IS~夢を追い求める者~
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最終章:夢を追い続けて
第61話「親友たち」
前書き
―――俺達なんかにできる事は限られてる。でも、それでも手伝わせてくれ
(言えない…!今更アニメに登場していない御手洗数馬の口調がわからないなんて言えない…!)
…と言う事なので、口調の違いは見逃してくれるとありがたいです。
それと、自分の書いている別の小説で指摘された事を今回から実行しています。(セリフ文の最末尾の読点を付けないようにしたり、“...”を“…”に変えたりなど)
さすがに指摘された方の小説で手一杯なので、この話以前の話を修正する予定はありません。ご了承ください。(余裕があれば直します。)
=秋十side=
「…早すぎたな」
現在、俺がいるのは街に住んでいる者ならほとんどが知っている公園の一画だ。
今は待ち合わせのためにここにいる。
「あっきーの親友ってどんな人達なの~?」
「そうだな……」
護衛兼同行者としてついてきた本音に聞かれ、簡単に説明する。
ちなみに、本音以外に簪もついて来ている。
本音は簪の付き人だからな。当然と言えば当然だ。今回は簪も護衛だけど。
「確か予定では9時だったよね?」
「今は50分…やっぱり早いな」
どうやら予定より割と早い時間についてしまったようだ。
まぁ、遅れるよりはいいけどさ。
「えっと…まず会ったらどう挨拶すれば…」
「そこから!?」
「あー、かんちゃん人見知りな所もあるからね~」
いつもと違って静かに混乱している簪。
確かに見知らぬ男性との初邂逅だから緊張するのも分かるけどさ。
「…さすがに暑いな」
「木陰があってよかったね~」
忘れがちだが、本来なら今は夏休みだ。
…IS学園がなくなったから夏休みどころじゃなかったしな……
「…っと、来たみたいだ」
「あの三人がそうなの?」
「ああ。バンダナをしている赤髪の方が五反田弾。もう片方が御手洗数馬。最後に弾の妹の蘭だ」
どうやら途中で合流したようで、三人一緒にやってきた。
「お、おはようございます秋十さん!」
「おう。今日は悪いな。態々集まってもらって」
「い、いえ…!」
俺達に三人が気づくと、真っ先に蘭がやってきた。
なんか緊張してるっぽいけど大丈夫か?
「ったくよー、本当にきついぜ。この暑さは」
「夏…だからな」
「理解はできるが納得したくねぇな…」
近年はさらに暑さを増している気がする。
これが地球温暖化か…。…正直、束さん達なら何とかできるんじゃね?
「それでこちらが…」
「更識簪…簪でいい」
「かんちゃ~ん、私の後ろにゆっくりと隠れちゃだめだよ~?」
人見知りを発動した簪が、少しずつ本音の後ろに移動しつつ自己紹介する。
…いや、いい加減克服しようぜ?そこまで男性が苦手か?
「あ、私は布仏本音だよ~。かんちゃんの~、親友兼従者だよ~」
「えっと…五反田弾です…」
「妹の蘭です」
「…御手洗数馬だ」
本音ののほほんとした雰囲気に戸惑いながらも、三人は自己紹介を返す。
…とりあえず、お互い遠慮しすぎだと思う。
「まずは移動だな。ISを所持してるってばれたらまずいし」
「って言ってもよぉ、どこに行くんだ?今の時期、どこもまずいだろ?」
弾の言う通り、今はどの研究所も行くべきではない。
桜さん達から送られたISなんて、明らかに変に勘繰られるからな。
うちの会社なら見る事はできるが、その場合は折角安定してきた会社の立場が再び不安定になってしまうから、こっちも却下だ。
…となれば、今行ける場所は一つ。
「更識家だ。簡易メンテできるぐらいには設備もあるし、何より誰かに見られてしまうという事がない。できる事も限られるが、それを踏まえて一番適している」
「とりあえず車に乗って移動しよ~!」
ここで話し続ける訳にもいかないので、移動するべく本音が三人を押す。
元々ここに来るために車を使っていたため、移動する際もそれを使う。
…あ、当然だけど運転手は運転手でいるからな?今も車で待機してるはずだ。
「でけぇ……」
