追試
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第一章
追試
天満橋江梨子はクラスで数学のテストが返ってきてから言われていた、その言われていることはというと。
「またなのね」
「数学赤点だったのね」
「それで追試だったのね」
「そうなのよ」
憮然とした顔で答える江梨子だった。
「数学だけね」
「他の教科はかなりいいのにね」
「何でか数学だけそうよね」
「赤点よね」
「それだけは」
「そうなのよね、夏休みだってね」
学生にとって貴重なこの時もだ。
「補習だったし」
「というか何でそんなに数学苦手なのよ」
「数学だけは」
「他の理系の科目も出来るのね」
「物理とかも」
「それで何で数学だけなのよ」
「自分でもわからないわよ」
江梨子もこう答えた、わからないとだ。
「どうして数学だけ悪いのか」
「どうしていつも赤点なのか」
「そのことがわからないのね」
「どうしても」
「そうなの、まあ大学は文系受けるつもりだし」
入試にも講義にも数学が関係ないそちらにというのだ。
「高校にいる間だけの我慢ね」
「そうね、けれど高校にいる間はね」
「今はね」
「追試ね」
「あと補習ね」
「それね、嫌なことに」
追試も補習も嫌だ、だが赤点を取った今それは仕方なかった。それで江梨子は追試も補習も受けるのだが、
追試でも点数が悪くてだ、先生にも言われた。
「君は本当に数学は駄目だな」
「どうしてもなんです」
江梨子は職員室で先生に答えた。
「数学だけは」
「そうだな、他の教科はいいのにな」
「どうしてかです」
「数学は駄目か」
「とりわけ」
「受験は文系だったな」
先生は江梨子にこのことを確認した。
「そうだったな」
「はい、そのつもりです」
「君の文系の成績ならかなりの大学に行ける」
レベルの高い大学にというのだ。
「それこそ関関同立だってな」
「行けますか」
「大丈夫だ、だからな」
「今はですか」
「数学は我慢しろ」
「赤点でもですね」
「赤点も一つなら卒業出来る」
流石に四つ以上になると危ないがだ。
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