魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica7-Cそうだ、合宿へ行こう~Hot Springs~
†††Side????†††
お姉ちゃんの設計を基に、午後はなんと全員参加の露天風呂の建築となった。みんなで岩を集めたり、木を切っては繋ぎ合わてウッドフェンスを造ったり、モルタルを作ったり。友達みんなと工作をしているようですごく楽しい。そして今、私たちは・・・
「すぅ~~~~ごぉ~~~~いぃ~~~~~~!!」
空に居る。正確には空に浮かぶ温泉の中。これだけ聞いたら10人中10人が首を傾げると思う。噴き出した温泉のお湯は今、球体状にされて空に浮かんでるのだ。そんな私たちは水着を着て入浴中。
「ぷはっ!・・・はふぅ。いや~、本当にすごいねこの温泉! これだったらお金を取れる!」
顔に張り付いた髪を払ったお姉ちゃんが空に向かって両手を伸ばした。私も手を空に向かって伸ばしながら「うん。モルタルが固まるまでの間なのは残念だよね」って漏らした。温泉施設の浴槽は、みんなで力を合わせて造ったことで完成はした。でも岩の接着材としてのモルタルが乾くまで時間が掛かる。だからルシルさんは・・・。
・―・―・回想~♪・―・―・
ルシルさんの螺旋槍で掘られた穴から、どぉーん!とお湯が噴き上がった。みんなで大粒の雨のように降って来るお湯に「熱い! あっつ~い!」って大はしゃぎしながら退避。そんな中、アイリとユニゾンしっ放しだったルシルさんが水柱の元へ1人近付いてった。そして足元にサファイアブルーのベルカ魔法陣を展開。
「とりあえず、しばらくは空で待っていてもらおう」
左手をその水柱に向けると、降って来てたお湯がピタッと止まった。穴から噴き出すお湯は螺旋を描くようにクルクル回りながら空に昇って、先端のお湯は直径20mくらいの球体になった。徐々に大きくなるんだけど、球体の斜め上辺りから放水され始めたことで巨大化は止まった。
「さらに・・・」
――反重力・広域結界――
ギンッて鈍い音がして、球体の周りの空間が僅かに歪んでるように見え始めた。リオが「ルシルさん、何をしたんですか?」って聞くと、「無重力の檻を張って、お湯が零れないようにしたんだよ」って、さらりとトンデモない答えを返した。だからルシルさんが重力操作を出来るなんて知らない私たちは「え゛・・・?」と口をあんぐり。そしてなのはさん達は「あはは」と苦笑した。
「温泉は一先ずあの場に留めて置く。ほら、今のうちに最低限でも浴槽を造るぞ」
そう言ってルシルさんは浴槽の素材となる加工済みの岩を抱え上げて、重力で押し潰して出来た穴に敷き並べてから私たちも手分けして岩を並べてく。そんな中、ルシルさんが「ふぅ・・・。人出が少し足りないか」って額の汗を拭いながら呟いた。
「魔力で身体能力を上げていても、ちょっと辛いね・・・」
「排水管なども同時に進めないといけないし・・・」
「そうやね~。少しばかり大人が足りへんかもな~」
「男がルシルとザフィーラだけっていうのもキツイかも」
なのはさんとフェイトさんとはやてさんとアリシアさんが唸った。魔力を使って人並み以上の力を引き出せてる大人組でも、さすがに人手が足りないって思えるほどの重労働なんだよね。ちなみにシャルさんは、ノーヴェやヴィヴィオ達と交じって排水管を通す穴掘りしたり、岩を“キルシュブリューテ”で切断して加工したり。アリサさんとすずかさんとアインスさんとザフィーラ、それにガリューは、湯船の縁になる大岩の運搬だ。
「ルシル君。影の触手って今は使えへんのかな・・・?」
「・・・まぁ何とかなるか」
「ちょう待ち。今の間にこっちが不安になったわ・・・」
