魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
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真・四十六話 真実と嘘を司る者
前書き
少々短いが投稿。
眩い光が辺りを照らし、その光に思わず全と聖、そして聖が連れてきた魔導士達は目を手で覆う。
そして数秒した後、その光が収まる。その光の発生源であるアリサとすずか。その二人の格好は先ほどとは違っていた。
アリサは昔の人たちが着ているような和服を着ている。しかしズボンの丈は短くなっており赤い羽織を羽織っている。
すずかはRPGなどで見る神官のような服になっており、こちらもまたズボンの部分の丈が短くなっている。
そして二人の腰の部分には先ほど彼女達が掲げた剣達が鞘に入れられ収まっていた。
しかし全が驚いたのはそれ以外の事だ。何と、彼女達に寄りそうように何かが宙に浮いているのだ。
アリサの方にいるのは赤い髪をポニーテールにしており、赤い瞳をギラつかせている少女。その身には機械的な装甲を身に纏っている。
すずかの方にいるのは深淵を思わせる黒い髪で背中の中頃まで伸ばしている少女で、その瞳はこちらも黒く優しさを感じさせるような澄んだ感じを出している。その身にはこちらも鎧を纏っており全身黒い鎧だ。首元には毛皮があり、それがまるで獅子を感じさせる。
《いやぁ、まさかこんな目立てる場面で顕現させてくれるとは思わなかったぜ!それにまさか、お前も宿主を見つけてたとはな、ルナーラ》
《それはこちらの台詞ですよアーポロ。貴方の事だから見境なしに宿主を変えていると思っていましたが……中々どうしていい宿主を見つけたではありませんか》
《だろっ!?俺もお前もいい宿主に出会えたもんだよな!!…………それに、懐かしい奴にも会えたし》
《ええ、そうですね》
二人?が全の方に振り向く。アリサとすずかは依然聖達の方を向いているのでアリサ達と彼女達は違う存在だという事がわかる。
そして全の体から、真耶が出てきた。その表情は懐かしい人物との再会に喜んでいるようだった。
《それはこちらの台詞だ。まさかこの世界にいるとは思わなかったぞ。アーポロ、ルナーラ。驚きすぎて何といえばいいわからん位だ》
真耶が言っているアーポロとルナーラ。その名前に全は聞き覚えがあり記憶を辿るとその名前に行きついた。
『ふん。アーポロとルナーラは僕の前からさっさといなくなったからね。彼女達は失敗作だったよ。物に心など、与えるべきではなかったよ』
『きっさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
その時の真耶の怒りはすさまじくあの存在に対して一歩も引かなかった。
《全。紹介しよう、アーポロとルナーラ。私と同時期に生み出された存在でな。二人は早々に見切りをつけて出ていったんだ。その後を知らなかったが……》
真耶自身も彼女達がこの世界にいる事を知らなかったようだ。
と、目の前の光景に思考を停止させていた聖の思考が復活したのかアーポロとルナーラを指さす。
「お、お前ら何なんだ!?そ、そうか、お前たちがアリサ達がおかしくなった原因か!待ってろアリサすずか、そいつらを消してお前たちの洗脳を解いてやる!」
そう言った聖を憐れむようにアーポロとルナーラは振り返り見つめる。
《あいつ、俺たちを幻かなんかと勘違いしてねぇか?》
《仕方ないのではないですか、普通の人間は神力などは感じれないのですから》
だったら、俺のライバルを自称してたあいつはどうなるんだ、というツッコミを全は心の中でする。
最初は敵対していたが、その後ある事情により全達の組織預かりになった全と同年代の少年の事を全は思い出す。
彼はいつの頃からか、神達が無意識の内に放っている神力を感知出来るようになっていた。
彼自身も何でなのか分からないと言っていたが「そういえば、変なの感じる前に男を一人仕留めたな。やけに強かったから覚えてる。漫画みたいに地面抉り取って投げつけてきてな。それらを全部避けたり時には斬ったりしながら近づいて殺したけど」と言っていた。
恐らくその男は神を身に宿していた神月家の人間だったのだろうと全は予想していた。神を殺した事によりその力を感じられるようになったと全は思っているがその事を全は彼に言っていない。それで慢心するとも思えなかったが万が一という事もあるからである。
と、そこまで考えている所で全は気づいた。アリサとすずかの拳が震えている事に。
「すずか……私、もう我慢しなくてもいいわよね……?」
「うん、もう……我慢出来そうにないから……!」
アリサはすずかと小さくそんな会話をすると、腰に差している剣を一気に抜き放つ。するとアーポロがアリサの剣の中に入っていく。
《さあ、マスターよ。俺の力を解き放つ時だぜ!!》
「ええ、アーポロ…………聖!」
アリサはアーポロと共に在る剣――――――火神剣アポロヌス―――――の切っ先を聖に向ける。
「あんた、私たちが洗脳されているとか世迷言ぬかしてるけど……そういうあんたはどうなのよ!?」