「大きい…」
「こんな家見るのはテレビ以外じゃ初めてだぜ……」
更識家に着いた際に、三人共その家の大きさに驚く。
まぁ、当然だろう。普通の家に住んでいたら大きいと思うのは当然だ。
「まぁまぁ、とりあえず入って入って~」
「客間があるからまずそこに案内するするね…」
本音が催促し、簪が案内する。
簪は車で移動中、少しは慣れたみたいだな。
「…な、なんか落ち着かねぇな…」
「……まぁ、気持ちは分かる」
旅館みたいだもんな。でも、家だ。
だからこそ落ち着かないのだろう。
「そうだ。言い忘れる所だったが、これから会う人物に対して何か思う所があるだろうが、できるだけ我慢してくれ」
「……どういうことだ?」
「…会えばわかる」
弾たちはIS学園での事をあまり知らない。
知っているのは俺がどんな感じで暮らしていたとか、他愛もない部分だけだ。
……だからこそ、驚くだろう。…それだけでは済まないだろうが。
「ここだよ~」
「一体、誰がいるって…ん……だ……」
客間に入ると、そこには楯無さんと……千冬姉とマドカ、そして兄さんがいた。
虚さんは少し席を外しているようだ。
「ッ……!」
「なんで……!」
当然、マドカを除いた二人を視界にいれた弾たちは驚きと怒りを顔に出す。
マドカは以前会って和解したから、気まずさはあっても大丈夫だからな。
「………」
「………」
一方、千冬姉と兄さんも黙り込んでいた。
二人共責任は感じており、千冬姉はそれでも堂々と、兄さんは申し訳なさで俯いてしまいそうなのを堪えているような面持ちだった。
「秋十!どうして…!」
「だから我慢するように言ったんだ。…じゃないと、即殴り掛かってただろう?」
「だけどよ…!」
これでも抑えている方なのだろう。
とりあえず、千冬姉達がここにいる訳を話さないとな。
「いつまでも和解しないままじゃ、このままだといけない。…もう、昔みたいな事にはならんさ。だから、ケジメのためにこの場を用意したんだ」
「秋十……」
そういって俺は簪と本音、楯無さんと共に端の方に移動しておく。
……ここからは、千冬姉達の問題だ。
「……許してくれなんて、そんな事は言わない。何なら気が済むまで殴っても構わない…。だけど、これだけは言わせてくれ…。……本当に、本当に!今まですまなかった!!」
そういって、兄さんは土下座をした。
同時に千冬姉とマドカも頭を下げた。
…楯無さんと簪が驚いている。確かに、千冬姉のこんな姿は見る事はない。
裏を返せば、そんな姿を見せる程、千冬姉は申し訳なく思っていた訳だ。
「私も、姉でありながらあのような仕打ちをしてしまった…。私にできる事なら、どのような償いも受けよう」
「…私も、改めてごめんなさい」
本来なら言う相手は俺だろう。
だけど、その俺はもう許したり和解したりしている。
だからと言って代わりと言う訳ではないが、弾たちに謝ったのだ。
「二人は悪くない!……俺が、俺が全部そう仕向けたんだ。相応の報いは受ける。だけど、事前に謝らせてほしかった」
「………」
弾たちは三人のその姿に戸惑っていた。
やがて、どういう事か理解して…。
「っ…今更謝った所で、簡単に許せると思ってるのか!?」
やはりと言うべきか、弾は激昂した。
「思ってない!だから、報いを受けるためにここにいるんだ。……言ってくれ。お前は俺をどうしたい?俺にできる事なら、なんだってやるつもりだ」
兄さんは、既に覚悟を決めていた。
本来なら、あの襲撃の時に命を捨てるつもりだった程だ。
それほどに兄さんはかつての行いを反省し、悔いていた。
「っ、歯ぁ食いしばれ!!」
「ッ!!」
その直後、弾が前に出て兄さんを思いっきり殴った。
「……一発。一発だけだ。お前が秋十にした仕打ちの報いと、俺達がお前に受けさせる報いは、この一発で済ませてやる…!」
「弾……」
色々と言いたい事はあるのだろう。
そして、本当はボロボロになるぐらいまで痛めつけたい程、怒りもあるのだろう。
だけど、弾はそれだけで済ませた。
「…どう始末つけるのかは秋十が決める事だ。俺達は、これでいい」
「……そう、か…」