「いや俺ももう少し役に立たないとな。・・・我が内より来たれ、貴き英雄よ。汝らは鋼の体を持つ、罪に塗れし乙女。鋼を操り、暴力の光を振り、破壊の波を流し、磁力を発し、風を発する。来たれ・・・」
すでにめちゃくちゃ役に立ってるルシルさんが詠唱し終えたら、その周囲5ヵ所に魔力が収束し始めた。魔力はすぐに人型になって、「あ・・・!」その姿に私は声を上げた。プライソンの元で過ごしていた際に何度も見たその姿。お姉ちゃんも「なんで・・・」って漏らして、ノーヴェは「テメェら・・・!」って殺気立った。
「現実に召喚される日が来るなんて思わなかったわ」
「アルファ・・・」
「やっと・・・やっと、地獄から抜けられた・・・」
「ベータ・・・」
「くぅ~! 本物の太陽だ~!」
「デルタ」
「ヴァルハラの風も悪くはなかったですけど、イプシロンはやはり現実の方が良いです」
「イプシロン・・・」
「デルタ姉様やイプシロン姉様に同意ですね。太陽の暖かさ、風の心地良さはやはり現実に限ります」
「ゼータ・・・!」
プライソンの娘、“スキュラ”6姉妹のうち5人がそこに居た。現実で生死不明の行方不明なガンマだけが居ない。ノーヴェが「テメェら死んだはずだろ・・・!」って宝石型の待機モードな“ジェットエッジ”を取り出したから、フォルセティとヴィヴィオが「ストーップ!」って制止に入った。
「ええ、私たちは見事に殺されたわ。だからここに居る私たちは偽者なのよ」
「ルシリオンのスキルによって存在している、魔力の塊の使い魔。それが私たち」
アルファとベータがそう説明して、私とリヴィアとノーヴェはルシルさんの方を見る。ルシルさんから“エインヘリヤル”の説明を受けた。話を聴けば聴くほど、ルシルさんの特異性に開いた口が閉じなくなった。
「そういうわけだからノーヴェ。君やクイントさん達が受けた仕打ちは理解できるが、このアルファ達は俺の使い魔で、完全に俺の支配下にある。和気藹々してくれ、とまでは言わないが、せめてケンカ腰にならないでくれると嬉しい。ルーテシアとリヴィアも、どうか・・・」
「あ、はい・・・。ルシルさんがそう言うなら、判りました」
「う、うん」
「いいよ~」
「ありがとう。さて、スキュラ諸君。今現在、我々は天然露天風呂を造っている。君らにはその手伝いをしてもらう。現場責任者はルーテシアだ。彼女の指示を最優先に従ってもらう。無論、拒否権はない」
ルシルさんが“スキュラ”にそう伝えると、アルファは簡潔に「承知しているわ」そう答えるとお姉ちゃんに向き直って「指示を頂戴、監督」って言って、着ていたブレザーを脱いだ。
「マスター。上着が邪魔だから霧散させておいて。あと一応言っておくけど、匂いは嗅がないでください」
「か、嗅ぐか! お前は俺を何だと思っている!?」
「あなたの姉は嗅ぐでしょう! それに他の変態エインヘリヤル連中も! もう夫どころか恋人も出来ないレベルで穢されたわ!」
あのアルファが両手を顔で覆って、首を勢いよく横に何度も振った。ルシルさんはルシルさんで「姉様・・・」って、右手で両目を覆って呆れ果てたっぽい。ルシルさんに実の家族が居るなんて聞いたこともなかったから、私は「あれ? ルシルさんって家族が居るんですか?」って聞いてしまった。
「・・・ああ、居たよ。今は両親や妹と一緒に空から見守ってくれているよ」
「あ・・・」
居た。という過去形。空から見守ってる。その暗喩で、ルシルさんの家族がもうこの世に居ないことを知った。お姉ちゃんが肘で私の脇腹を小突いて来て、「ごめんなさい」って謝って、私も「ごめんなさい」って頭を下げた。
「構わないよ。元はと言えばアルファ、お前が変な事を言ったのが悪い」
「事実でしょう?」
「姉様に限ってはそうかもしれないが・・・。とにかく、時間は無限じゃない。ほら、作業開始~」
