レーヴァティン
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第三十一話 アジトその六
「それもいいのが」
「あれはね」
「この島のものかな」
「いや、何でも昔下の海で獲れたものらしいよ」
「ああ、下のね」
「昔は下も海ばかりじゃなくて」
彼等が今いる島の下に広がる巨大な海である。魔神がいるという。
「大陸があったじゃない」
「そう言われているね」
「その大陸との交易でね」
「手に入れたものなんだ」
「そうらしいよ、ひょっとしたら魔力があるかもって思ってね」
「盗んだ」
「あるお金持ちからね」
それで今彼が持っているというのだ。
「そうしたんだ」
「じゃああの珊瑚も」
「返すよ」
他の盗んだものと同じくだ。
「そうするよ」
「そうするんだ」
「うん、全部返すから」
「魔力はなかったのですね」
順一はその珊瑚に彼が求めていたそれはあったかと聞いた。
「それは」
「うん、ただの珊瑚だったよ」
「やはりそうでしたか」
「奇麗でもね」
それでもというのだ。
「魔力はなかったよ」
「そうでしたか」
「他の剣とかも」
「立派な剣でござるな」
進太が剣のうちの一本、柄の中に収められている巨大なグレートソードを見てこう言った。
「この剣は」
「ああ、それね」
「魔力は備わっていますな」
「そうだけれど」
「それでもでござるか」
「盗んだものでね」
それでというのだ。
「そして盗める程なら」
「如何に高価なものであっても」
そして強い力を持っていてもだ。
「その程だね」
「盗める程でござるな」
「そんなものだね」
「それではでござる」
「力もおいらが求めている位じゃないね」
この島、ひいては世界を救えるまでの力はないというのだ。
「大勢の強い敵を倒せる位かな」
「一騎当千じゃ駄目なんだよ」
久志もこう言った。
「それこそそれだけで戦争を決めちまう」
「おいら達が持っているみたいな」
「そんなものじゃないとな」
それこそというのだ。
「意味がないな」
「そういうことだね、まあ盗んだこともね」
「自分でもわかってるんだな」
「おいらはトレジャーハンターだから」
その系列の盗賊だからというのだ、その本質は。
「だからね」
「怪盗ってやつはだな」
「悪いとはわかってたしね」
「正々堂々と盗んでもな」
「やっぱりね」
盗みを働く、この行為そのものがというのだ。
「悪いよ」
「だからあっさり止めてか」
「盗んだものは全部返して」
そしてというのだ。
「賠償金も支払うよ」
「そうして身奇麗になってな」
「後はね」
「俺達とな」
「世界を救う冒険と戦いに入るよ」
そうしていくというのだ。
「これからね」
「そういうことでな」
「じゃあこれ全部持ち出して」
淳二は財宝達だけでなく金や銀、宝石達も見た。相当な量で一生遊んで暮らせそうな位は普通にある。
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