そう言われた兄さんは、安堵とやるせなさを混ぜたような複雑な顔だった。
過去の自分が許せないからこそ、この程度で済んだのが拍子抜けだったのだろう。
……もっと、自分を責めてくれた方が心にきっちりケジメを付けれたのかもな。
「…さて、謝罪もいいけど、本題に入りましょうか。」
「……そうだな…。では、しばらく退出しておこう」
楯無さんの言葉に千冬姉達は一度退出する。
謝罪は本題じゃなかったからな。本題のためにも、三人には席を外してもらう。
「さて、私は貴方達の事を知っているけど、貴方達は私の事を知らないわね。先に自己紹介をしておくわ。私は更識楯無。この更識家の現当主にして、IS学園の二年生の生徒会長だった者よ。」
「当主…」
まさかの当主だった事に驚く弾たち。
…ついでに言えばシスコンでもあるけど…それは言わなくてもいいか。
「今回、この家に来てもらったのは、詳細が不明なISを貴方達が持っている事。現在、他のIS研究所では貴方達は混乱の元となりかねないからよ。…そこの所は分かっているかしら?」
「い、一応は…。本来、専用のISなんて持つ事もない身ですし…」
「それ以外にもあるのだけど…まぁ、碌でもない連中に狙われる可能性があるから、この家に呼んだの。…そういう訳で、色々確かめさせてもらうわ」
そういって、楯無さんは弾たちに質問を始めた。
いつISを手に入れたのか、そのISをどこまで知っているのか。
手に入れる切っ掛けやそれに心当たりはないかなど、色々と聞かれた。
俺が既に伝えてあることも再度聞いたりもした。
「なるほどね……」
「お姉ちゃん」
「うん、裏付けも取れて、怪しい所もなし。大丈夫ね」
簪が何かの資料を楯無さんに渡して、楯無さんは一人納得する。
……って。
「裏付けって…?」
「状況が状況だから、何事も裏を取らないとダメなの。口頭や状況だけで判断できないからね。まぁ、今回は念を入れての事よ。あまり気にしなくていいわ」
こういう状況を悪事に利用する輩も少なくないだろう。
というか、IS学園を襲った奴らもその類だし。
だから、ちゃんと裏付けが必要と言う訳だ。情報って重要だもんな。
…まぁ、今回は差出人が桜さん達だから形式上の確認でしかなかったけど。
「さて、まずはどういったISなのか確認しに行くわ。そのための場所があるから、そこに案内するわ」
「は、はい!」
弾と数馬は知識量の問題で少し置いてかれているようだ。
代わりに蘭はISの知識はある程度持っているようで、戸惑いつつも返事を返した。
「ここよ。ここは主にISの整備を行う場所。…と言っても、研究所には劣るわ」
「ここが……」
渡り廊下を歩き、その先の部屋に着く。
そこには、虚さんがおり、既に準備をしていたようだ。
「あの人は……」
「私の従者で、本音の姉よ」
「お待ちしてました。本音の姉で、虚と申します」
俺達に気づいた虚さんはこちらへやってきて弾たちに頭を下げる。
その後、何故か弾の方をじっと見て…
「あ、あの…何か…」
「あ、いえ、なんでも…」
…と言う、何か違和感のあるやり取りをした。
「ん~?ふ~ん…」
「へぇ……」
そんな虚さんを見た本音と楯無さんは、何かに気づいたように笑みを浮かべる。
「とりあえず、ある程度の準備は済ませておいたわ。まずは起動と最適化を試みて頂戴。そこから色々確かめていくから」
「は、はい!」
楯無さんの言葉にまず蘭が展開を試みる。
続けて弾と数馬も勝手がわからないながらも展開を試みた。
……だが、ISは展開されない。
「…あ、あれ…?」
「まぁ、現在は一般的にISは動かせないって事になっているからね…やっぱり、特別って訳じゃないのね」
予想はしていたとはいえ、やっぱり理由や想いもなしに展開はできないらしい。
「えっと、これはどういう…」
【はろはろー!束さんだよー!このメッセージが開始されたって事は、送ったISを動かそうとしたって事だね!でも、動かせなかった訳だ!】
蘭が何か言おうと口を開いた瞬間、映像が現れる。
そこに映っていたのはなんと束さんだった。