「判ったわ。・・・ルーテシア、指示を頂戴」
「あ、うん。じゃあ露天風呂の床になる岩を並べてくのを手伝って」
それから“スキュラ”達の協力もあって、露天風呂の7割方が歓声した。あとは洗い場と脱衣場と屋根、あと露天風呂を囲うウッドフェンスの設置。でももう夕方になったところで、「今日はもうここまでにしよう!」ってお姉ちゃんが作業の中断を告げた。
「あらあら。午後の数時間でここまで完成させるなんて、みんなすごいわね~。・・・あら? あなた達は・・・」
ここで様子を見に来たママが“スキュラ”が居ることに気付いた。私やお姉ちゃん、ノーヴェみたく驚くのかと思ったら、確かに最初は目を大きくして驚き顔を浮かべたけどすぐに「久しぶりね。どうしたの?」って微笑んだ。私とお姉ちゃんは「あのね!」って、ルシルさんより早く率先して説明した。
「そうなの? 局員だった頃からルシル君の凄さは知っていたけど、そんなのまだまだ序の口だったのね~」
ママは右手を頬に添えて苦笑いした後、「あなた達もご飯を食べる?」って“スキュラ”達に聞いたんだけど、ルシルさんが「ああ、結構ですよメガーヌさん。もう少しで時間切れで消えますから」って、“スキュラ”達の返事より早く答えちゃった。
「時間切れ?」
「ええ。召喚時間の限界です」
ルシルさんの使い魔・“エインヘリヤル”は現実世界に長くは居られないみたいで、“スキュラ”達も例に漏れず、もうそろそろ居なくなっちゃうらしい。そんなルシルさんの言葉に、“スキュラ”達が「はあ!?」って一斉にルシルさんを睨みつけた。
「ちょっ・・・! あんだけ働いたのに、報酬無しでヴァルハラに帰れって言うの!?」
「イプシロンはマスターの悪逆非道にして鬼畜な所業に、断固異議を唱えます!」
「あなた、本当にいい度胸をしているわね?」
「せめて感謝の言葉くらいあってもいいのでは?」
「銀髪恐怖症に陥ってしまいそうです・・・」
「「「は~んたい!」」」
「です!」
「「「は~んたい!」」」
「です!」
「「「は~んたい!」」」
「です!」
ルシルさんに詰め寄った“スキュラ”に、「じゃあ何をしたいんだ?」ってルシルさんが聞くと、「あの温泉に入りたい!」ってデルタが指を差した。アルファ達もご飯じゃなくて、せめて温泉に入りたいって答えた。
「それくらいはまぁ時間はあるか・・・。水着に着替えさせるから、そこでしばらく立って待機しておけ」
ルシルさんのその言葉に、私は「そんな魔法もあるの?」ってフォルセティに聞いてみたけど、「う~ん・・・?」って首を傾げたから、フォルセティと一緒にはやてさん達を見た。するとアインスさんが「ああ、ある。衣類だけの強制変身魔法だ」って答えてくれた。便利なようだけど強制っていうのは恐いなぁ~。
「水着? なぜ風呂に入るのに水着が要る?」
「いいか、ベータ? 風呂は裸で入る。そして、側には男の俺、フォルセティ、ザフィーラが居る」
「・・・だから? 触れられるのは困るけど、裸を見られた程度で恥じるような不細工な体じゃないわ」
アルファがいきなり服を脱ぎ始めて、ヴィヴィオとコロナとリオは「わっ!?」って両手で目を覆って、アインスさんが「いけない」ってフォルセティの目を覆って、そしてはやてさんが「ルシル君。目を瞑って。今すぐ」ってドスの利いた声でそう言った。ザフィーラは何も言わず、何も言われないまま自分から顔を逸らした。
「ああもう。・・・我が手に携えしは確かなる幻想。変化せしめし乱音」
詠唱したルシルさんが指をパチンと鳴らすと、素っ裸で仁王立ちしてるアルファやデルタ、脱ぎ始めてたベータ、恥ずかしがって萎縮してるイプシロンとゼータが、ポンッ、って音と一緒に発生した煙に覆われた。煙はすぐに晴れて、“スキュラ”みんなの服装が水着になってた。だから初めてルシルさんの強制変身魔法を見た私たちは「おお!」歓声を上げた。
