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追試

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第二章

「だからな」
「数学のことはですか」
「我慢してだ」
 そうしてというのだ。
「やっていくしかないか?」
「数学を勉強しても」
「駄目か」
「どうしても」
「得手不得手があるからな」
 人間にはとだ、先生はこうも言った。
「だったらな」
「私が数学が苦手なこともですか」
「あることだしな」
「それで実際にですね」
「数学だけ駄目だからな」
 それも図抜けてだ、江梨子の他の教科での成績と比較すれば。
「これはもう完全にな」
「得手不得手で」
「仕方ないか、だったらな」
「数学はですか」
「もう諦めるか?」
 こう言うのだった。
「いっそのこと」
「赤点でもですか」
「ああ、それでもな」
 こう言うのだった、先生も。しかし江梨子にしては赤点は取りたくないので重点的に勉強することにした。
 他の教科よりも優先的に予習復習をしてそうして授業もこれまで以上に熱心に受けて居眠りにも気をつけてだった。
 ノートも実に細かいところまで取った、友人達はその江梨子を見て唸った顔になって言った。
「最近頑張ってるじゃない」
「数学も」
「これならいける?」
「数学もね」
「何とかなる?」
「何とかしたいの」
 切実に言う江梨子だった。
「中学までは数学もね」
「よかったの?」
「まさかと思うけれど」
「他の教科に比べたら悪かったけれど」
 それでもというのだ。
「偏差値五十はあったの」
「そうだったのね」
「それが高校に入ったら赤点」
「そこまで落ちたから」
「だからなのね」
「もう中学時代から勉強してね」
 その数学をだ。
「やっていってるの、そしてね」
「それでなのね」
「赤点を取らない様にするのね」
「そうするのね」
「ええ、赤点だけは嫌だから」
 例えどれだけ不得意な科目でもだ。
「そうするから」
「だからなのね」
「中学時代からやりなおしてるの」
「それで授業も必死に受けて」
「予習復習もしてるのね」
「そうしてるの」
 こう友人達に答えた江梨子だった。 
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