魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
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真・四十七話 少女の覚悟
「なんで……?」
全は、その場に座り込んだまま一歩も動けなかった。
自分はまた失敗してしまったのか、そんな気持ちを抱きもう終わろうか……と心のどこかで思ってしまった。
しかし、アリサとすずかが来てくれてしかも彼女達は神憑きとなっていた。
だが、本当は止めたかったのだ。彼女達は戦いとは無関係。戦う意味はない。
しかし、彼女達は止める間もなく全を守る為に管理局員と戦っている。
「や、止めろ!!」
全は止めろと叫ぶが、それでも戦いを続けるアリサとすずか。
聞こえている筈なのに二人は戦う事を止めない。
「二人が戦う理由はないだろ!?俺なんか守る価値なんかないんだ!!」
「「っ!!そんな事ないっ!!」」
「「「「きゃああぁぁぁぁ!!!??」」」」
二人は激昂し、その余波で彼女達を囲んでいた局員たちが吹き飛ばされる。
「全!!守る価値のない人間なんかいない!!」
「それに全君は何度も私たちを守ってくれた!自分達を攻撃していたるいちゃん達を守って散った事もあった!!」
「っ……な、なんでそれを……」
すずかの言葉に全は驚くしかなかった。
確かに劫の眼が見せた未来の映像で、アリサやすずかが戦いに巻き込まれそれを庇って死んだ事もあった。それにやりすぎだと言ったるいに対して非殺傷設定を解除したままで斬りかかった聖の攻撃からるいを庇った事もあった。
だが、それを知るのは自分だけの筈なのだ。なぜならありえた未来での光景なのだから。
だというのに、なぜ彼女達は知っているのか。全はそこに疑問を感じた。
「私たちはね……全君、貴方と同じなの」
「お、なじ……?」
「そう。あたし達は未来の……………うぅん、可能性の潰れてしまった未来のあたし達から託されたの」
「託されたのは二つ……一つはこの人達……アーポロとルナーラ」
「もう一つは……」
そこまで言ってアリサとすずかは顔を見合わせると同時に振り返り
「「全君を好きで、そして傷ついてしまう全君を守りたいという、温かな気持ち」」
「二人、共……」
そこで全は悟った。彼女達も何らかの方法で自分と同じ可能性の未来から来たのだと。
そして、そこまで自分は必要とされてきたのだと。
そこまで考えて、全は不意に意識を手放した。
アリサSIDE
「っ、全!?」
戦いながらも後ろに意識を向けていたあたしはすぐに気づいた。全が意識を無くした。
多分、極度の緊張状態から解放された所為だろう。でも、今手放さなくても……!
「な、なんだ、これ……」
と、聞き覚えのある声が聞こえてきた。あたしは声のした方を見る。
「クロノ……!」
そこにいたのはクロノ達。中にはるいやフェイト、アリシア、はやてもいる。はやての守護騎士達もだ。
「な、なんでアリサとすずかが戦ってるの……?」
「それに、あの剣デバイスじゃない……?」
「あ、アリサすずか。その剣、何……?」
「っ、でぇい!!」
「はぁっ!!」
あたしとすずかは一瞬だけ顔を見合わせると、それぞれ剣で敵を弾き意識を失っている全の傍まで後退する。
「手短に聞くわ。皆は、全の敵?」
「て、敵って……いや、状況がわからない以上どっちの味方も出来ない。せめて何で聖達と君たちが戦っているのかを聞きたい。それと聖、君が勝手な報告をして一個大隊を動かした件、後でじっくり聞かせてもらうぞ」
「何を言ってるんだ?あいつがなのはを襲ったのが悪いんだろ?」
「だから、それはまだ確定はしていないだろう!君は橘が犯人だと断定していた!確かな証拠もないのにだ!!」
そして次に聖が発した言葉にその場にいた全員が絶句する。
「ああ、もううるさいな!!僕がそうだと言ったらそうなんだよ!!!」
………………………なるほど、これが聖の本性って訳ね。
《ああ、あれがあいつの本性だろうな。自分の意見が正しい。他の意見は間違い。そんな所だろ》
あたしに宿る神であるアーポロがそう言う。じゃあ、今まであいつは仮面を被ってたって事ね。
「お前、自分が言っている事の意味を分かっているのか、聖。それは押し付けというんだぞ」
「押し付けじゃないよ、橘は自作自演をして皆を騙していたんだ。そんな奴を許せるのか?」
「だから、それが証明出来る証拠がない。それとも彼のこれまでの言動が証拠だとでも?まず過去の彼と今の彼は明らかに違うだろう」
「だとしても、それまでそうだったという事は残っているだろう。だったら信用は出来ない。」
「でも……」
「みんなは橘の味方をするのか?だったら……橘がいなくなれば僕の味方してくれるよねぇ!!!!」
聖はそう言うと、即座に魔力弾を生成。一瞬の内に放つ。それには警戒していたあたしとすずかも虚を衝かれ、攻撃を許してしまった。
「しまっ!」
「全君っ!」
あたしとすずかが急いで魔力弾を無力化しようとするが、一瞬敵わず剣は空を斬る。
そのまま魔力弾は全に当たりその身を焦がす……事はなかった。
「はぁ!!」
全の前に唐突に表れた人物の振るった一閃が魔力弾を一刀両断したからだ。
しかし、この場にいる全員その人物がここにいる事よりもその人物が持っていた剣に驚いていた。
なぜならその人物は
「な、なのは…………?」
レイジングハートという杖のデバイスを使っていた筈のなのはだったからだ。
服装は変わっていない。でもその手を覆っている手甲が両手共になっており、その手に持っているのは杖ではなく、刀でいう小太刀と呼ばれる物。
それも二つだ。柄の部分にはレイジングハートなのだろう、赤い宝石が埋め込まれている。
「な、なのは……?何でそいつを庇うんだ……?そいつはお前を襲った張本人「違うよ」……?」
「橘君は…………全君は、そんな事しない」
その言葉を聞いてあたしはなのはの中で何かが変わったとあたしはわかった。
「だって全君は強くて……弱いから……だから、そんな全君を私は守りたい……あの時、そう誓ったの……お兄ちゃんに、お姉ちゃんに頼んで……私は、学んだの……今、それを発揮する時」
なのはは両手に持った小太刀を構える。それは確かに、剣士のそれだった。
「まだまだ未熟者だけど……永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術見習い・高町なのは。参ります!!」
今、才能あふれる剣士が過去を取り戻した。
後書き
短いですが、投稿。
さあ、なのはも記憶を取り戻しました。その時の話は次回に回します。
とりあえず次回でもう一回みんなの記憶が戻って、一悶着あって全君の味方が来ます。
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