魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica7-Bそうだ、合宿へ行こう~Creator~
†††Side????†††
無人世界カルナージ。元は私やママ、妹のリヴィアを隔離しておく檻だった。プライソン戦役で罪を犯した私たちは、魔力封印処置を受けたうえでの8年間の隔離刑を受けた。でも今現在は、模範囚ということで隔離期間も短縮されて去年で終わった。だからもうカルナージから離れても良いんだけど、カルナージの開拓もOKって管理局からお達しもあったこともあって、私たちはこの世界で生きていくことを決めた。
(だから今日も、エリオやキャロ、ヴィヴィオ達から送ってもらってる本を読んで勉強中だ)
独学だけど建築学や経営学、それに地学などなどをリヴィアと一緒に勉強してる。今の目標は、ホテルアルピーノの完成。臨時だけどミッドの次元港と結ぶ便が出来て、色んなところから物資を送ってくれるようになったし、夢の実現までそう掛からないと思う。
「お姉ちゃ~ん! そろそろ次元港に船が到着するって~!」
窓の外から自慢の妹の声が聞こえてきた。読んでいた丸太を組み合わせて建てるログハウスの建築書を本棚に戻して、窓を開けて庭の方を見る。リヴィアが「迎えに行こう~!」って両手を大きく振っていて、私も「判ったー!」って手を振り返した。自室から飛び出して、1階でお昼ご飯の仕込みをしていたママに「いってきます!」って挨拶。
「いってらっしゃい! お友達だからと言って失礼のないようにね~!」
「はーい!」
家を飛び出して、「お待たせ♪」庭で待っててくれたリヴィアと合流。家からそう離れていない、簡易だけど一応次元港っていう括りの施設へ向かう。子供でも乗れる移動用カートも手配して寄越してもらおうかな~、って時々考える。
「あ! おーい!」
リヴィアが道の先に向かって大手を振った。そこには聞いてた通りのメンバーの姿。ノーヴェ、ヴィヴィオ、フォルセティ、コロナとリオとイクス、なのはさんとフェイトさんとアリシアさん、八神司令にリインにアイリにアインスさん、ママ伝手に合宿参加をお願いしていたルシルさんとザフィーラ。それに・・・。
「アリサさんと・・・師匠さん!」
予定には入ってなかった2人の姿もあってビックリ。ダメってわけじゃなくて嬉しいんだけど。いくらサプライズでも申請無しでメンバー増員なんてするわけないし。
(あー、ママが一枚噛んでるかなコレ・・・)
まぁとにかく、通信じゃなくて直接会いたかった友達さんが来てくれたんだから喜ぼう。私とリヴィアは「カルナージへようこそ!」って出迎えて、「お世話になります!」って言うみんなとお辞儀をし合った後、「ご案内しまーす!」と我が家へと向かう。
「でもまさか師匠まで来てくれるなんて思いもしなかった」
「あれ? メガーヌさんから聞いてない? ルーちゃんに会ってあげてってお願いされたんだけど・・・」
「やっぱりママのサプライズだったんだ・・・。ありがとう、師匠! 送ってもらった本や宿題も為になるし、この機会にいろんな事を教えてください!」
「うんっ♪ ルーちゃんは筋が良いから、すぐに資格も取れるよ」
師匠を誘ってくれたママに後でいっぱいお礼を言わないと。私と師匠のやり取りを見てたリオが「ねえねえ。何の話~?」って興味津々に訊いてきた。
「師匠――すずかさんはね、本局の第零技術部の主任なの♪」
「もっと判り易く言うと、動物型のインテリジェントデバイスが一般向けに売られてるでしょ? アレってすずかさんが開発して、一般のデバイス開発社でも開発できるようにしたんだよ」
「「おー!」」
私とリヴィアで師匠がどれだけすごいかを伝えると、リオだけじゃなくてコロナも感嘆した。なのはさん達のデバイスのメンテ、ルシルさんの“エヴェストルム”だって開発した技術者なんだから。そんなすごい人を私は師と仰いでる。
