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ドリトル先生と春の花達

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第五幕その十

「楽しもうね」
「いつもそうしてくれるのが嬉しいのよ」
「先生は一人で何かを独占する人じゃないから」
「楽しみや贅沢はね」
「僕達もいつも一緒に楽しませてくれるから」
「本当にいいのよ」
「一人で楽しんでも」 
 そうしてもというのです。
「楽しくも面白くもないから」
「だからだね」
「僕達もなんだね」
「一緒に楽しませてくれる」
「そうなのね」
「そうだよ」
 まさにと答えた先生でした。
「トミーも王子も呼んで」
「そうしてだね」
「皆で楽しむ」
「トミーも王子も入れて」
「日本の春の贅沢を楽しむのね」
「うん、けれど日本人の贅沢ときたら」
 まさにとも言うのでした。
「素晴らしいね」
「自然と一つになっていて」
「風流よね」
「その中にいて楽しむ」
「そうした贅沢よね」
「この贅沢ときたら」
 本当にと言う先生でした。
「もう何ていうか」
「特別だよね」
「これ以上はないまでのもので」
「こんな贅沢他にないわ」
「ささやかって言えばささやかだけれど」
「それでいてどんな宝石よりも高価な」
「そうした贅沢よね」
「しかもそうした中で和歌を謡ったりするんだよ」
 先生は和歌のお話もしました。
「これまた贅沢だよね」
「贅沢にさらに贅沢がある」
「それが日本なのね」
「この国なのね」
「そう、誰でも楽しめるけれど何よりも貴重な」
 先生は穏やかですが満喫している笑顔でした、その日本の中にいて。
「そうした贅沢だよ」
「桜餅もお団子もういろうも」
「そして和歌も」
「勿論桜も」
「しかも四季でいつもそうだから」
 春のこの時だけでなく、というのです。
「余計に素晴らしいよね」
「確かにね」
「夏は夏、秋は秋、冬は冬で」
「もっと言えば十二ヶ月の何時でもね」
「自然と一緒になっていてね」
「その贅沢を楽しんでいるわね」
「枕草子でもね」
 この作品についても言うのでした。
「言ってるしね」
「先生が読んでる古典ね」
「清少納言さんの書いた」
「あの古典よね」
「春はあけぼのとかね」
 まずはこの文章からです。
「言うね」
「ああ、先生がこの前読んでた」
「あの本だね」
「清少納言さんだったかな、書いてた人」
「日本の古典だったわね」
「そうだよ、古典でね」
 まさにそれでというのです。
「今で言う随筆なんだ」
「それでその随筆の文章なんだね」
「春はあけぼのだね」
「そう言ってるんだね」
「うん、春は明け方ってことなんだ」
 その言葉の意味はというのです。 
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