【あ!残念だけど、これは録音音声だからそっちの問いには答えられないよ?いやぁ、実はもう一つ録音データがあったんだけど、私達の計画を早める事になって急遽メッセージ内容を更新……え?本題に移れ?はーい】
「束さん……」
桜さんの声が若干聞こえて、束さんは本題へと移る。
【まずはお礼と謝罪を。……ありがとう。君達があっ君の事を大切に思っていてくれたおかげで、あっ君は生きてこられた。そして、ごめんなさい。私がヘマをしなかったら、あっ君があんな目に遭う事はなかった】
「………」
感謝と謝罪を述べる束さんのメッセージを、皆は黙って聞いていた。
束さんが感謝と謝罪を述べるのが珍しいのもあるが、内容が内容だったからだ。
「これって…」
「…ああ、俺が桜さんに救われる前の事だ」
「……」
三人共、各々思う事があるのか黙り込んでしまった。
確かに結果的に見ればプラスになった事ではあるが、弾たちにとっては俺をあの状況下から救い出す事は出来ず仕舞いだったも同然だからだ。
【……しんみりとした空気にさせちゃった所悪いけど、次に移るね】
「(やっぱりどこかで見てるんじゃないだろうな…?)」
弾たちが少し落ち着くまで束さんのメッセージは止まっていた。
この間すらも予想していたのだとしたら…あれ?そこまでおかしくないと思える自分がいる…。…あの人たちの事だし、考えるだけ無駄か。
【さて、君達がISを動かせないのは、まぁ当然だね。だって、まだ“初対面”なんだから。だから、まずは“会話”を試みてね】
「会話…って言われても…」
【え?やり方を伝えろって?…あ、そうだね。やり方はある意味単純。マンガとかでよくある感じに、ISに触れて念じてみて。IS側から問いかけてくるから】
束さんのメッセージの通りに、弾たちはそれぞれのISに手を当てる。
そして目を瞑り、しばらく無言が続く。
…多分、今頃弾たちはISコアの人格と会話しているのだろう。
「あの…秋十君、少しいいでしょうか…?」
「…?どうしたんですか?」
少しの間時間がかかるので、待っていたところ、虚さんが話しかけてきた。
「いえ、先程の…五反田弾君…でしたか?赤いバンダナの…」
「弾がどうかしたんですか?」
先ほど少し弾をじっと見つめていたが…。
「どこかで会った事があったり?」
「いえ、そういう訳ではなくて…」
そういって口ごもる虚さん。
…なんだか、いつもの虚さんらしくないけど…。
「あ、あの、彼の事、色々と教えてもらえませんか?」
「色々って…」
趣味とか、好物とかか?
…と言うか、ここまでくれば俺でも察せる。
「虚さん、もしかして……」
「っ……!」
…どうやら、本当のような。通りで楯無さんと本音が笑みを浮かべる訳だ。
まぁ、弾も容姿は悪くない。むしろ良い方だと言えるからな。
好みのタイプだったってだけだろう。
「い、今の話はなかったことに…!」
「え?あ…」
顔を赤くして虚さんは別の事をしようと端の方で移動した。
代わりに今度は楯無さんがやってきた。
「ふふ、意外よね。彼女があそこまで狼狽えるなんて」
「楯無さん、もしかして虚さんは…」
「ええ。そうよ」
俺が何の事か言う前に楯無さんは肯定する。
「…本当に意外ですね…。いや、別に弾も顔が悪い訳じゃないですけど」
「今まで色恋沙汰に興味がなかったから、隠してるつもりだけどバレバレなのよね…」
あの虚さんがあそこまでわかりやすく狼狽えるのは新鮮だ。
…いや、さすがに楯無さんのようにからかうつもりはないけど。
「と言うか、もしかしたら彼女自身、今抱いている気持ちがどういったものなのか理解しきれていないかもしれないわね」
「いや、さすがに…ありえますね…」
別におかしい事じゃない。
今まで知らなかった、感じた事のなかった感情であれば、どう言うものか分からなくてもそこまでおかしくはないからな。
「(とりあえず、虚さんご愁傷様です…)」
この場はともかく、後で楯無さんと本音にからかわれまくるだろう。
マドカも知ったらからかう側に回りそうだし…。
……いざとなったら助け船を出そうか。簪辺りなら手伝ってくれそうだ。
