| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ガンダム00 SS

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

ep8 技術屋の意地

 
前書き
ユニオンのMS技術顧問であるビリー・カタギリが登場します。
時期は1stの国連軍VSソレスタルビーイングです。 

 
時間がない。ビリー・カタギリは自分にそう言い聞かせながらMSの改造作業を続けていた。

国連軍によるソレスタルビーイング掃討作戦『フォーリンエンジェルス』はすでに始まっている。あいにく戦況はここまで届かないが、急がないとビリーの友人の出番がなくなってしまうかもしれない。

ビリーは手をつけている機体を見上げて呟いた。

「あとは機体にエンジンを装着するだけかな」

耐ビームコーティング仕様に黒く塗られたユニオンフラッグカスタムは、バックパックの形状が通常と違う。大型フライトユニットはごっそり廃し、専用エンジンーーGNドライヴのためのパーツを急造してある。

ソレスタルビーイングの裏切り者が3国家群に提供した、ガンダムの動力源とそれを積むMS30機。だが、ビリーの友人はその機体を拒んだ。彼はフラッグを駆ってガンダムを倒すと言って聞かなかった。

そんなユニオンのトップガンに、ビリーは思わず笑ってしまう。

「全く、頑固もあそこまでいくと気持ちいいくらいさ」

そのとき、整備場のドアが開いた。ビリーはこちらに向かってくる足音から相手を察し、顔を向けずに話しかける。

「20分に1回くらいの頻度でくるけど、状況は大きく変わらないよ」

ビリーが振り向くと、そこにいたのはやはりグラハム・エーカー上級大尉だった。しかし、彼の顔はいつもと違って強張っている。怒りや悔しさ、闘志が入り混じったその顔つきには見覚えがあった。

「何かあったのかい?」

「……ダリルがやられた」

ビリーは次の言葉を思いつけず、口を噤んだ。恐らく、グラハムも慰めや鼓舞は望んでいないだろう。

グラハムの右腕とも言える男、ダリル・ダッジ准尉。彼は悔いを残したままフラッグを下り、ガンダムとの最終決戦へと向かった。そんな彼もまた、グラハムの元から消えてしまった。

ビリーは作業を再開する。戦いの状況はどうあれ、フラッグの改造はまだ終わっていない。作業を止めるわけにはいかなかった。

背後からグラハムの声が聞こえてくる。

「私は単に報告をしにきたわけではない。私の中に燃え上がるガンダムへの思いを、フラッグに注入するためにやってきた」

「そうかい。頑張って」

「言われなくともそうするつもりだ。ガンダムは私の顔に何度も泥を塗った。その報いを私の手で晴らしてやりたいのだよ」

「きみならできるさ」

ビリーは手元の機器でGNドライヴと機体のマッチングを確認する。現実的に見ると、機体はアンバランスな状態で仕上がる形となる。何しろ規格外の機体に動力を取りつける突貫工事だ。

「グラハム。機体は変形不可能だからね。ただでさえ機体の状態は劣悪なんだ。ビームサーベルとGNドライヴをケーブルで直結する点でも、きみへの負荷は相当だ」

「先刻承知している。それでも私はフラッグでガンダムに打ち勝ちたい!」

その言葉に、ビリーは口元を緩める。本当に強情な男だ。

ーーけれど、やり甲斐はある。

GNフラッグのデータだけで見ると、GNドライヴを本来載せるべきMSに使っていない点で能力値は格段に低い。武器がガンダムのビームサーベルしかないのもかなりネックだ。

それでも、ビリーは友人のために機体の完成を急いだ。ソレスタルビーイングは今まさに、滅びの道を辿っている。それは名誉なことだが、友人の出番なしでは戦死した彼の部下たちも喜ばないだろう。

ビリーは背後を振り返り、グラハムの顔を見た。

「どうした、ビリー」

「待っていてくれ。この機体ーーGNフラッグはガンダムが消える前に完成させる」

「頼む。時機はすでにきている」

グラハムはそう言ってビリーから背を向けた。

ビリーはグラハムの見送りはせず、機体とGNドライヴの取りつけ作業を始める。ここが正念場だ。

ーーどうせ30分もしないうちにまたくるだろう。

それまでにどうにかしたいところだ。また本人がきてフラッグに闘魂を注入する羽目になる。

「何しろ彼は我慢弱い乙女座だからねぇ」

ビリーは苦笑いを浮かべつつ、正真正銘の欠陥機の完成を進めていく。

終 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