緋弾のアリア ~とある武偵の活動録~
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~Crime-solving with three bus hijacking - S ranks~
有明 コロシアム の前を 右折 しやがれ です
転んだ女子生徒が落とした携帯から、ボイスロイドの声がする。 さらにマズイ事に、バスが-速度を落としはじめている…!
「武藤、運転変われ!減速させるな!」
防弾ヘルメットを武藤に投げる。
「い、いいけどよ!」
ヘルメットを受け取り様に被ると、他の生徒と協力して運転手を床に降ろし、運転席に座った。
運転の方はひとまず大丈夫だろう。
「俺、こないだ改造車がバレてあと1回しか違反できないんだぞ!」
-大丈夫じゃなかった……。
次は-アリアだな。ヤケクソ気味の武藤の声をバックに、バスの屋上へと上っていく。
「こんなのを都心部に入れるつもりかっ……!」
豪雨の中、バスは高速で走っていく。
いわゆる箱乗り状態になりながら、なんとか振り落とされないように耐える。レインボーブリッジ付近の急カーブに、ぐらり- バスは一瞬片輪走行になったが、武藤のかけ声で重心を左に集め横転しないように操っていたのだ。さすがだな、車輌科の優等生なだけはある。
猛スピードで入ったブリッジには-車が一台もいない。
警視庁が手を回したんだな。見晴らしがいい。
「レキ、狙撃のチャンスだ。適当なタイミングで車体の下にある爆弾を海へ落としてくれ 」
『分かりました』
バスの屋上に上る。
-「アリア、大丈夫か!」
「彩斗!」
俺が屋上に上ってきた時に、ワイヤーで上に上がってきたアリアが顔を上げた。
「ヘルメットはどうした!」
「さっきのルノーにぶち割られた!あんたこそどうしたの!」
アリアが俺の頭を指して言う。
「武藤に被せてある!それに俺のことは心配ない!もう-なってる! 」
その一語で理解したらしく、(ありもしない)胸を撫で下ろしていた。
ウォンッ-!ルノーのエンジン音が…!
振り向き様にベレッタとDE(デザートイーグル)を抜く。いつの間にかバスの前方に陣取っていたルノーが、UZIをぶっぱなすのがESSの視力と反射神経で見えた。
2発。頭の側面ギリギリを狙って来ている。-このままじゃ…当たる! …今、この瞬間。スーパースローのように弾丸が見えている。その間に、とっさに対抗策を練る…!
-弾丸は俺の約5m先。大丈夫、まだ間に合う-!
パンっ、ドォン!!
ベレッタとDEを発砲する。その弾丸の向かう先は-UZIから発砲された、9mm弾。その側面を掠め、9mm弾の軌道を逸らす。もちろん、後ろのアリアにも当たらない軌道で。
.50Express弾の威力が半端ないこともあり、2発のうち1発は大きく軌道がずれた。
銃口撃ちに続いて2個めの技、銃弾逸らし(ビリヤード)。弾が弾に当たるからな、ビリヤードっぽいだろう?
なんて言ってる場合じゃない。次だ、UZIの機動力を無くし、ルノーをパンクさせ-ようと思った時。
-バギュン!バギュン!
アリアのガバメント-.45ACP弾が、UZIを破壊する。
そして、
『私は1発の銃弾』
『銃弾は人の心を持たない。故に、何も考えない-』
『-ただ目的に向かって飛ぶだけ』
来た、レキが狙撃するときの癖だ。詩のようなものを呟き-直後、
-タァン!
レキのドラグノフが、ルノーのタイヤをパンクさせる。
パンクしたルノーは突如スピンし、ガードレールにぶつかって爆発した。
『私は1発の銃弾……』
第2弾、来るぞ。ぱっ、ぱっぱっ。と銃口を3度光らせたあとに、
-ギン!ギンギギン!
一拍遅れて、着弾の衝撃が伝わってくる。
ガンッ!ガンガラン! と何かの部品が落ちる音がして、
道路に転がっていく。爆弾だ-。
『-私は1発の銃弾-』
ギンッ!部品から火花が散り、サッカーボールのように飛び跳ねた爆弾は-橋の中央分離帯、その下へと落ちていく。
-ドオオオオオオオンッ!!!
バスは次第に減速し、止まった。中からは武藤の歓喜の声と、乗客の皆の声が聞こえる。
「ひとまず…一件落着、だな。アリア」
「そうね。っていうかあんた、さっきのどうやったの?」
銃弾逸らしの事か。
「UZIの9mm弾に自分の弾を当てた」
「よく見えたじゃない。しかもそれを当てるなんて」
「まぁ…な。さて…レキ、撤収していいぞ。負傷者の確認と後始末は衛生科と鑑識科に任せる」
『分かりました』
そう答えた後、ヘリは女子寮の方へ向かっていく。
「じゃあ、あたしも帰るわ」
「だったら、俺はC装備を強襲科に戻してから帰る」
「いってらっしゃい」
-C装備を強襲科に戻した後、ちょっと気になる事が
あったので…ある人を呼び出した。そのため今、女子寮前の温室に向かっている。 ここはいつも人気が無く、待ち合わせにはうってつけなのである。
「理子」
「あっ!あっくぅーん!」
手を振りながら大声でそのあだ名を言うか…!