「管理局員のオーダーメイドデバイスも造ってるし。デバイスメーカと技術協力してるし。技術者としては超一流。改めて、師匠になってくれてありがとうございます!」
師匠に体の正面を向けてお辞儀すると、「私も、ルーちゃんに教えることが出来てとても楽しいよ♪」って言ってくれた。そんな師匠も今回の2泊3日の合宿にフルで参加できるということで、その短い期間に出来るだけ知識を吸収しようって決意。
「ところでルーテシア、リヴィア。メガーヌさんが男手が要るからと呼ばれて来たんだが、何をすればいい?」
荷物持ちみたく両手に旅行バッグをぶら下げてるルシルさんとザフィーラに、「実はママじゃなくて私が呼びました」って伝える。
「そうなのか? じゃあ俺とザフィーラでルーテシアの手伝いをするから、はやて達は子供たちのことを頼むよ」
「ん、了解や!」
「ありがとう! リヴィアはみなさんを案内してあげて」
「ほーい!」
アルピーノ邸が見えてきたところで、テラスからママが「いらっしゃいませ~!」って手を振ってみなさんを出迎えた。とここで一旦別行動に移る。私はルシルさんとザフィーラ、それにルシルさんと別行動をしようとしないアイリの4人で、アスレチック建築予定地――自宅のあるところからちょっと離れた川の支流へと向かう。
「ルシルさん達には、アスレチック製作のお手伝いをお願いしたいです」
展開したモニターにアスレチックの完成希望図を表示させる。それと間違えて「ログハウスの設計図か・・・?」も一緒に展開しちゃった。すぐに消そうとしたけど、「すごいな」ってルシルさんが驚きを見せた。
「独学でここまで図面を引けるとは。ミスも少ないし・・・、才能があるんじゃないのか?」
「ありがとう♪ でもルシルさんもなんか詳しいね。ひょっとしてこういう事にも明るいの?」
「知識だけがあると言った感じか。実際に建てた経験はないが、まあまあな建築家レベルのアドバイスくらいは出来るだろう」
そう言ってルシルさんは、私が描いた図面の問題点を次々と指摘していってくれて、私も「なるほど」って頷きつつ、指摘してもらった事をメモしてく。その後、私とルシルさんとザフィーラはアスレチックの建築を開始。家の裏手にある小川へとやって来て、「木材はかなり揃えてあるんだな」ってルシルさんが資材を確認。
「私とリヴィアとガリューの3人でなんとか。一応、完成予想から計算して数を揃えたけど・・・」
「そうか。もし足りない場合は新しく斬り出して来よう。じゃ、早速始めるとしようか。まずは地盤に穴を開けるところからだ。我が手に携えしは確かなる幻想」
ルシルさんが呪文を詠唱すると、丸太を突き立てる予定箇所の上空に大剣が何十本と展開された。そして「ジャッジメント」の号令と同時に大剣が一斉に地面に突き刺さって、ドリルみたいに高速回転して穴を開けた。
――闇よ誘え、汝の宵手――
今度はあちこちにある影から平たい触手が何十本と伸びてきて、丸太を次々と持ち上げると大剣の開けた穴へと突き立てていった。ここからは私の想定以上の速さで、ルシルさん達はアスレチックを組み立ててくれた。私は指示、時々ルシルさんのアドバイスで変更とかあったけど・・・。
(あまりに的確過ぎて全部任せちゃいそうになったよ)
ロープクライミング、ロッククライミング、雲悌、小川を利用した水上足場、ロープを使って登る斜面坂、急斜面の鉢状坂などなど、ルシルさん提案の物を合わせて計13種のアスレチックを、なんと午前中だけで完成できた。
「師匠たちの故郷じゃ面白い番組をやってるんだね~」
“サスケ”っていう激ムズなアスレチックコースを100人くらいが順に攻略する番組を、建築の指示を出してるところでアイリに見せてもらった。ルシルさんやアイリの提案したアスレチックには、手前に向かって湾曲してる“反り立つ壁”、水場に斜めに立てられた足場をジグザグに設置した“クワッドステップス”や、重さが3種の壁を持ち上げて進む“ウォールリフティング”、同じく重さが3種の壁を押していく“タックル”が造られてる。私も創作意欲が次々生まれてきたけど・・・