「マスター、マスター! どうやって入るの!?」
「え、あぁ、フローターフィールドでも構わないが、手っ取り早く水柱に乗ればいい」
「んっ! イプシロン、ゼータ、行こう!」
「え・・・?」「わ・・・?」
デルタが2人の手を取って水柱に突っ込むと、「おおー!」って歓声を上げながら水柱の勢いに乗って、上空10mくらいにある球状の温泉まで運ばれて行った。その様子にヴィヴィオ達も「面白そー!」ってテンション爆上げ。
「フォルセティ、コロナ、リオ、イクス! 水着に着替えて来よう!」
「「「うんっ!」」」
「あ、はいっ!」
ヴィヴィオ達が家に向かって走って行くのを見送ってると、アルファ達が「ではお先に」ってデルタ達を追うように水柱に入って行った。これまでの様子を見てママも「まあ面白そうね!」って興奮した。
「メガーヌさんもいかがです?」
「そうね~。でも若い子に交じって、こんなおばさんが水着というのも、ねぇ~」
ルシルさんにママも誘われたけど、ママはそう言って戸惑った。娘の私が言うのもなんだけど、ママって歳に比べてすっごい若いんだよね見た目が。20代って言われたって絶対信じられるレベルだし。ルシルさんも「そうですか? メガーヌさんは十分若いですよ」って言ってくれたし。
「まあ嬉しい! 若い男の子にそう言ってもらえるなんて、お世辞でも嬉しいわね~♪」
笑顔なママとルシルさんの背後、はやてさんとシャルさんがジト目なのがすっごい印象に残った。アリサさんが「アンタ、人妻を口説くなんて・・・」って呆れた風に言うと、ルシルさんは「口説いてない。事実を言ったまでだ」変に繕うことなく、堂々と反論した。
「ほら。馬鹿な事を言ってないで、アリサ達も水着に着替えて来い。メガーヌさん。夕食は俺に任せて下さい。腕に縒りを掛けて作らせてもらいます!」
「え、でも・・・ルシル君はお客様だし、今日は朝からいろいろと手伝ってもらっているし・・・。それにルシル君は一緒に入らないの?」
「ええ。俺は水着を持って来ていないので。みんなが寝静まった頃に1人で入らせてもらいますよ」
私は見逃さなかった。シャルさんの目が光り輝いたのが。今日の深夜、ルシルさんの怒りの声がカルナージに響き渡りそうだな~。
・―・―・終わり~♪・―・―・
お湯の浮力に身を任せてプカリと浮かぶ。ルシルさんが球状のお湯の外側に無重力の結界を張ってくれてるおかげで落下の心配はない。
「ふぅ~。良いお湯~♪」
「ええ、本当に。よもや死後にこのような体験が出来るなんて、本当に不思議ですね~」
「イプシロンもゼータに同意します~」
近くに漂ってたデルタとゼータとイプシロンも、蕩けきった顔で温泉を堪能してる。アルファとベータも「ほぉ・・・」って、ママと一緒にノンアルコールのお酒を嗜んでる。あそこまでママの緩みきってる姿って見たことないかも。
「ヴィヴィオ達もずっと泳ぎっぱなしだけど、明日ぜったいに筋肉痛で動けないでしょアレ」
「イクスも泳ぎ方を教わったら教わったで、結構長い時間を泳いでるよね」
「元気だね~」
「元気ですね~」
デルタやゼータと一緒に温泉の中を元気よく泳ぐヴィヴィオ達を見守る。イクスも最初はあっぷあっぷと溺れかけてたけど、すずかさん達が丁寧に泳ぎ方を十数分と教えただけであれだけ泳げてるから、すずかさん達もイクスもすごい。
「ぷはっ。すっごい楽しい~!」
「でもそろそろ上がらないとのぼせちゃうかも~」
「指もふやけちゃってる~!」
「そうですね。人生初の温泉も堪能しましたし」
「お腹も空いてきたしね」
ヴィヴィオ達が私たちの近くに浮上してきて、私みたく力を抜いて湯面に浮かんだ。デルタ達も同じように浮かんだところに、『スキュラ諸君。召喚限界だ』ってルシルさんから通信が入った。