-コイツはアリアと変わらないくらいちっこい。うん、
まるでロリのようだ。あ、ロリか…クラスのあだ名が
『ロリ顔巨乳』だった気がする。
二重の目は大きく、金髪のツーサイドアップにツインテールを増設した欲張りというかなんというか-な髪型である。ちなみに美少女の部類に入る。
「安定の改造制服かよ…」
「これは武偵高の女子制服・白ロリ風アレンジだよ!いいかげんロリ服の種類くらい覚えようよー」
「覚えて何の得がある。っていうかどんだけ制服持ってるんだ…」
「えーっと……」
と指を折りながら数える理子はほっといて。鞄から厳重に紙袋で包装されたゲームの箱を取り出す。
「ほら、こっち向け」
「うー!ラジャー!」
両手でビビシッ!っと敬礼した。何の意味がある。それには。
「ここでの事はアリアには秘密だからな。もししゃべったらDEで近接拳銃戦(アル・カタ)だからな」
「えー…ちょっと理子、それはやだなー」
と言って、箱を取り…鼻息を荒くしながら包装をビリビリ破いていく。まるでケダモノだな。
「うっわぁー!『しろくろっ!』と『白詰草物語』と
『妹ゴス』だよぉー!」
えー。理子がぴょんぴょん跳び跳ねながらぶんぶん振り回しているのは-R15指定。通称ギャルゲーである。
-服装から分かるとおり、理子は…オタクである。ただ
普通のオタクとはちょっと異なり、女のくせにギャルゲー好きとかいうちょっと奇特な趣味の持ち主なのだ。
もちろん理子も15歳以上なので、このゲームを買えるのだ-が、店員が理子の身長・見た目を見て15歳以上と判断しなかったらしい。で、俺が理子に依頼をする代わりにこのゲームを買わされた。
「あ…これと、これはいらない。理子はこういうのキライなの」
ぶっすぅー、と膨れっ面で返してきたのは…妹ゴスの2と3。続編だ。
「何でだよ、これ。シリーズ物だからいいんじゃないか?」
「ちがう。2とか3なんて別称。個々の作品に対する侮辱。イヤな呼び方」
ワケわからん。武藤にでもやるか。
「分かったから、本題に入るぞ。調べてきたんだろ?」
「-あい!」
探偵科のキンジからの情報で知ったのだが…バカなりに1つ、長所があるらしい。
それが-ノゾキ・盗聴盗撮・ハッキングである。ここはネット中毒患者が幸いした、のか……?
実力もその分、Aランクらしい。
「じゃあまずは…評価は?」
「えーっと、まずランクはS。あと理子よりちっちゃいのに、徒手格闘も上手くてね。流派はボクシングから関節技まで何でもありの…たしか…えーっと、バリ…バリ…バリトゥ?」
「バーリトゥードか?」
「そうそう、それ!イギリスじゃあ縮めてバリツって呼ぶんだよ。拳銃とナイフはもう天才の領域。両利きなんだよ、あの子」
「それは知ってる」
「じゃあ2つ名は?」
うーん……? という顔をすると、
「双剣双銃のアリア」
-理子の言葉に納得がいく。武偵用語で2丁拳銃ないし二刀流は、ダブラと呼ぶ。カドラとは恐らく、4つの武器を持ってるって意味だろう。
「分かった、次だな。じゃあ…実績とかは?」
「いいとこ来るねー!そこはすごい実績があるよ。まず…今は休職中みたいだけどロンドン武偵局の武偵として、ヨーロッパ各地で活動しててね…… 」
「その間、1回も犯人を逃がしたことが無いんだって。
99回連続、全部1回の強襲で成功してる」
す、すごいな…それは。そんなのがパートナーなのか。
「あー… 他だ。体質とかは?」
「お母さんが日本人、お父さんがイギリス人のハーフだよ。で、イギリスの家が『H』家なんだよね。すっごく高名な一族らしいよ。おばあちゃんはDame(デイム)の称号を持ってるみたい 」
「Dame…ってことはリアル貴族なのか……アイツ」
「そ。でもアリアはH家とは仲が悪いみたいで、その名前を言いたがらないんだよね。理子は知ってるけど、あの一族はちょっとなぁー 」
「もったいぶらないで教えろ」
「イギリスのGoogleで検索かければ当たるかも?」
「英語なのか…。分かった、今日はありがとな。帰る」
「えー、もう帰るのー? ばいばーい!」
「じゃあな」
温室を出て、回りに人がいるかを確認し-ぶわん。境界を開き、家に帰る。
「お帰り。遅かったわね、何してたの?」
リビングに行くとアリアが鏡を持ちつつ、そう言ってきた。
「さすが貴族だな。身だしなみにも気を遣ってるわけだ」
「……あら、調べたのね」
何でか、ちょっと嬉しそうに返してくる。
「まあな。一応パートナーの事は知っておこうってくらいだ」
……………………………………………………
-「ふわぁ……。ちょっと昼寝するか…」
「あんた最近すぐ寝るわよね。何かあるの?」
「ESS-つまり、なったとき。脳をフル回転させているわけだからその分、大脳にかかる負担が大きくなる。だから、長時間ESSになったときは長時間の眠りを必要とする。短時間の場合は少しの仮眠でいい」
「へー。めんどくさい体質ねぇ」
「まぁ、な。と言うわけで、寝る。夕飯前には起こしてくれ」
「はーい」
~Please to the next time!
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