【……終わったみたいだよ。皆、秋十を大切に想っていただけあるよ】
「ん?と言う事は…」
【認められたよ。妹たちに】
見れば、弾たちはISを纏っていた。
…ん?“妹”…?白にとって他のISコアの人格は姉のはず…。
「…もしかしてだが、弾たちのISコアは…」
【うん。お母さんが新たに生み出してくれたコアだよ。だから妹なの】
…ますます他に知られる訳にはいかなくなったんだが…。
【後は秋十に任せるよ。それじゃあね】
そういって、白はどこかへ去っていった。
…迂闊な行動はしないはずだから、放っておいてもいつの間にか戻ってくるだろう。
「…どうだ。ISに乗った感じは」
「……なんていうか…まさにロボット物って感じだな。想像していた感覚に似ているぜ」
「けど、まだ違和感が…」
乗った事がないためか、二人共新鮮な感覚らしい。
それで、違和感についてだが…。
「多分、まだ最適化が済んでないからだと思う…」
「おそらくそれだな。さすがに蘭は気づくか」
蘭は気づいたようだ。訓練機にはないが、専用機にはあるからな。
「なんだその…最適化は?」
「簡単に言えば乗り手に合わせる機能だ。まぁ、無駄をなくす感じだな。他で使う最適化と同じ意味で考えて構わない」
「なるほど。それで、それが終わるのは…」
「本来なら少しかかるけど…」
…と、そこまで言った所で弾たちのISの形が少し変わる。
「…やっぱり、桜さん達が用意したのもあって、すぐに終わったか」
「……みたいだな」
元々三人に渡すISだったんだ。三人のデータを入力済みでもおかしくない。
「しかし、三人共随分あっさりと認められたな」
「……そうね。もしかしたら、ISに対しての印象が私達とは違ったからじゃないかしら?」
「印象…?」
「IS学園に通うようになった私達…と言っても秋十君とか一部の人は別だけど、生徒達は皆、誰であれスポーツなどに使う代物として見るようになっていたの。だから、宇宙開発のために生み出されたISは乗る事を認めなかった。…別の用途として使おうとしてたもの」
代表候補生や、一般生徒も、全員が宇宙開発のためのパワードスーツとしては見ていなかった。さらには、ただの道具として見ていた者もいる。
……そう言うものだと、教えられてきたからな。
「でも、弾たちは違う…」
「そう。秋十君と同じように、三人共他とは違った視点を持っていた。それが大きな理由ね。…他にも、今までISに乗っていなかったからって言うのもあるんじゃないかしら?」
お互い、先入観がなかったからこそ、すぐにわかり合えたという事だろう。
けど、だとしてもそれだけで乗れる訳ではない。
何か認められるような意志を見せたという事なのだろう。
「えっと……どうやれば降りれるんだ…?」
「あぁ、それならね…」
若干放置されていた弾たちが、降りる方法を聞いてきた。
楯無さんが説明し、とりあえず一度ISを解除した。
「試行運転はここではできないから、また別の場所で行うわ。せっかく来たのだから、少しゆっくりしていくといいわよ」
「準備ができるまで客間で語らいあってきなよ~」
ここからはまたデータとかを確かめながら準備が必要なようだ。
時間を要するとの事なので、客間に戻ってしばらく待つ事になる。
「えっと確か……」
「客間までの道のりなら俺でもわかる。案内するぞ」
「頼む」
とりあえず、俺達は一度客間へと戻る。
…楯無さん達も、敢えてこの時間を設けたのだろう。
更識家の手際なら語らう程の時間は取らないからな。
「……それにしても、よくあんなにあっさり認められたな。別に、俺や桜さん達みたいに大空や宇宙に羽ばたきたいって感じの願望はないだろう?」
「俺としては認められる基準がわからないんだが…」
…確かに、俺も認められる基準を知らない。
まぁ、悪用とかしなければ大丈夫って印象だけど…。
「…別に、俺は秋十を支えれるようになりたいって言っただけなんだがな…」
「……そうなのか…」
「……やべ、実際に口に出すと恥ずかしいな。これ…」
俺のため…つまり人のための想いがあったから、認めてくれたんだろうな。
「え?弾もそうだったのか?」
