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ドリトル先生と春の花達

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第四幕その七

「須磨は近いので三十分位で着けますね」
「では九時には」
「須磨の海に着いて」
 そしてというのです。
「観られますね」
「そうですね」
「はい、それでは」
「八時半に待ち合わせをして」
「そして行きましょう」
「わかりました」
 日笠さんはがっかりした気持ちを抑えて頷きました、そしてです。
 お二人でのお食事を終えて今は別れました、ですが。
 研究室に戻ってです、動物の皆は先生に呆れた声で言いました。
「そこで何でもああ言うかな」
「僕達もう少しで留守番するって言ってたのに」
「先生が迎えに行くとかね」
「自分で言う?」
「それはないよ」
「不合格だよ、先生」
「あれっ、不合格って?」
 そう言われてきょとんとなる先生でした。
「どうしてかな」
「やっぱりわかってないし」
「全く、これだから先生は」
「あんなの誰だってわかるよ」
「僕達だってわかるし」
「トミーも王子ももうわかってるのに」
「それでも肝心の先生がこうだと」
「困るな」
「本当にね」
 呆れて言う皆でした。
「やれやれだよ」
「これじゃあ幸せは何時になるか」
「先生の幸せが実るのは」
「果たして何時になるのかしら」
「あれっ、僕は充分過ぎる位幸せだよ」
 先生は皆に言われてまたこう言いました。
「これ以上はないまでにね」
「いや、だからね」
「そうじゃなくて」
「もっと幸せになれるから」
「充分とかじゃなくてね」
「ううん、もう充分だけれど」
 またこう言う先生でした。
「僕はね」
「いやいや、先生そこでなのよ」
 ダブダブが言うには。
「誰にも迷惑かけないのならいいのよ」
「そうよ、先生」
 ポリネシアが続きました。
「もっと幸せになったらいいのよ」
「ここはああすべきじゃなかったよ」
 トートーはこう言いました。
「やっぱりね」
「そうそう、下の下以下っていうか」
「絶対に駄目なやり取りだったわ」
 チープサイドの家族も先生を咎めます。
「日笠さんが迎えに来てくれるなら」
「それに乗ったらよかったのに」
「本当にその時僕達はね」
 ガブガブも気付いているので言います。
「留守番を申し出ていたよ」
「それで先生と日笠さんでね」
 お二人でとです、チーチーも呆れて言うのでした。
「海に行ったらよかったのに」
「泳ぐとかじゃなくてね」 
 ジップも日本の春の海のことはわかっています。
「二人一緒に観ればいいんだよ」
「そこからはじまるのに」
 ホワイティも呆れ顔です。
「全く先生ときたら」
「須磨は源氏物語の舞台だから」
 老馬はこのことを言いました。
「源氏の君みたいに出来たら」
「源氏の君の十分の一でもね」
「上手でいられたら」
 最後にオシツオサレツが言います。
「いいのにね」
「それがね」
「皆何を言ってるかわからないけれど」 
 それでもと言う先生でした。 
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