「な、何を言ってるのアリサ!?アリサもすずかも洗脳されてるんだよ!」
「そうだよ、全部橘が悪いんだよ!」
「そうや、橘君!早く二人の洗脳を解いてや!」
「黙りなさい、幻共!!」
「「「「っ!!?」」」」
幻共、とアリサが吼えると先ほどまで罵詈雑言を並べていたアリシア達が止まった。
「あんた達がどれだけ言おうとも、それは本当の言葉じゃない。予め決められたロジックの言葉しか発せない幻よ。それを証明するわ」
アリサは聖に向けていた切っ先を天に向け、その言霊を紡ぐ。
「真実を司る者よ!今、この場における真実を照らし出せ!」
アリサがそう叫ぶと、剣が太陽のように光り出し辺り一帯を先ほどと同様に照らし出す。
するとその光を浴びたアリシア達の輪郭がぼやけていき、次第に消えていった。
「あ、アリシア?それにフェイト、はやて、るい?な、何で消えたんだ?」
「知ってる筈よ。だって、これはあんたの背後にいる奴が生み出した存在だったんだから」
「っな!?」
なぜそれをっ!?といった表情をしている事から図星のようだ。
「この剣、火神剣アポロヌスはその場にある真実を照らし出す。つまり、この場における嘘……幻や偽の記憶などは燃えて消えるのよ。さっきみたいにね」
それがアーポロの司る真実の力。一定範囲内における嘘を決して見逃さず全ての嘘を燃やし尽くす。これにより幻影だったアリシア達が消えたのだ。
「だ、だけど……」
「あれらが嘘だって言うのはすぐにわかったよ。だって……私の剣の力で判明していたから」
と、今度はすずかが前に出て腰に差しているレイピアを掲げる。するとすずかの傍に寄りそっていたルナーラが剣に入っていく。
「私の剣、月神剣ルナトリウスは嘘を司るルナーラの宿る剣。この剣は嘘を見破る。どんな些細な嘘でもね。それであのアリシアちゃん達が幻影だって気づいたの」
それがすずかの宿すルナーラの力。嘘を司る彼女の力はどれだけ巧妙に隠された嘘でも白日の下に晒す。
「全はやらせない。やっと間に合った……何度も何度も何度も何度も……失敗して、手が届かなくて……やっと届いたこの手、絶対に手放したくない……」
「だから、私たちは絶対に全君を守る……例え、世界を敵に回しても!」
アリサとすずかは剣を手に、聖に向けて走り出す。
「い、いかん、高宮殿をお守りしろ!」
「「「「は、はいっ」」」」」
聖の連れてきていた隊を纏めていたであろう魔導士が部下に指令を出し、聖を守ろうとする。
「「邪魔しない、で!!!」」
そうなったとしても二人は止まらない。やっと掴んだこの可能性を絶対に手放したくないから。
そもそも、なぜ彼女達が全の事を覚えているのか。
それは、彼女達も全と同様に記憶だけを過去の自分に転写していたからだ。
しかし、それは全の物とは違い完璧ではなかった。故に彼女達は元々ある作られた記憶と本来の記憶が同時に存在するという何ともおかしな状態となっていたのだ。
しかし、それを一つにする手段があった。それがアーポロとルナーラの存在だ。それは彼女達の宿した神の力が関係している。
アーポロとルナーラ。前述の通り、彼女達の司る力は真実と嘘。
この力によりアリサとすずかは作られた記憶を消し去り、本来の記憶……全と絆を紡いだ記憶を完全に取り戻した。
だが、ここで一つ疑問が残る。なぜアリサとすずかは記憶を過去の自分に送れたのか。
これも神の力によるものだ。
まず最初の世界で彼女達は神の力を手に入れ、そして全を守れなかった。
それを嘆いた彼女達は神に頼んだ。過去に飛ばしてくれと。
しかし神といえど過去への移動など出来ない。そこで彼女達は考えた。過去への移動ではなく過去へ今の自分たちの記憶を転写出来ないかと。
無論、アーポロとルナーラは反対した。そんな事をすれば今の自分たちがどうなるのかわかったもんじゃないからだ。それでもアリサとすずかは決断した。
そしてそれは成功した。だが、過去へ記憶を転写しても過去の自分達が困惑するだけで全を守り切る事など出来なかった。
何度も何度も失敗した。間に合わなかった……と何度も後悔した。そして………………………やっと、間に合ったのだ、全の危機に。
だからこそ、アリサとすずかは決して引かない。なぜなら、これは失敗し続けてしまった世界の自分達の思いも受け継いだ戦いなのだから。
後書き
はい、という訳で彼女達も全と同様に過去の自分に記憶を転写していました。
でも、全の劫の眼のように完全に記憶を転写出来てはいなかったので二つの異なる記憶が同時に存在するという本当に変な状態になっていました。だからこそアリサもすずかも変な対応だったのです。三十九話疑惑の視線でアリサとすずかは何も言わずただ見ているだけだったでしょ?それは二つの記憶があるから混乱していたからなのです。
そしてそんな中、ようやく間に合った今回……一体何回やり直したのか……それは読者の皆さんにお任せします。でも、明言しておきます。五回や六回とかそんなチンケな数字じゃない事だけは確かです。そんな彼女達だからこそ今回の戦いは負けられない、戦いなのです。
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