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レーヴァティン

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第三十一話 アジトその二

「その通りだよ」
「やっぱりそうか」
「もうすぐね」
「その隠し扉か」
「その前に来るから」
「それでそこを開けてか」
「アジトに入るんだ」
 こう正に話した。
「そうなるから」
「この暗い道だったらな」
「隠し扉があってもね」
「わかりにくいな」
「そこまで考えてね」
「ここにアジトを置いたんだな」
「そうなんだ」
 実際にというのだ。
「あえてね」
「シーフの習性だな」
「うん、アリババでもだよね」 
 アラビアンナイトだ、アラビアと四十二んの盗賊の話で実際は四十人の盗賊達のことになる。
「隠されてるよね」
「扉はな」
「開けゴマ、で開くんだよね」
「それで御前の扉もか」
「いや、おいらの扉も確かに隠してるけれど」
 それでもとだ、淳二は正に笑って話した。
「開けゴマじゃないよ」
「別の声か」
「かけ声でもないんだ」
 笑顔のまま話す。
「わかりやすくはしていないんだ」
「御前だけわかる様にしてるか」
「うん、その合図で開けるからね」
「じゃあそこは頼むな」
「それじゃあね。ここだよ」
 その右手の洞窟の壁の前に来てだ、淳二は仲間達にまた言った。そしてその壁の前においてだった。
 親指と人差し指を打ち合わせて何度か音を出した、パチンパチンパチンとだ。するとだった。
 それで扉が開いた、正はその開いた扉と指を鳴らした淳二を見てそのうえで納得した顔で言った。
「そういうことか」
「うん、指を鳴らしてね」
「扉を開けるのか」
「そういう風にしたんだ」
「細工をしたのか」
「知り合いの魔術師に頼んでね」
「魔法か」
 正は魔法と聞いて納得した顔になって頷いた。
「それの力か」
「面白いよね」
「ああ、じゃあここを知ってるのは二人だけか」
「おいらとその魔術師だけだよ」
「じゃあ若しもね」
 ここで言ったのは源三だった。
「その魔術師が誰かにばらしたら」
「おいらこのアジトを使えなくなるね」
「そうなるよね」
「もうそれはわかってるよ」
「わかってるってことは」
「そう、その魔術師さんは喋る様な人じゃないよ」
 このアジトのことをというのだ、こうしたことを話しながらだった。一行は開かれた扉を潜ってだった。
 これまでよりも暗い洞窟の道を進んでいく、そして。
 先を進みつつだ、淳二は仲間達にさらに話した。
「言うなら変人でね」
「変人?」
「かなりの魔術を備えていても」
 それでもというのだ。
「それを積極的に使おうとしないで」
「ああ、隠者になってるんだ」
「そうなんだ、日本で言うと仙人みたいな」
 こう源三に話した。
「そんな感じでね」
「暮らしていてなんだ」
「世の中を関わろうとしない人だからね」 
 そうした人物に造ってもらったアジトだからというのだ。 
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