スイミングスクール
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第一章
スイミングスクール
東井由紀恵を見てだ、榊界人はいつも思うことがあった。
それでだ、彼は家で両親にいつも言っていた。
「今日も明日もね」
「スイミングスクールに行くのか」
「そうするのね」
「うん、週二日とかじゃなくて」
本来定められているこの日程で行くだけでなくというのだ。
「出来る限り行きたいよ」
「一体どれだけ行きたいんだ」
「五日はね」
これだけだとだ、界人は父に答えた。
「行きたいね」
「そんなにか」
「うん、行きたいんだ」
そのスイミングスクールにというのだ。
「そう思ってるんだけれど」
「それはまたえらく熱中してるな」
「そうね」
母も息子の言葉を聞いて言う。
「まさかそんなに熱中するなんて」
「思わなかったな、しかしな」
「それでもよね」
「そこまで熱中してるならな」
息子のやる気を汲み取ってだ、父は言った。
「やらせてみるか」
「そうね、そしてね」
「どんどん泳げるようになってもらうか」
「そうなってもらいましょう」
「うん、僕今以上に泳げる様になって」
そしてとだ、界人はここで由紀恵のことを思うのだった。彼が通っているスイミングスクールのコーチの一人の彼女のことを。
由紀恵は大学生でずっとこのスイミングスクールにいて今は選手兼コーチとなっている、はっきりとした目に穏やかな感じの赤い小さな唇、整った鼻に面長の顔に黒い少し波がかった長い髪を持っている。
赤いジャージと白いシャツというこのスイミングスクールの服をよく着ているが勿論界人達に水泳を教える時は水着姿だ。黒地にところどころ黄色が入っている競泳水着から見事な身体のラインがはっきり出ている。しかも脚も奇麗だ。
界人は実はその由紀恵に憧れていてだ、彼女に会いたい為に週五日来たいと言い出したのだ。
そしてその願いは適ってだ、彼はいつもだった。
学校から帰ってプールに泳ぐ様になった、由紀恵はその彼に水泳を教えながら彼に笑顔で尋ねた。
「榊君最近毎日来てるわね」
「はい、週五日です」
「そうよね。塾とかは行ってないの?」
「成績はいいんで」
これは本当のことだ。
「ですからそっちは」
「行ってないの」
「習いごととかはここだけです」
スイミングスクール一本だというのだ。
「そうなんです」
「そうなのね。週五日も泳いでいるから」
由紀恵は微笑み彼に話した。
「だからどんどん上手になってるわよ」
「そうですか」
「そう、だから将来選手になれるかも」
水泳のそれにというのだ。
「努力していけばね」
「選手ですか」
「先生みたいにね」
彼と室内のプールサイドで話していた、界人は水着で彼の横に座っている由紀恵と並んで座って話している。
「なれるかもね」
「そうなんですね」
「今は六年生よね」
小学校のとだ、由紀恵は聞いてきた。
「そうでしょ」
「はい、そうです」
「だったらこれからどんどん泳げばね」
「どんどん速くなって」
「うちのスイミングスクールの選手にもなれるわ」
こう界人に言うのだった。
「このまま続けていけば」
「先生みたいになれるんですね」
「そうよ」
「それで先生と」
界人は無意識のうちに顔を紅潮させて由紀恵に言った、水着の上から見える胸のラインを横から見つつ。
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