ヘタリア大帝国
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16部分:TURN2 連合艦隊司令長官その四
TURN2 連合艦隊司令長官その四
「それは宜しいですね」
「俺がかい?帝に不敬を?」
「そうです。絶対になりません」
「俺が帝に不敬を働くと思ってるのか」
「まさにその通りです」
確信している言葉だった。
「だから今こうして釘を刺しているのです」
「やれやれ、信用がないな」
「信用できる筈がありません。全く山下さんはあそこまで真面目な方なのに」
ここでもこの名前が出る。
「貴方はどうして」
「俺は俺さ。あの人とはまた違う」
「それでどうして帝も祖国様も目をかけておられるのか」
「それは俺に見所があるからな」
「何処がですか」
「それでだ。じゃあ今からだな」
「はい、お招きします」
こう言ってだ。そのうえでだ。
彼女は東郷、それに秋山を宮殿の一番奥の部屋の前、見事な和紙の障子の前に案内した。そしてそこでだ。
彼女はだ。こう言うのだった。
「では中に」
「はい、それでは」
秋山が応える。
「入らせてもらいます」
「では」
「秋山さんはいいのですが」
またこんなことを言う彼女だった。東郷をジロリと睨みながら。
「東郷さん、わかっておられますかね」
「帝にだな」
「若し何かあればその時は容赦しません」
刃を持っていた。心に。
「この女官長であるハルが帝を何があろうとも御護りしますので」
「だから俺もかい?」
「何かあればお覚悟を」
完全に本気の言葉だった。
「切腹して頂きますので」
「また随分過激だな」
「御不敬は一死を以て償って頂きます」
それでだというのだ。
「おわかりになられたでしょうか」
「まあ俺はそうしたことはしないがな」
「常に見ていますので」
東郷にこう告げたうえでだ。女官は部屋の扉を開けた。その中はかなり広い畳の部屋だった。それこそ一見したうえでは何十畳あるのはわからない。
奥の方が一段上になっており座布団が一つ置かれている。下の段にも座布団がそれぞれだ。その上の座布団から見て左右にそれぞれ並べて整然と置かれている。
天井は檜で見事な欄間もある。その部屋の中にだ。
東郷は秋山と共に入った。するとすぐにだ。
カーキ色の陸軍の軍服、下はタイトのミニだ。付け根の辺りまで露わになっている長い見事な脚はブラウンのストッキングで覆われている。
軍服の上からもわかる見事な胸に腰だ。後ろのラインも実にいいことが窺える。
黒髪は腰までありそれを後ろで束ねている。気の強そうな引き締まった顔をしている。
黒い切れ長の紅い瞳は実に奇麗で唇は小さく引き締まっている。その美女がだ。
東郷を咎める目で見てだ。こう言ってきた。
「遅いぞ」
「ああ、利古里ちゃんか」
「利古里ちゃんではない」
美女は厳しい顔のままで東郷に返す。
「山下と呼べ。私の姓でな」
「名前で呼んでは駄目なのか?」
「いつも言っている筈だ。私は貴様と馴れ合うつもりはない」
山下利古里はこう東郷に告げる。
「それに私は貴様のそのいい加減なところは嫌いだ」
「そんなにいい加減かね、俺は」
「かなりな。特に今は帝の御前だ」
それならばだというのだ。山下も。
「粗相のない様にな」
「わかってるつもりなんだがね」
「いいや、御前はわからん」
もう一人出て来た。今度は。
スキンヘッドに八の字の口髭、それに丸眼鏡の厳しい顔立ちの初老の男だった。海軍の軍服を着ている。
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