、悪人同士を戦わせたかったというのが本音ですが(笑)
とはいえ、この2人は1stにて実際に交戦した記録があります。詳しくは外伝『00F』に掲載されているのでご参照ください。
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