レーヴァティン
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第三十二話 六人目の手掛かりその一
第三十二話 六人目の手掛かり
一行は進太が紹介してくれた鯉が美味い店に入った、出て来た鯉料理はムニエルにカルパッチョ、切り身のフライに丸ごとオリーブオイルと白ワインでトマトやガーリックと一緒に煮たものだ。鰻は煮凝りや切り身を焼いたものだった。
その鯉や鰻を食いつつだ、久志は進太に言った。
「こうした鯉の食い方もあるんだな」
「美味しいでござるな」
「ああ、ただな」
ここでだ、久志はカルパッチョを見て進太に不安げな顔で小さい声で囁いた。
「ただな」
「カルパッチョはござるか」
「生だからな」
だからだというのだ。
「そこがな」
「安心して欲しいでござる」
「大丈夫か」
「冷凍して氷の中に入れてでござる」
そうしてというのだ。
「丸二日置いたものでござる」
「そうした虫がいてもか」
「完全に殺しているでござるよ」
「だといいけれどな」
「川魚でござる」
進太も久志の心配の基が何なのかわかって応えていた。
「だからどうしてもでござる」
「そういうのが怖いからな」
虫のことはあえて言わなかった、食事中だからだ。
「そこはこのお店もか」
「魔術師殿に頼んで、でござる」
「氷の術で魚をカチコチにしてもらってか」
「冷凍保存も兼ねて」
そうしてというのだ。
「そうした心配もなくしているでござる」
「いいことだよ、俺は刺身とかカルパッチョ好きだけれどな」
「川魚の生は、でござるな」
「子供の頃親に言われたんだよ」
「危ないと」
「そっちの問題でな」
虫がというのだ。
「鯉にしても鮒にしてもな」
「そうです、淡水魚はどうしてもです」
順一はフライを食べそれを肴に白ワインも飲みつつ話に入った。
「それが問題です」
「そうだよな」
「下手をすれば命に関わります」
「それ親に言われたよ」
「ですから生で食べる時は」
「相当に注意してだな」
「召し上がるべきです」
「何か肺魚とかはな」
正はこの熱帯の魚の話をした。
「相当危ないらしいな」
「肺魚ってあの細長い」
「あの魚だよ」
源三にこう返した。
「如何にもまずそうで実際に食ったら凄いまずいらしくてな」
「しかもなんだ」
「そうらしいんだよ」
そちらの心配もあるというのだ。
「酷いだろ」
「まずくてそれだとね」
「どうしようもないよな」
「食べるお魚としてはね」
源三もこう返した。
「最悪だね」
「大戦中日本軍の人達も食って」
「食べるものがないから」
「後でえらいことになったらしい」
「火を通してもそれが生半可だとね」
「あたるからな」
「そうなるね」
「ああ、だから鯉もな」
肺魚程でないにしてもだ。
「そうしたところが怖いんだよ」
「三国志の陳登とかね」
呂布を倒す時に出て来る徐州の有力者で劉備を慕っている、その後徐州が曹操の勢力圏になった時に曹操の配下となる人物だ。
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