「おーい! お昼ご飯が出来たよ~!」
リヴィアが大手を振ってこちらに向かって駆けて来ていて、側には「八神司令、リイン」の姿があった。時間切れであることが判って私は「とりあえずお昼休憩ということで♪」ってルシルさん達にウィンク。
「わあ! はやてちゃん、見てください! サスケですよ! 反り立つ壁ですよ!」
「おおー! とゆうか、たった2~3時間でここまで造ったんか!?」
「すごっ! 何これ! ホントにこれ全部木で出来てるの!?」
リヴィアとアイリが各アスレチックにダッシュして、「すごーい!」って見て回り始めた。そんな2人に「おーい、置いて行くぞ~」ってルシルさんが呼びかけると、「はーい!」って元気な返事をした2人が戻ってきた。
「リヴィアって、ルシルさんに結構懐いてるんだよね~」
「そうやね~。事情聴取やら海上隔離施設で何度か会った程度やろ?」
「まあ・・・な。メガーヌさんとは面会する事が多かったし、それが理由じゃないか?」
うん、そう。ママが楽しそうにルシルさんと話してるのを見て、私もルシルさんは信頼できる人なんだって思って、今みたく親しい関係を築いてるけど・・・。でもリヴィアはそれ以前から自分から話しかけてた。どうしてか訊いてみたら・・・
――判らないけど、なんかこう・・・大丈夫だよ、って本能が訴えかけてくるというか。そんな感じ♪――
うちの妹は大丈夫かな?って正直不安になったけど、それが杞憂だってすぐに判った。六課解散後も、いろいろ忙しいはずなのに様子を見に来てもらってたし。今もこうして時間を作って来てもらってるし。
「そうゆうもんか~。ところでルールー」
「な~に、八神司令?」
「・・・。なあ、ルールー。なんで私だけ名字で役職読みなんかな?」
八神司令にそう言われて「あぁ、そう言えば・・・」って唸ると、リヴィアも「いつの間にかそう呼んじゃってるか~」って何度も頷いた。
「昔はなのはちゃん達みたく、はやてさん、って呼んでくれてたのに。今や堅っっっ苦しい呼び方で呼ばれて・・・。寂しいわ~」
「確かにそうですね~。ですけど、はやてさん、って呼んでました期間もかなり短かったですよね?」
リインにそう言われて、どこで呼び方を変えたのかを思い出すために腕を組んだ。答えが思い浮かんで来る前に「アイリ、知ってるよ~!」ってアイリが挙手した。私たちの視線がアイリに向かう。
「最初は、はやてさん。次に八神部隊長。そして八神司令。呼び方はこう変わってる。んで、変わった理由はズバリ!・・・・エリオとキャロ!」
アイリの話に「あーなるほど~」って私は納得した。余裕さえあればエリオとキャロは隔離施設に面会に来てくれてた。その話の中で、2人ははやてさんを八神部隊長って呼ぶから、私とリヴィアもつられて八神部隊長呼びになった。六課解散後も2人は部隊長呼びで、今じゃ司令って呼んでるから、私たちも司令呼びなわけだ。
「そうゆうわけか~。でもルールーもリヴィーも、局員ってわけやないんやし。前みたいに、はやてさん、って呼んでくれへん? 私だけ名前で呼ばれへんの寂しいわ~」
「は、はやてさんがそこまでお願いするなら・・・了解です、はやてさん」
「は~やてさん♪」
「おお! これや、これ! やっぱその呼び方が嬉しいわ♪」
本当に嬉しそうに笑うはやてさんに、私たちも笑い声をあげた。そして家に戻って、「お待たせ~!」ってすでに食卓についてたママ達の元へ。ママだけじゃなくて、なのはさん達かな? 知らない料理も多くある。冷めないうちにみんなで手を合わせて、「いただきます!」だ。
「みんなは午後からは何をするのかしら?」
ママが私たちみんなにそう尋ねたから、私は真っ先に挙手して「あ、ルシルさん! 出来れば午後もお願いします!」って、ルシルさんの予定を予約する。ルシルさんはいつ本局に戻るか判らないから、居てくれる間は出来るだけその力を借りたい。
「こら、ルーテシア。ルシル君も休暇で来てくれたのだから、そんな働かせてばかりはダメよ」
