ドリトル先生と春の花達
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第七幕その九
「その作家さんに国際的ジャーナリストっていう人も」
「じゃあ日本から出ればいいのに」
「そんなに日本が嫌いなら」
「どうしてそうしないの?」
「日本にいて日本の悪口ばかり言うってね」
「それはおかしいわ」
「どうにもね」
動物の皆も言います、そして論文を凄い速さで書いている先生に対してこうしたことを言ったのでした。
「先生は日本にいてもイギリスの悪口言わないのに」
「イギリスにいた時からね」
「紅茶や食べものは日本の方が美味しいっていうけれど」
「それ以外はね」
「残念だけれど我が国は食べものだけはね」
先生も苦笑いで言うしかありません。
「駄目だからね」
「美味しくないってね」
「世界的に有名だから」
「とにかく評判悪いし」
「紅茶まで日本の方が美味しいってね」
「ちょっとないから」
「お水が違うから」
先生は日本の紅茶の美味しさをそこに見ています。
「まずね」
「そうそう、お水ね」
「日本のお水って世界的に見てもいいし」
「イギリスはそもそもお水が悪いから」
「だからね」
「お茶の味はね」
「しかも日本人の凝り性が出てね」
ただお水がいいだけでなく、です。
「葉もいいからね」
「そうよね、そのこともあるのよね」
「日本人って凄い凝り性」
「凝り性過ぎてね」
「葉までいい」
「煎れ方も凝るしね」
「だから紅茶も美味しいんだ」
日本ではです。
「イギリス料理にしてもね」
「日本で作って食べた方が美味しいんだよね」
「僕達から見てもそうだし」
「実際に食べてみてわかったよ」
「日本で食べるイギリス料理は美味しい」
「それもかなり」
「食材もいいんだね、というか我がイギリスの食への造詣のなさはね」
苦笑いで項垂れるしかありません、先生も。
「残念なことだよ」
「世界に誇れるものが数えきれないだけあるのに」
「食べものだけはそうじゃないからね」
「このことからも哲学になるかも」
「ひょっとしたら」
「悪い奥さんを持つと哲学者になるというね」
先生はこうしたお話もしました。
「ソクラテスという人が言っていたよ」
「ああ、ギリシアの」
「古代ギリシアの哲学者ね」
「その人の言葉よね」
「そうだよ、この人の奥さんはとかくガミガミした人で」
そうした意味での悪妻で、です。
「ソクラテスはそうした奥さんを持ったからね」
「哲学者になったんだ」
「ご本人が言うには」
「そうだったんだ」
「そう言っていたね、そしてソクラテスはこうも言っていたよ」
その言葉はといいますと。
「いい奥さんを持ったら幸せになれるってね」
「あっ、じゃあ先生はね」
「幸せになれるね」
「先生が気付いたらそれでね」
「もっと幸せになれるね」
「その幸せになれるっていうのがね」
先生としてはです。
「よくわかないよ、皆いつも言うけれど」
「そう、それが先生だから」
「僕達も困ってるんだよね」
「幸せはすぐ傍にある」
「しかも幸せに最高はない」
今度は皆が哲学者になりました。
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