ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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SAO
~絶望と悲哀の小夜曲~
圏内事件~招待編~
キリトとの無意味ないざこざがあり、手近の無人家屋で衣服を普段の騎士装に変更したアスナは、長い髪を背中に払いながらつかつかと戻ってきて言った。
「で、これからどうするの?」
「あ、は、はい。選択肢としては………その一、中層で手当たり次第にグリムロックの名前を聞き込んで居場所を探す。その二、ギルド黄金林檎の他のメンバーを訪ねて、ヨルコの話の裏付けをとる。その三……カインズ殺害の手口の詳しい検討をするくらいかな」
「ふむむ」
腕組みをし、アスナは、隣で相変わらずの笑顔でぷかぷか煙管を吸っているレンを見て、思案顔になった。
「その一は、三人じゃちょっと効率悪すぎるわね。現在の推測通りグリムロックが犯人なら、積極的に身を隠してるでしょうし」
レンがそこで、口を挟む。
「その二も無理だねー」
「へ?なんでだ?」
「だって、もしさっきのヨルコねーちゃんの話と違った話を、他のメンバーから聞けた時、僕達にはどっちが本当にあったことなのかわかんないじゃん」
「…………じゃあ……その三か」
ちらりと目を見交わし、三人は頷いた。
そもそもレン達がこの事件にここまで首を突っ込んでいるのは、ヨルコには申し訳ないが【黄金林檎】リーダー殺害事件の真相を暴くためではなく、カインズを殺した《圏内PK》の手口を突き止めるためなのだ。
だが、これまで解明できたことと言えば、《圏外で発生した貫通継続ダメージを圏内に持ち込んだものではない》という一点のみだ。
他にどのような可能性があるのか、一度とことん議論しておく必要がある。
「でもな……もうちょっと、知識のある奴の協力が欲しいな……」
キリトが呟くと、アスナが眉をひそめた。
「そうは言っても、無闇と情報をばら撒いちゃヨルコさんに悪いわ。絶対に信用できる、それでいて私達以上にシステムに詳しい人なんか、そうそう………」
「「……………………あ」」
レンとキリトはほぼ同時に、一人の名前を思いつき、言った。
「いるじゃん」
「誰?」
レンとキリトが目を見交わし、笑いながらその名を告げた途端、アスナは眼を剥いてのけぞった。
昼飯オゴるから、というキリトの追記に惹かれたわけではないだろうが、アスナがメッセージを飛ばした三十分後、本当にその男が現れたのには、正直に言って少々驚いた。
さらにその後ろから現れた巨漢には、辟易するのと同時にかなり驚いた。
アルゲード中央の転移門から音もなく進み出た二人の男を見た途端、広場を行き交う多数のプレイヤー達が激しくざわめいた。
一人は、暗赤色のローブの背にホワイトブロンドの長髪を束ねて流し、腰にも背にも一切の武器を持たない───SAOに存在しない《魔導師》クラスとすら思える雰囲気をまとう男。ギルド【血盟騎士団】リーダーにしてアインクラッド内での最強の一角、六王第二席、《神聖剣》ヒースクリフ。
そして呼んでもいない、もう一人。二メートル近くの巨体には、グラディエーターも真っ青の筋肉ががっちりとつき、かつその身体を白銀のヘビーアーマーに包んでいる。そのアーマーと同色の髪の下から覗く黄金の瞳から、形状しがたいほどの圧迫感を周囲に振り撒いている男。ギルド【神聖爵連盟】リーダー、六王第一席。
《白銀の戦神》ヴォルティス。
その二人は、レン達を見ると、事前に打ち合わせでもしていたのかと疑問を抱きそうなほど、滑らかな動きで近づいてきた。
アスナがびしいっと音がしそうな動作で敬礼し、急き込むように弁解した。
「突然のお呼び立て、申し訳ありません団長!このバカど……いえ、この者達がどうしてもと言ってきかないものですから………」
「何、ちょうど昼食にしようと思っていたところだ。かの《冥王》と《黒の剣士》とじっくり話し合える機会など、そうそうあろうとも思えないしな」