「えーもう? もうちょっと現実世界で遊びた~い!」
「イプシロンもデルタ姉様に同意です!」
「まったくよ! 温泉だけで済むと思って!?」
デルタやイプシロンに続いてアルファまで文句を言ったけど、シャルさんが「あなた達、せめて温泉だけは、って言ってたじゃないの」そうツッコみを入れた。
「温泉に酒と来たら、もちろん食事でしょう!」
『却下。もう限界。はいまた来週~』
「「「「「ちょっ――」」」」」
ルシルさんが軽い口調でそう言いながら手を振ると、“スキュラ”達が一斉にポンっと消失した。そのあっさりさにポカンとしたけど、まぁルシルさんに頼めばまた会えるらしいし、「行っちゃったね~」ってかる~く言うと、お姉ちゃんやヴィヴィオ達も「だね~」って続いた。
ま、そんなこんなで空中温泉は、ルシルさんのおかげでとっても思い出深い入浴になった。ルシルさんが居なくても、毎日じゃなくても、この空中温泉を再現できないかな~。ホテルアルピーノの目玉になりそうなんだけどな~。
†††Sideリヴィア⇒イリス†††
ルシルの作った空中温泉を存分に堪能した私たちは、アルピーノ邸へと戻って来て、ルシルが作った夕食を、「いただきます!」と挨拶して頂く。食事中、明日の予定などをみんなで話し合う。
「師匠! 明日から早速、御指導御鞭撻のほどを!」
「うん♪ 短い間の滞在になっちゃうから、密度の濃い授業になるけど?」
「望むところです!」
ルーテシアはすずかによる技術教育かぁ。ルーテシアも何気にそっち系が強いみたいだし、将来は名のある技術官になるのかな。
「ねえ、なのは、フェイト、アリシア、シャル、はやて、ルシル、アインス。だったらあたし達は久々に模擬戦やんない? 個人戦というよりはチーム戦♪」
アリサがそう言ってウィンク。なのはは「チーム戦かぁ!」って満更でもなさそうで、アリシアも「おお! ナイスアイディア♪」って親指を立てた。
「チーム海鳴内での模擬戦も、ここ最近やってへんしな~。ユニゾンありなら構わへんよ。な、リイン?」
「はいです! はやてちゃんとユニゾンすれば負けなしです!」
「では私は単独での戦力として、ですね」
「ち・な・み・に。ルシルとアインスは同じチームにならない事。アンタ達が組んだら誰にも手に負えないわ」
そう言ってアリサが肩を竦めた。ルシルとアインスは共にオールレンジの魔導騎士だ、あの2人が手を組んだらそれこそ手が付けられないもんね。だからわたしも「賛成~」って挙手した。
「俺としては構わないが・・・。ノーヴェ」
「え、あ、はい?」
ここでルシルが突然ノーヴェに話を振ったから彼女もビックリしたみたい。ルシルが「俺に何か言いたい事があったんじゃないか?」って尋ねると、「・・・あー、いえ」ってノーヴェは少し考えた末に、渋った感じにそう答えた。
「ん?」
「・・・その、ルシルさんにお願いしたい事があったのですが・・・」
「俺に頼み事? 水臭いぞ、ノーヴェ。俺に出来ることがあったら遠慮なく言ってくれ。息子が世話になっているんだ」
「では遠慮なく」
ノーヴェが居住まいを直すと「コホン」と1回咳払いをして、両手をテーブルに付いた。
「ルシルさんの複製スキルを見込んでお願いします。1日、いえ半日だけでもいいです。特訓に付き合ってくれませんか?」
それがノーヴェの頼み事だった。頭を下げてまで頼んだノーヴェの姿を見て、ヴィヴィオとリオとコロナ、それにフォルセティも食事を中断して、「お願いします!」って頭を下げた。
「もちろんだとも。俺に出来る事があるなら、遠慮なく言ってくれ」
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