「あれ?数馬もか?…って、蘭まで?」
数馬と蘭が自分と同じような事を言ったらしく、驚いていた。
弾も全員が同じだったことに驚きが隠せないようだ。
「…まぁ、なんだ。俺達なんかにできる事は限られてる。でも、それでも手伝わせてくれ」
「……ありがとう」
俺はかつて、弾と数馬に支えられていた。蘭も俺に対して普通に接してくれていた。
……できる事が限られているとは言うけれど、当時最も救いになったのは弾たちだ。
「……だーっ!もうこの話はやめよう!俺が恥ずかしくてかなわん!」
「自分で言っておきながらそれはないだろ弾」
「俺にこんなセリフは合わないっての!」
……まぁ、確かに弾には似合わないなぁ……。
「まぁまぁ。俺としては、我儘で弾たちを巻き込んだようなものなんだ。それでも手伝ってくれるだけ、ありがたい」
「……ったく、お人好しだな…」
「秋十さん……」
「お前そういう所、以前から変わらないよな」
「そうか?」
いう程俺は自分をお人好しだとは思ってない。
元々復讐もしようとしていたしな。
「ああ。機会こそ少ないが、全然変わっちゃいない」
「そうだな。蘭を助けたのもそうだしな」
「お、お兄!その事は…」
「……そういうもんか?」
蘭を助けた時…と言うか、初めて会った時の出来事だけど、弾とはぐれて迷っていた蘭と偶然出会っただけなんだけどな。
困っているのに付け込んで絡んでた奴もいて、追い払ったりしたけどさ。
「そういうもんだ」
「そうか…」
これはあれだろう。
お人好しと言われても本人からすればどうという事はないって感じの。
別に、自惚れてる訳じゃないが、そう思われてるならそうなんだろう。
「……話は変わるけどよ、IS学園がなくなった今、秋十はどうなるんだ?」
「そういやそうだな。まだ高校生なんだから別の学校に転校か?」
「うーん……どうだろうなぁ…」
正直、そういう話はあまり聞いていないが…。
「まぁ、手頃な高校に行くだろうなぁ。一応、IS学園の学習過程を自宅でできるように、資料は配布されるようだけど」
「学園での学習過程って……そんなの資料にしたら…」
「…まぁ、本の山になるだろうな」
さすがに随時送る形になるだろう。
「転校ってなるなら、藍越学園に来ないか?」
「藍越学園か?」
「学費が安い上に、就職率も高い。結構いい条件だと思うが?俺達もいるし」
二人もいるのか…。けど、桜さんを追いかける必要もあるしな…。
……いや、待てよ?別に高校生活を潰してまで焦る必要はないような…。
「(第一に、探すにあたって俺にできる事なんて限られてるしなぁ…)」
俺はそう言った類の能力は身に着けていない。
と言うか、身に着ける程余裕があった訳じゃなかった。
そう言うのができるのはある程度大きい組織か、千冬姉ぐらいだろう。
だから、探すのは千冬姉とかに任せておこう。
「……よし、行けるのなら藍越を目指してみようかな」
「お、本当か?」
「せめて高校ぐらいは卒業しておきたいしな」
というかいい加減普通の学校生活を送りたい。
……こんな状況になって言う事じゃないけど。
「準備できたよ~」
「っと、もうそんな時間か。じゃあ行こうか」
試運転の準備が終わったようで、本音が呼びに来た。
…さて、弾たちのISはどれほどの性能なのやら…。
飽くまで宇宙開発が目的なら、相応の性能だったりするのか?
ともかく、実際に動かして確かめないと分からないな。
後書き
親友達(しんゆうたち)じゃなくて親友達(おやともだち)って読んでしまいそう…。と言うか何度かそう読んでしまいました。
P.S.感想で読み間違えるならひらがなにすればいいと指摘を受けましたので、変更しました。ぶっちゃけ、盲点でした(´・ω・`)
スペックなどを記載した書類もない(ゲームソフトでソフト本体しかないようなもの)ので、実際に動かして機能を確かめている感じです。ただし、更識家とは言え研究機関より設備が圧倒的に劣っているので表面部分しかわかりませんが。
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