「あぅ・・・」
ママにそう言われちゃったらもう聞くしかないって思ったけど、「構いませんよ、メガーヌさん」ってルシルさんが言ってくれた。
「穏やかな空気の中で戦闘以外に魔法を使える。これだけで十分な休息ですよ。な? シャル」
「だね~。私の部隊って世界規模の荒事専門の武装隊だから、魔法を使うのは戦闘時だけだし、常に戦場だし。ルシルの言うとおり、今みたいな日常のための魔法の使い方はそれだけで休みになるの。だ~か~ら、ルシルをこき使ってくれていいよ♪」
「いや、そのセリフは君じゃないだろ」
冷静にツッコみを入れるルシルさんに笑い声が上がった。ノーヴェやなのはさん達やヴィヴィオ達は、川遊びや出来たてホヤホヤのアスレチックプレイをする予定みたい。私たちの方に助けが必要になったならその時は呼んでってことで、その際にはお言葉に甘えようと思う。そしてお昼ご飯とその片付けを終えて、私はルシルさんとアイリとザフィーラ、そしてシャルさんの5人で家の前に集合。
「それで、ルーテシア。俺にしてもらいたい事とはなんだ?」
「実は・・・温泉を掘りたいんです!」
ホテルアルピーノの目玉としたい天然温泉。けど地質調査の費用が笑えるほど高い。掘削作業は魔法を使えば簡単だろうけど、調査系はサッパリだ。数打てば当たる戦法もいいけど、外れた際の穴だらけ被害だけは避けたい。だからルシルさんに頼りたい。エリオ達からルシルさんの知識の豊富さは聞いてたし、さっきのアスレチックの件でもすごかったし。
「源泉を探り当ててほしいというわけか・・・」
「そう! その通りです!」
「うーん・・・」
ルシルさんが渋りながら、爪先で地面をトントンと蹴りながらも辺りをキョロキョロ。そして「ルーテシア。アレは火山か?」って、家の向こう側にある大きな山を指差した。
「あーえっと・・・ごめん、判らない」
「そうか。・・・ふむ」
「無茶なこと言って・・・ごめん」
ルシルさんに謝ると、「あっはっは!」って大きな声をあげて笑ったかと思えば私の頭をポンポンと優しく叩いて撫でた。ポカンとしてると、「この程度、無茶でもないよ」って微笑んでくれた。
「無茶というのは、Sクラスの魔導師を完全無力化できるレベルのAMFに覆われた敵陣地に突っ込んで、敵にバレずに拉致された要人を救出せよ、だ」
Sクラス。S-、S、S+の3ランクを纏めて呼ぶ際に使う言葉だ。ルシルさんやシャルさん達はSSクラスの騎士だから、完全には無力化されないだろうけどやっぱり「うわぁ、無茶だね、それは・・・」って同意した。
「だとさ、シャル」
「誰も、突っ込んで、なんて指示してないんだけどね」
「それで、結局どうしたの?」
「うちの隊には穴掘り名人が2人も居るからな。地中にトンネルを掘って、真下から攻めた」
「それを聞いたら、ミヤビはともかくルミナにボコられるよ」
「まぁ聞かれたらな。とにかく、ちょっと待っていてくれ」
――我を運べ、汝の剣翼――
ルシルさんの背中から蒼く輝く剣状の翼が12枚と展開されて、一瞬にして遥か上空へと飛び上がった。そしてすぐに戻って来て、「ただの山だった」って言ってまた、「うーむ」って呻いた。
「火山が近ければ火山性温泉を引きやすいんだが、非火山性温泉を狙いに行くか。ルーテシア。源泉は家から遠くても構わないか?」
「あ、うん。源泉から家の近くまで引けるように何とかするから」
出来れば近くが良いかな。でも高望みはしない。ルシルさんが片膝を付くと、「どれどれ。我が手に携えしは確かなる幻想」って呪文を詠唱しながら両手を地面に付いた。それから移動しては両手を付くっていう動作を繰り返すルシルさん。それに付いて回る私たちだったけど、家の裏にある森林の中に入ったところで「この辺りだな」ってルシルさんが頷いた。
「何か判ったの、ルシル?」
「超音波を地中に発して、水脈を探していたんだが・・・。ちょうどこの真下にあるな」