滑らか、かつ鋼のように引き締まったテノールでそう言うヒースクリフの顔を見上げ、キリトは肩をすくめる。
「あんたには、五十層のボス攻略戦で十分もタゲ取ってもらった礼をまだしてなかったからな。───んで」
そう言って、恐らくこの場の全員が訊きたかったことを訊いた。
「何であんたがいるんだ、《白銀の戦神》さん?」
かっかっか、と銀髪金目の筋肉漢は豪快に笑う。
「暇だったからだ」
自慢そうに言うな。なに、それが何かみたいな顔してんだ。
皆は思ったが、言わなかった。
「閣下ー!勝手にいかれては困りますよぉ!」
続いて転移門が吐き出したのは、グレーに近い白色のウェーブした髪の下に青い眼を持つ青年だった。
「おぉ、リョロウか」
青年、漆黒の鎧に鳥を象った額あてが印象的な、ギルド【神聖爵連盟】No.3の実力者、通称《宵闇の軍神》リョロウは大きな溜め息をついた。
「………閣下の机の上には、溜まりに溜まった書類が山を作っていたはずなのですがね…………」
「あぁ、それならばウィルヘイムに任せてきた」
「あんたは鬼か」
がっはっは、と何故か大爆笑している筋肉漢は置いといて、レンはリョロウに挨拶する。
「こんちは、リョロウにーちゃん。レンキねーちゃんとカガミちゃん元気?」
「おー、レン君。久しぶり、この間の六王会議以来だね。あいつらは元気だよ~♪写真見るかい?あ!だけど、ウチの娘に手を出したら殺すからね」
「しないよっ!!」
怒鳴るレン。当然と言えば当然である。
恐らく親バカ中最強を誇る、親バカ中の親バカはにやりと笑う。あくまでも、にっこりではなく、にやりと。
そう、信じられないことに、この男は妻帯者──しかも子持ち──なのである。
俗に言うと、《リア充》。
「閣下ぁ~」
「まぁ待て、リョロウ。これでも私はやったのだぞ」
「え!何枚くらいですか?」
「そうだな………。二十枚はやったであろうかな?」
「………その百倍くらいはあったと思うんですけど」
がっはっは、と再びの爆笑。
はぁ、と大きな溜め息。誰のものかは言うまでもない。
「しかし、貴公も気になったからついてきたのであろう?リョロウよ」
「そりゃ………そうですけど……………」
「それでは聞こうではないか。興味深い話とやらを」
そしてヒースクリフとともに、何故かこちらを見る。
──メッセージ送ったのキリトにーちゃんなのに……
少々愚痴っぽくそう思いながらレンは言った。
「ん、じゃ、昼飯食いに行きますか」
…………まだ食うのか。
後書き
なべさん「始まりました!そーどあーとがき☆おんらいん!!!」
レン「読者の、読者による、読者のための、最近作者がこのコーナーいらないんじゃね、と思えてきたコーナーです!」
なべさん「仕方ねぇじゃん!ネタねぇんだもん」
レン「うるさい黙れ」
なべさん「……はい」
レン「それではお便り紹介コーナーです。霊獣さんからのお便りです、レンはよく物を食べていますが、理由があるのですか、それともただ単に食欲が無限ということですか?」
なべさん「これははっきりと答えましょう。答えは、理由があります!」
レン「ほぉ、で、どゆこと?」
なべさん「うん。レンはSAOに囚われてから、四六時中のほとんどはフィールドに出て、狩りをしてます。だから、たま~に街に戻った時にはいつもより多めに食事を摂るんですね。そんな生活を続けているうちに、自然と大食いになっちゃった、ということです」
レン「……大食いはともかく、プログレッシブのアスナねーちゃんみたいだね」
なべさん「そうそう、まさにあんな感じ。だけど、あっちは慣れてなかったからぶっ倒れちゃったけど、レンは慣れてるからぶっ倒れたりはしませんよ」
レン「はい、霊獣さん、お便りありがとうございました!これからも本作品のご愛読をよろしくお願いします!!」
なべさん「はいはーい、自作キャラ、感想など送ってきてくださいねー♪」
──To be continued──
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