ルシルさんが足元の地面を蹴った。私は「そんな事も出来るんだ~」ってルシルさんの万能感に改めて驚いた。
「後は掘るだけだな。・・・ザフィーラの破城の戦杭か、はやての冥府の螺旋槍か、だな」
「呼んで来ようか?」
「・・・いや。俺の複製で済ませよう。我が手に携えしは確かなる幻想」
――冥府の螺旋槍――
ルシルさんの詠唱の後、私たちの頭上にすごく大きなドリル状の岩が造り出された。そして「ジャッジメント」の号令の後、ゆっくりと回転を始めて降下して来た。掘削に巻き込まれないために避難して、家の裏にある森林の地面を穿つドリルを見守る。
『ちょっ、ちょっとルシル君!? 螺旋槍なんて出して何かあったん!?』
はやてさんから通信が入った。だから私たちは今、温泉を探していて、そしてルシルさんが当たりをつけて掘削中だってことを伝えた。するとモニターの向こう側から『温泉!?』ってヴィヴィオ達の歓声が聞こえてきた。
『お父さん! 温泉掘ってるの!?』
『ルシルさん! 温泉でる!?』
『見せてもらっても良いですか!?』
『てゆうか手伝いたい!』
フォルセティ、ヴィヴィオ、コロナ、リオと次々モニターに顔を出した。次にアリシアさんが『出る確率は?』って訊いたから、ルシルさんは少し考えた後に「五分五分って」答えた。
『ルシルの五分五分って基本的に高確率って感じだよね~。よしっ! 何か手伝うよ。待ってて♪』
『僕たちも~!』
『何か手伝う~!』
モニターからアリシアさん達の姿が消えると、再びはやてさんやなのはさん達が顔を覗かせて、『アリシアや子供たちの期待がすごいけど大丈夫?』って、フェイトさんがちょっと不安そうに訊いた。
「五分五分だしな。たとえ火山地帯じゃなくても水脈さえあれば、深く掘りさえすればまぁ大体は当たりになるわけだ。地中は100mにつき3度ほどずつ地温が上がっていくんだ。1kmから3kmほど掘れば、それなりの水温のある温泉を引ける・・・という可能性だ」
みんなで「なるほど~」って感心した。
†††Sideルーテシア⇒ルシリオン†††
掘削中、ルーテシアより温泉施設の完成予想図を見せてもらった俺たちは、螺旋槍が水脈に届くまでの間にすぐにでも入浴できるよう、簡易にならざるを得ないが人目が気にならない施設を造ることに。これ幸いと、ノーヴェは子供たちに浴場の床になる岩を持って来るように指示を出した。もちろん、子供でも持てるようなサイズでだ。
「どんどん持って来ぉ~い! 加工と研磨は私が請け負う!」
“キルシュブリューテ”を起動したシャルがそう告げる。なのは達はリヴィアと一緒にモルタル造り。ザフィーラとガリューは浴場を隔てるためのウッドフェンスの作成。そして俺はルーテシアの指示に従って、予定されている浴槽の形に沿うように結界を展開。
「我が手に携えしは友が誇りし至高の幻想」
――圧戒――
実妹シエルの重力操作の固有術式を発動し、結界内の地面を1,5mほど押し潰すとルーテシアとリヴィアが「すごぉーい!」と歓声を上げた。
『マイスター、辛くない?』
『ああ。アイリがユニゾンしてくれているから、記憶消失のリスクも軽減されているしな。ありがとう』
『うんっ❤』
着々と準備が進んでいく中、ゴゴゴと地鳴りが足元から伝わって来た。俺は「噴き出すぞ! 離れろ!」とみんなに忠告し、みんなが首肯して離れていくのと確認したところで螺旋槍を消失させる。地鳴りは激しさを増し、勢いよく熱水が噴き出した。その様に「出たあああああ!」と騒ぐ子供たちや、「おおおお!」と歓声を上げるはやて達の姿に、俺も「はは・・・!」思わずテンションが上がってしまった。
「よぉーし、よし、よぉーし! 温泉は出た! 後は施設を造るだけ! みなさん、ファイトぉ~・・・おおー!」
ルーテシアが大きく右拳を振り上げそう宣言すると、子供たちだけでなくはやてとシャル、リインも「おおー!」と倣って拳を振り上げた。
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